学部・大学院 教員詳細

吉川 隆士(よしかわ たかし)
- 職名
- 教授
- 担当分野
- コンピュータシステム、AI応用
- 学位
- 博士(工学)
- 研究キーワード
- システムアーキテクチャ、インターコネクション、AIプラットフォーム、社会ソリューション
研究内容
前所属の企業では半導体プロセスからコンピュータ、ネットワークシステムまで幅広く研究を行い、近年はエッジAI向けマイクロ・データセンターの研究を行なってきました。AI向けシステムの研究は実際に使われる場合の性能を評価する必要がありました。 そこで様々な人々の困りごとを聞き、その中からAIやコンピュータを使うことで実現することを見つけて試作を行なってきました。具体的には沖縄美ら島財団総合研究センターとのザトウクジラの識別、毎日新聞との写真データ自動整理、大阪大学歯学部病院との歯周病検知、大阪大学医学部健康スポーツ科学とのテニス打球予測などです。 今後も社会課題解決のための研究を進めていきます
タイパの良いAIシステム: good time-performance AI system
短時間になるべく多くの結果を出すことは、産業界では生産性とよばれ、若者にはタイパと呼ばれており、それぞれともに非常に重要視されています。 私はこれまでコンピュータ、ネットワークシステムの研究者として、マシン同士の応答速度であるミリ秒、マイクロ秒、ナノ秒のオーダーでの性能向上に取り組んできました。一方で、アプリケーションとして社会で利用され、人が使うことを考えると時間は秒のオーダーになります。その場合でも、例えば「第一印象は3秒で決まる」「集中力は8秒しか持たない」など、時間が重要なファクターであることは変わりません。 そこでAIシステムについて時間を切り口に、マイクロ秒でのアウトプット効率を高めるためのコンピュータ、ネットワークシステムの研究、並びに秒でのアウトプット効率を高めるためのAIアプリケーションの研究に取り組みます。
(1)その場で素早く反応するためのエッジ・マイクロ・データセンタと協調型AIシステム
クラウドにデータを送って処理をして結果を戻して反応をするAIシステムでは、データが大きい場合やネットワークが遅い場合に、反応が遅れてしまう課題があります。
そこで、データを取って処理して反応を得たい「その場」に小さなクラウドシステムを置いてクイックリスポンスを実現することを目的に、どこにでも置ける小型で、低消費電力なのに、クラウドのような多様な処理が可能なマイクロデータセンターの研究を行います。
例えばひとつのコンピュータを構成するCPU/メモリやストレージ、GPUアクセラレータなどデバイスがばらばらになってプールされ、必要な時にそれらを使って再構成することで多様な処理を低消費電力で実行できるリソース分離型コンピュータの研究に取り組みます。さらに分離されたそれぞれのデバイスの機能を活用するAIサービスを提供するコンテナをダイナミックにつなげてアプリケーションを実行することで協調型AIシステムのタイパ向上に取り組んでいます。
(2) 食い気味に反応するための予測AI
スポーツや日常会話では、相手の動作や言葉に対して、それが終わる前に食い気味に反応することで試合や会話の展開で優位に立つことができます。
そこで時間に対する変化を追って瞬時に次を予測可能なAIを用いたアプリケーションの研究を行います。
例えばテニスにおいて上級者は相手のフォームやラケットをみて、相手の打った打球がどんな球種でどの方向に来るかを予測しています。これをAIで実現することに取り組んでいます
(3)タイパを向上するためのcopilot AI
道具を使って効率よく作業を行うことは人類の発展の源です。これまでは比較的単純な繰り返しなど、いわゆる機械的な作業にこのやり方が取られていました。一方でここ数年のAIの進歩はめざましく知的作業も可能になっています。特に現在では生成AIとその有効な利用方法が注目されています。
そこで、これまで人手で手間暇かけて行ってきた作業についてAIを副操縦士として取り組むことで効率を挙げる実例作りの研究に取り組みます。
例えば野生動物を観察する生物学者、成人式の前撮りをする写真館やスポーツ報道をするカメラマンなどは千枚を超す大量の写真を撮影しています。それを人が目で見て撮影された動物を識別したり、使う写真を選択したりするのに何日、何週間という時間が費やされています。これらの作業をAIとともに行って時間の節約を実現することに取り組んでいます。
(4)「間」を意識した人間味のあるAI
ユーモアや演劇、パフォーマンスでは「間」が重要な役割を果たします。現在の生成AIで動画を生成すると一般化された流れに沿った映像が作られるために、人が見たときの感情の流れに配慮がなく、メリハリのない動画しか作成できません。
そこで映画、演劇、演説、スポーツ、ライブなどでの人間らしさの根源や人を惹きつけるための演出効果について、その心理的メカニズムを学びAIに反映させる研究に取り組みます。
Reference
MISAWA, Akihiro, et al. Dynamic Reconfiguration of Computer Platforms at the Hardware Device Level for High Performance Computing Infrastructure as a Service. In: Cloud Computing and Service Science: 7th International Conference, CLOSER 2017, Porto, Portugal, April 24–26, 2017, Revised Selected Papers 7. Springer International Publishing, 2018. p. 177-199.
SHIMIZU, Tomohiro, et al. Prediction of future shot direction using pose and position of tennis player. In: Proceedings Proceedings of the 2nd International Workshop on Multimedia Content Analysis in Sports. 2019. p. 59-66.
YOSHIKAWA, Takashi, et al. Identification of over One Thousand Individual Wild Humpback Whales using Fluke Photos. In: VISIGRAPP (4: VISAPP). 2022. p. 957-967.