学部・大学院 教員詳細
吉川 隆士(よしかわ たかし)
- 職名
- 教授
- 担当分野
- コンピュータシステム、AI応用
- 学位
- 博士(工学)
- 研究キーワード
- システムアーキテクチャ、インターコネクション、AIプラットフォーム、社会ソリューション
研究内容
研究・教育の全体像
私の活動は、コンピュータと情報システムを土台に、「実世界で本当に役立つ技術をつくる」ことを一貫したテーマにしています。研究室の机の上だけで完結する成果ではなく、現場に持ち込んで試し、数値で効果を確かめ、学会や社会に発信するまでを、ひとつながりの流れとして大切にしています。
もうひとつの軸は、この流れを学生とともに進めることです。課題を一緒に考え、情報技術で実装し、評価し、論文の形にまとめて学会で発表する——本来は研究室に配属されてから経験するこの一連のプロセスを、1・2年生の早い段階から体験できる環境づくりに力を入れています。近年は、この「課題発見 → 実装 → 評価 → 発信」という考え方を、AIの応用研究やコンピュータ基盤の研究だけでなく、大学広報のブランディングにも応用しています。
以下、(1) AI応用システム・アプリケーション、(2) 情報システム・アーキテクチャ、(3) 研究プロデュース(学生とともに進める研究)、(4) 広告・メディア の4つの側面から紹介します。
(1) AI応用システム・アプリケーション
写真やビデオ(映像)から「必要な情報」を取り出し、それを使ってさまざまなアプリケーションを開発しています。具体的には、映っているものや人が「何か・誰か」を見分ける個体識別や、人がどこにいてどう動いているかを追いかける人物追跡といった、画像認識・映像解析の技術が中心です。
ここで重視しているのは、評価用データ(ベンチマーク)の上で高い精度が出ることそのものよりも、実際の場面で使えるかどうかです。研究用に整えられたデータと違い、現実の環境では、照明の変化、人やモノの重なり(オクルージョン)、想定外の動き、その場で即座に処理しなければならないリアルタイム性といった難しさが次々に現れます。そのため、フィールドテスト(実地での検証)を重ね、「論文上の精度」ではなく「現場で本当に動くシステム」を目指しています。
その代表的な取組が、附属幼稚園との共同プロジェクトです。延長保育の時間に、園児の集団が自律的に——大人が一人ひとり指示しなくても——楽しく遊べる状態をどうつくるか、という課題に学生とともに取り組んでいます。この取組では、情報技術の課題に向き合うだけでなく、幼稚園の先生にお話を伺ったり、児童心理の研究を参照したりしながら、幼児の集団を扱うための手法そのものを考えています。子どもたちは決まったとおりには動かず、安全への配慮も欠かせないため、画像認識システムにとっては非常に手強い、しかしだからこそ価値のある実証の場になっています。この成果は、GNW2025・GNW2026・知能システムシンポジウム2026で発表しました。
教育の面では、3年生向けの「機械学習」と「データ解析実習2(深層学習系)」を担当し、こうした応用を支えるAI技術の基礎から実践までを伝えています。
(2) 情報システム・アーキテクチャ
コンピュータやネットワークについて、ハードウェアからソフトウェア、その上で動くアプリケーションまで、幅広い階層を対象に研究しています。近年はとくに、クラウドとエッジ(利用者の近くにある機器)をまたいでAIを効率よく動かすためのコンピューティングに取り組んでいます。
長く取り組んできたテーマのひとつが、リソース分離型(ディスアグリゲーテッド)コンピュータです。従来のコンピュータは、CPU・メモリ・記憶装置・AI用のアクセラレータといった部品が、一台の箱の中に固定的にまとめられています。これに対しリソース分離型では、これらの部品をいったん切り離して「資源の集まり(プール)」として扱い、必要な分だけを高速なネットワークでつなぎ合わせて使えるようにします。たとえるなら、完成品のセットを買うのではなく、必要なレゴのブロックだけを選んで組み立てるようなイメージです。これにより、使われずに眠ったままの資源を減らし、無駄なく性能を引き出すことができます。このテーマには約20年にわたって関わり、基盤技術の研究から製品化、さらにはその標準化やコンソーシアム(業界の連携組織)の立ち上げまでを経験してきました。
現在進めているのは、この考え方をAIの時代に合わせて発展させた、新しいリソース分離システムです。AIアプリケーションを機能ブロック(処理のまとまり)に分割し、その中でボトルネック(全体の足を引っ張っている部分)になっている機能だけを選んでスケール(増強)する、というアプローチです。システム全体を丸ごと増強するのではなく、詰まっているところだけをピンポイントで太くするため、効率よく性能を伸ばせます。この研究は、ISC2026のポスターセッションで発表します。
教育の面では、2年生向けの「コンピュータ・アーキテクチャ」と、4年生向けの「クラウドシステム」を担当し、こうした基盤技術の考え方を体系的に伝えています。
(3) 研究プロデュース ——学生とともに進める研究
研究において私がとくに力を入れているのが、学生とともに研究を「プロデュース」することです。学生に課題を提示し、一緒に考え、出てきたアイデアを情報技術で実装し、数値で評価し、論文の形式にまとめて学会に投稿する——この研究の一連のサイクルを、学生自身に経験してもらいます。
問題を設定し、実装し、客観的な数値で検証し、それを論文という形式に落とし込み、第三者の審査を経て発表する。これは研究者が日常的に行っているプロセスそのものです。通常は研究室に配属される3・4年生以降に少しずつ身につけていくものですが、研究室配属前の1・2年生の段階でも、こうした学会発表に取り組んできました。
これまでに、GNW2025で4名、GNW2026で3名、知能システムシンポジウムで2名(うち2名はGNW2026でも発表)の学生が発表を成功させており、これらは河野先生・神田先生・柳生先生らと協力して遂行したものです。早い段階で「自分のアイデアが形になり、社会に認められる」という経験をすることは、その後の学びや進路に向けた大きな自信になります。(1) で紹介した附属幼稚園のプロジェクトも、この取組から生まれた成果のひとつです。
(4) 広告・メディア
2025年度からは広報室長を兼務し、大学のブランディングにも取り組んでいます。一見すると情報系の研究とは離れて見えるかもしれませんが、ここでも「現状をデータで把握し、施策を実装し、効果を数値で測る」という基本的な進め方は変わりません。
きっかけは、高校生を対象とした調査でした。「清心」のイメージとして「いきいきしている」「いまどきである」という評価が低い、という結果を受け、その改善に取り組んでいます。
ここでも、学生とともに進めるという姿勢は共通しています。将来、広告やメディアの分野を目指す学生たちで「広報室学生スタッフ」を立ち上げ、企画・制作の中心を担ってもらっています。具体的には、「背中を押された言葉たち」、昭和レトロな校舎の紹介、卒業式や入学式の様子などを、学生に向けた縦型のショート動画にして公開し、大学公式アカウントを育てています。取組を始める前は再生回数が3,000回程度がせいぜいだった状況から、現在では40万回再生を達成する動画も生まれています。再生回数という明確な指標で効果を確かめながら改善を重ねている点は、研究のアプローチと共通しています
Reference
Takashi Yoshikawa¹˒² Susumu Date² Masaki Kan³ Takashi Takenaka⁴, "Proposal and Evaluation of Software-Defined Resource Disaggregation for Containerized AI Workloads", (Poster) ISC High Performance Computing 2026, Humbrg, Germany, 2026
¹ Dept. of Information & Data Science, Notre Dame Seishin University
² D3 Center, The University of Osaka
³ Little Wing, LLC
⁴ Secure System Platform Laboratories, NEC Corporation
幼児集団における自律的な集団社会性発達を誘導する構造化遊戯システム
黒瀬陽菜、黒川涼々香、岩本こころ、吉川隆士、柳生光義、神田哲也, 第53回 知能システムシンポジウム 富山 2026 (計測自動制御学会 主催)
多人数同時参加型活動による幼児社会性発達の集団評価手法
黒川涼々香、黒瀬陽菜、岩本こころ、吉川隆士、柳生光義、神田哲也, 第53回 知能システムシンポジウム 富山 2026 (計測自動制御学会 主催)
Kokoro Iwamoto, "Visualization of Follow-up Behavior in a Group of Preschool Children Using A Two Choice Movement Game" Global Network (GNW2026), Fukuoka, 2026 Hosted by The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (IEICE)
Haruna Kuosawa, "Digital Role-Play for Fostering Social Development in Preschoolers", Global Network (GNW2026), Fukuoka, 2026 Hosted by The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (IEICE)
Suzuka Kurokawa, "A Quick Assessment Approach to Visualize and Classify Socialization Levels in
Early Childhood Groups", Global Network (GNW2026), Fukuoka, 2026 Hosted by The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (IEICE)
Ayane Nakahara, "Exploration of Spatially Distributed Projection Technology Using Multiple PCs and Displays (1): A Study on Distributed Extraction of Virtual Space", Global Network (GNW2025), Okayama, 2025 Hosted by The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (IEICE)
Rena Takami, "Study on Spatially Distributed Projection Technology Using Multiple PCs and Displays (2): A Study on Software Synchronization Execution among Multiple PCs for Spatially Distributed Projection", Global Network (GNW2025), Okayama, 2025 Hosted by The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (IEICE)
Yui Watanabe, "Design and Field Testing of a Robust Interface for Unstructured Use by Kindergarten Children-Voice Interface" Global Network (GNW2025), Okayama, 2025 Hosted by The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (IEICE)
Ayana Nakamura, "Exploring Interfaces That Withstand Disordered Use by Kindergarten Children and Field Testing (2): A Gamification Approach to Autonomously Regulate Disorderly Behavior", Global Network (GNW2025), Okayama, 2025 Hosted by The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (IEICE)
YOSHIKAWA, Takashi, et al. Identification of over One Thousand Individual Wild Humpback Whales using Fluke Photos. In: VISIGRAPP (4: VISAPP). 2022. p. 957-967.
・2026年度 広報室学生スタッフ:清心リアル宣伝部を発足し世話人をしています
・2026年度 学長裁量研究として、学科横断で大学発スタートアップのモデル化を実施しています
・2024年度 テクノロジーを使ってなにかおもしろいもの、世の中に役立つものを作ろうという趣旨の同好会、l'acteを作って顧問をしています