学部・大学院 教員詳細

調子 和紀

調子 和紀(ちょうし かずのり)

職名
准教授
担当分野
英語教育、第二言語習得、アクティブ・ラーニング
学位
学士(教育)
研究キーワード
英語教育、第二言語習得、ディクトグロス、学習評価

教員からのメッセージ

外国語学修を通して可能性の翼を大きく広げてみませんか。外国語を学修することは自分の翼(可能性)を広げ、物事を大きな視点で捉えたり、自分自身を客観視したりする力を持つことだと考えています。英語教育センターでの学びを通して、さらに大きな翼を持って羽ばたいてほしいと思います。

研究内容

英語教育における指導や評価の方法について理論と実践の両面から研究しています。「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて、日々の授業改善に繋がる実践的な言語活動や、アクティブ・ラーニングの視点に立った授業へのアプローチに関する研究を行っています。特に「聞くこと」と「書くこと」に関する技能統合型の言語活動(ディクトグロス)については、流暢さと正確さの両面から英語での発信力の強化につながる活動として高等学校や大学での授業実践を通した分析を継続的に行っています。

1.外国語科目における「学力の3要素」育成に向けた実践

文部科学省が2016年3月31日に発表した『高大接続システム改革会議「最終報告」』によれば、これからの時代に向けた教育改革を進めるに当たり、身に付けるべき力として特に重視すべき「学力の3要素」を次のように述べています。

(1)十分な知識・技能
(2)それらを基盤にして答えが一つに定まらない問題に自ら解を見いだしていく思考力・判断力・表現力等の能力
(3)これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度

これらを達成するために、外国語科目の授業で実践する方策として,アクティブ・ラーニングの手法を取り入れています。例えば英語ⅠB・ⅡBでは主にTOEIC対策を行いますが、授業内活動として、学生同士の学びを促進するピア・インストラクションを導入しています。ピア・インストラクションは、E・Mazur(1997)が考案した大規模講義に学生の議論を組み込んだ授業方法で、アクティブ・ラーニングを実現する手法として実践されているものです。基本的な実施方法としては次の4つのポイントがあります。

①予習教材の提示
②コンセプテスト(ConceptTests)と呼ばれる多肢選択問題の出題
③正答率に応じた3段階の指導
④解説 → 次の問題

この手法をとおして、学生同士が議論したり,学び合ったりすることで、自分の解答が正答であるかどうかだけでなく、なぜその答えになるのかを議論し、学びの中で「気づき」が生まれ、知識の定着が促進されます。また、ペア活動を導入することで、予習に責任感を与えるとともに、授業中に学生同士が積極的にコミュニケーションを行うことで、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度の育成にも繋がると考えています。

2.ディクトグロス(Dictogloss)を利用した技能統合実践

ディクトグロス(Dictogloss)はWajnryb(1990)が提唱した英文再生の手法で、アウトプットを重視した第二言語習得の学習法の一つです。基本的な手順は次のようになります。

①短くて、内容のある文章が普通のスピードで(2回)読まれる
②読まれている間に、学習者は知っている語句のメモを取る
③小グループで学習者は自分たちの断片的な知識を共有し、元の英文を再生する
④それぞれのグループが再生する英文は、文法的な正確性や結束性は求められるが、原文の複製でなくてもよい(reconstruction)
⑤ 学習者は再生した英文を分析・比較し、意見を交わしながら修正する

ディクトグロスでは主に「聞く」+「書く」という技能を統合的に使いながら、2つの技能を総合的に伸ばす取り組みとして実践を継続しています。

3.ICTを活用した「話すこと」と「書くこと」を統合した授業実践

外国語学習における4つの技能のうち、最も苦手と感じているのは「話すこと」です。「話す」技能を伸ばす取り組みとして、現在AI(人工知能)を利用したICTを活用した授業実践を行いその成果を検証しています。具体的には次のような手順で指導と評価を継続的に行い、評価の分析をしています。

①ICT機器を活用したスピーキング活動
 ICT機器を利用して、スピーキング活動を音声入力し、文字データ化する。
②技能統合型活動(「話す」、「聞く+話す」)
ペアが話した内容について、リテリング(retelling)活動を行い、同様に文字データ化する。他者の話した内容の再生活動を行うことで「聞く」+「話す」の活動を統合的に行う。
③技能統合型活動(「話す+書く」)
文字データを元に、自分の気づきに従って、文法的な間違いや内容について、正しい英文と構成に修正するライティング活動を行う。
④ ICT活用(英文校正ツールGrammarlyを活用した評価とフィードバック)
文字化したそれぞれのデータについて、AIを利用した英文校正ツールを活用した評価とフィードバックを行う。

このような指導と評価を継続的に行い、流暢さ(fluency)と正確さ(accuracy)を両立した「話すこと」の能力向上に繋がる実践研究を行っています。