学部・大学院 教員詳細

鈴木 優(すずき ゆう)
- 職名
- 准教授
- 担当分野
- インタラクションデザイン、ヒューマンコンピュータインタラクション
- 学位
- 博士(工学)
- 研究キーワード
- 体験デザイン、動物・植物支援、認知・感情の解明、デジタルファブリケーション応用
研究内容
私はインタラクションデザインを専門としています。ふたつ以上のものが互いに影響を及ぼし合うときの行為や動作のことをインタラクションと呼びます。インタラクションデザインとは、インタラクションを生み出したり引き出したりするようなデザインのことを指し、インタラクションデザインはその使用者が得る体験とその満足度に大きく寄与します。ULAB(鈴木優研究室)では、インタラクションデザインに欠かすことができない人や動物の認知・感情の解明に関する研究や、心や体を動かす力を持つインタフェースや体験型コンテンツ、未来のデジタルメディアなどをデザイン・創造する研究を行っています。また、研究室では学生や地域の方々とも協働しながら研究を行うと同時に、企業や団体など他機関との共同研究や受託事業にも取り組んでいます。
研究室ウェブサイト:https://ulab.jp/
猫の咀嚼音を用いた個体識別
動物を個体識別するためには、個体に対して物理的なタグを装着することが一般的ですが、この方法では動物に対して物理的・精神的な負荷を与えてしまう恐れがあります。この研究では、動物にストレスを与えることなく個体識別するために、咀嚼音を利用した個体識別技術を開発しました。動物が摂食する際に発生する咀嚼音を学習して個体を識別するAIやそれを用いて健康管理を行うための装置やアプリを実装しました。動物に対してストレスを与えないように工夫する動物福祉や、動物本来の生活環境を再現する環境エンリッチメントへの関心が高まる中において、この研究は動物のより豊かな暮らしを支援することができると考えています。 この研究成果は情報処理学会シンポジウム・インタラクション2020にて発表賞に選出されました。
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開発した個体識別装置を使用する猫 画像
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発表賞の賞状と装置
アニメーション制作のためのスポンジインタフェース
アニメーションを制作する際に使用される一般的なソフトウェアではタイムライン毎にキャラクタの動きを設定する方法が採用されていますが、この操作には熟達が必要となります。この研究では、だれもが手軽にアニメーションを制作できる環境を構築することを目指し、スポンジを用いたインタフェースを開発しました。アニメーションを付けたいイラストと同じ形のスポンジをカメラの前で動かしたり姿勢を変えたりすることで、画面の中のイラストがリアルタイムに動いてアニメーションが生成されます。今後はさらに発展させ、より自由な発想でだれもが気軽に豊かな映像表現を制作することができる未来を創りたいと考えています。
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開発したアニメーション制作システム
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スポンジの変形を読み取る画像処理技術
植物に関する普遍的な知識を用いた情報表現のデザイン
この研究では、情報の受け手に特別な知識が無くとも情報の正しさを説明できる伝達手法をデザインすることを目指しています。そのような情報伝達手法のひとつとして、植物に関する普遍的な知識を利用し、情報の正しさを説明することを提案しました。開発したTreeceableというメディアはこのコンセプトに基づき開発したプロトタイプであり、木の生長方向を変化させることで情報の記録を行うものです。木は長い時間をかけてゆっくりと生長する、生長した木を後から変形することは難しい、という木に関する普遍的な知識を利用し、記録が後から改変されていないことの説明をその存在から表現しています。
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開発したTreeceableの外観
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木の生長方向が変化する様子
恥ずかしさを引き起こす要因の解明
公共施設や商業施設などの多くの人が行き交う開かれた空間に置かれた作品を見たり体験したりすることに誰もが恥ずかしさを感じた経験があるはずです。この研究では、このような恥ずかしさをもたらす要員とは何だろうかという問いを探求しています。恥ずかしさに関する質問紙とその統計分析から、体験型コンテンツに対して恥ずかしさを感じる3大要員を明らかにし、それをコンテンツの制作のためのガイドラインとして策定しました。また、ガイドラインに沿ったコンテンツと沿っていないコンテンツを制作・展示し、その様子を観察することで、ガイドラインの有効性を検証しています。
この研究成果は情報処理学会シンポジウム・インタラクション2023にて発表賞に選出されました。
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制作したコンテンツを体験する様子
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恥ずかしさの要因分析
Rolly Rolly ―プログラミング的思考を育むゲームコンテンツ―
小学生向けのお絵描きゲーム「Rolly Rolly」は、映像が投影されたホワイトボードにペンで線を描き、リンゴをゴールへと導くゲームです。投影されるリンゴは、ユーザがホワイトボードに描画した線の上を転がりますが、画面上には木の枝などの障害物も配置されているため、リンゴの動きをよく考え、どのように線を加えていくとゴールまで誘導できるかを試行錯誤する必要があります。プレイヤーは4~5名のチームを組み、まず机上で作戦会議を行ってからホワイトボードに線を描画(ゲームを実行)します。その結果を受けて、失敗や成功の要因を考察し、改善策をフィードバックできるようデザインされています。こうしたお絵描きゲームを通じて、問題解決のために行うべき処理と順序を論理的に考えて最適解を見つける「プログラミング的思考」を育て、チーム内でのコミュニケーションを促すことができます。このコンテンツは宮城県の大和町少年少女発明クラブにおける教育活動の一環として研究室が制作しています。
Rolly Rollyは、国際アートコンペである2019アジアデジタルアート大賞展FUKUOKAにおいて、一般カテゴリー/エンターテインメント(産業応用)部門で入賞しました。
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Rolly Rollyで遊ぶ様子
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説明を聞く児童たち
行政課題の解決を目指すプロモーションデザイン
仙台市消防局が抱える課題のひとつである「市民の防火・防災の意識向上」の解決を目指す取り組みとして、春の火災予防運動企画「春の防火防災ラボ」を開催しました。防火防災に関する知識を楽しみながら学べるゲームや体験型コンテンツの展示、塗り絵シール作りを通じた食品備蓄の啓蒙などを仙台市内の大型商業施設にて実施し、多くの市民の方々に興味を持ってもらうことができました。イベントの全体設計や会場デザイン等も学生を中心に実施しましたが、消防局職員によるレクチャーや消防署への見学、展示会場の下見など多くの方々の協力により実現できたプロジェクトです。
2020年に実施した活動は、総務省消防庁が表彰する全国の消防署本部の取組の優良事例として優秀賞に選出されました。
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心肺蘇生&AEDゲームを体験する様子
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パネル展示
地域と共に作るプロジェクションマッピング
宮城県大崎市岩出山にある指定文化財「旧有備館及び庭園」にて、プロジェクションマッピングを実施しました。このプロジェクトは大崎市文化財課との実施している事業であり、デザイン制作活動を行う学生団体と共に映像コンテンツの制作やイベントの運営を行いました。映像企画の段階では学生たちと共にフィールドワークとして岩出山地域の史跡や竹工芸館等を巡り、地域の歴史や伝統について改めて学習し、そこで収集した情報やイメージを映像化することに挑戦しています。
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指定文化財へのプロジェクションマッピング
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コンテンツ制作画面