学部・大学院 教員詳細

柳生 光義

柳生 光義(やぎゅう みつよし)

職名
助教
担当分野
情報通信、計算基盤
学位
修士
研究キーワード
数値解析、並列計算、プラズマ物理、理論シミュレーション

教員からのメッセージ

プログラミングや数学と聞くと二の足を踏んでしまう人が多いかもしれません。しかし、どちらも基礎から丁寧に学習すれば必ず習得でき、習得できた知識・能力は社会に出たときに強力な武器になります。意欲的に学び、是非、学問としての情報学や数学の面白さにも触れてもらえたらと思います。

研究内容

磁場閉じ込め核融合プラズマ装置において観測される電磁的乱流による熱輸送現象の物理機構を解明するために、スーパーコンピュータを用いたシミュレーション研究をしています。プラズマ圧力勾配によって駆動される微視的乱流は熱輸送を引き起こし、閉じ込め性能を劣化させます。電磁乱流による輸送物理は未だ十分な理解が得られているとは言えません。本研究では、電磁的乱流輸送を駆動する微視的テアリングモードと呼ばれるモードに着目し、理論と大規模シミュレーションから得られるデータ解析を駆使し、乱流輸送飽和機構の基礎物理の解明に取り組んでいます。

核融合プラズマとは

プラズマとはざっくりといってしまえば、電子とイオン(荷電粒子という)から構成される電離気体であり、第4の物質の状態とも言われている。このプラズマの温度を1億度以上にすることで、核融合反応が生じ(このような状態を核融合プラズマという)、莫大なエネルギーを得ることができる。そのため、核融合プラズマは次世代エネルギーとして期待されており、燃料候補の重水素と三重水素1gが核融合反応(図 1参照)を起こして得られるエネルギーは、石油8,000kgを燃焼して得られるエネルギーに相当する。

  • 図 1 核融合反応のイメージ図 [1]

    図 1 核融合反応のイメージ図 [1]

磁場閉じ込めプラズマ

高温プラズマを定常的に維持するためには、プラズマを閉じ込める必要がある。プラズマを構成する荷電粒子は、磁場に巻き付き運動する性質があるため(ローレンツ力)、磁場でプラズマを閉じ込める装置が開発された。その装置の1つをトカマク装置と呼ぶ。トカマク装置を用いて核融合プラズマ発電を目指した最も大きなプロジェクトとして、国際熱核融合実験炉 ( International Thermonuclear Experimental Reactor; ITER ) 計画がある [2]。ITER 計画は、日本、欧州、米国、ロシア、中国、韓国、インドを拠点とした各国の協力の下で行われている。図 2はITER計画で現在建設中の球状トカマク装置のイメージ図である。ITER以外にも核融合発電を目的に現在稼働しているトカマク装置はいくつか存在するがここでは割愛する。

  • 図2 球状トカマク装置の外観図 [2]

    図2 球状トカマク装置の外観図 [2]

プラズマのシミュレーション研究

本研究では、磁場閉じ込めプラズマの複雑な振る舞いを理解するためにスーパーコンピュータの力を借りた大規模シミュレーション研究を実施している。磁場閉じ込め装置内の高温プラズマは装置径方向に圧力分布を持ち、この圧力分布によって励起される微視的乱流によってプラズマが輸送され閉じ込め性能が劣化する。プラズマ輸送の要因となる微視的乱流はいくつかのモードによって励起されるが、そのモードの1つに電子圧力勾配によって駆動される微視的テアリングモードという磁場のトポロジーを変えるモードがある。本研究ではこれまでに微視的テアリングモードの不安定化機構の詳細な解析を理論・シミュレーションを駆使して実施している [3] [4].

現在は、微視的テアリングモードが駆動する電磁的乱流の乱流飽和機構の理解に取り組んでいる。高温プラズマでは、荷電粒子間の衝突が弱く微視的な粒子の効果(運動論効果と呼ぶ)に起因する位相混合によって速度空間に微細構造が形成され、衝突が弱くてもエネルギーが散逸される。詳細は割愛するが、図 3に示すように微視的テアリング乱流では、速度空間に微細構造が形成されることがこれまでの結果からわかっている。本研究では、引き続き詳細な解析を実施し、位相混合の効果に着目した微視的テアリング乱流の飽和機構の解明に取り組む。

  • 図3 微視的テアリング乱流における速度空間構造

    図3 微視的テアリング乱流における速度空間構造

参考文献 [1] 自然科学研究機構核融合科学研究所 https://www.nifs.ac.jp/ene/qa/qa_02.html, 最終アクセス2024年3月13日 [2] ITER機構http://www.iter.org/,最終アクセス2024年3月13日. [3] M. Yagyu and R. Numata, Plasma Phys. Control. Fusion 65, 065003 (2023). [4] 沼田龍介,柳生光義,前山伸也, プラズマ・核融合学会誌 8, 385 (2023).