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現代社会学科

2023.07.11

⼈類史における都市の起源を探る旅 -トルコ共和国キュルテペ遺跡調査 15 年の成果-|現代社会学科 紺谷亮一教授

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現代社会学科

学科ダイアリー

2023年7⽉11⽇
ノートルダム清⼼⼥⼦⼤学
岡⼭⼤学

ノートルダム清⼼⼥⼦⼤学 紺⾕亮⼀教授(⽂学部現代社会学科・考古学)と岡⼭⼤学 ⼭⼝ 雄治助教(⽂明動態学研究所・考古学)をはじめとする研究グループは、⼈類史における都市の 起源を探るため、フィクリ・クラックオウル教授(トルコ共和国・アンカラ⼤学・考古学、キュルテペ遺跡発掘調査隊⻑)と共同で、トルコ・キュルテペ遺跡の調査を 2008 年に開始しました。本年は調査が始まって 15 年という節⽬であり、その成果について発表いたします。

■発表内容<現状>⼈類史においてメソポタミア(ティグリス川とユーフラテス川に挟まれた地域)は、最初に都市が誕⽣した地域とされています。それは、今から約5000年前の後期銅⽯器時代に相当 ⼈類史における都市の起源を探る旅-トルコ共和国キュルテペ遺跡調査15年の成果-
 
<発表のポイント>
1.⻄アジア地域では⼈類史上初めて都市が⽣まれましたが、その要因をめぐる調査・研究は主にメソポタミア地⽅で⾏われてきました。都市誕⽣の要因として、教科書では、「ティグリス、ユーフラテス川などの⼤河流域で灌漑農耕が⾏われた」事が挙げられています。しかし、メソポタミア以外の地域では、その状況がよくわかっていませんでした。

2.そこで、我々⽇本隊は、2008年からトルコ共和国中央部カイセリ県(カッパドキア地域)にて遺跡踏査を⾏い(⾛⾏距離にして約1万 km)、約130遺跡を発⾒・登録しました。これらを分析した結果、メソポタミア地⽅とは異なり、希少資源の交易によって都市社会が成⽴・維持されたメカニズムという仮説を唱えました。

3.そして、我々は2015年から同県にあるキュルテペ遺跡(ユネスコ世界遺産暫定リスト、世界記憶遺産) において、未発掘区域の発掘調査を開始しました。途中、地下⽔が湧くなど、さまざまな困難を乗り越え 2021 年に紀元前 3300 年前後の⼤規模建築址を発⾒しました。これはトルコ中央部最古の事例になると ともに、トルコにおける都市誕⽣の時期がメソポタミアと同様の時期まで遡る可能性が⽰唆されます。

4.我々の発掘調査は今夏も⾏われます。そして近い将来、⼈類史における従来の都市起源論を書き替える 可能性があります。 2/3します。年間降⽔量が200mm に満たない当地域では、⼤河の⽔を利⽤する灌漑農耕が発達しました。その為には、農地に、川から⼈為的に⽤⽔路を引いてくる必要があります。そして⼤規模な⼈的⼟⽊⼯事と⽔の管理が重層的な社会階層を⽣み出し、⽀配者、聖職者、軍⼈、 市⺠、奴隷の出現を促したとされています。その⼀⽅、メソポタミア以外の地域では、その状況がよくわかっていませんでした。
<研究成果の内容>
紺⾕亮⼀、⼭⼝雄治の⽇本隊は、フィクリ・クラックオウル(キュルテペ遺跡発掘隊⻑)らの⽀援を受けて、⻄アジアにおける多様な都市誕⽣要因を探るために、2008年からトルコ中央部に位置するキュルテペ遺跡(トルコ最⼤級の規模を持つ)とその周辺地域の調査を開始しました。

これは、当地域での本格的なGISを駆使した遺跡分布調査となり、約 130 遺跡を発⾒・登録しました。これらの遺跡の環境、時期、規模、分布等を分析した結果、当地域の都市誕⽣期(後期銅⽯器〜前期⻘銅器時代)における当地域の遺跡分布パターンは、メソポタミア地域 とは⼤きく異なる事が判明しました。つまり、農耕を主体としたメソポタミア地域における都市誕⽣の要因とは、異なるメカニズムが存在した事が⽰唆されます。実際、キュルテペ周 辺は平地が少なく農耕には不向きで、冬にはかなりの降雪があります。

では、キュルテペはなぜこれ程、⼤規模な都市に成⻑したのでしょう。現段階では、仮説ですが、遺跡踏査時に発⾒したスズ鉱⼭関連遺跡の存在から、主として鉱物等希少資源の交易によって都市社会が 誕⽣する可能性を提⽰しました。 2015年からは、都市誕⽣のプロセスを考古資料から具体的に明らかにするために、キュルテペ遺跡の北・⻄・中央部に調査区を設けて発掘調査を開始しました。

そして、ついに2021、2022年にこれまで学界で「暗⿊時代」とまで評価されてきた当地域の後期銅⽯器〜前期⻘銅 器時代の⽂化層を確認しました。特に中央調査区において紀元前3300年前後の⼤規模建築 址を検出したことは注⽬に値します。これはトルコ中央部最古の事例になるとともに、トルコにおける都市誕⽣の時期がメソポタミアと同様の時期まで遡る可能性を⽰唆するものです。

<社会的な意義>
これまで⻄アジア地域の都市化は、⼤規模な⾷料⽣産を背景として成⽴したと考えられてきました。しかし本調査の成果は、⻄アジア地域の中においても都市化の要因が単純ではなかったことを⽰します。都市化のプロセスは多様な展開をしてきたことが想定されます。歴 史的背景が違う中で誕⽣した都市間は常に緊張状態にあるとも⾔えます。そして、現代社会の混迷は「都市⽂明の衝突」とも⾔えます。我々の研究が「未来の都市⽂明」を占ううえでの試⾦⽯となることを願いつつ、今後も調査を続けていきます。

図1 約5300 年前の⼤規模建築遺構(©Kültepe Expedition Archive)

図1 約5300 年前の⼤規模建築遺構(©Kültepe Expedition Archive)

■論⽂情報 論⽂名:Discovering the Late Chalcolithic Period at Kültepe: Excavation of the Central Trench (2021-2022) 掲 載 紙:Subartu(採録決定済、2023 年刊⾏予定) 著 者:Fikri Kulakoğlu, Ryoichi Kontani & Yuji Yamaguchi

■研究資⾦・謝辞
本研究は、⽇本学術振興会科学研究費(JSPS 科研費 JP24401034、JP20K01097、MEXT 科 研費 JP21H00009)、ノートルダム清⼼⼥⼦⼤学研究助成⾦、RIDC共同研究、公益財団法⼈髙梨学術奨励基⾦、公益財団法⼈三菱財団、公益財団法⼈福武財団、(株)パレオ・ラボの⽀3 / 3援を受けて実施しました。
 

現代社会学科
紺谷亮一教授(教員紹介)
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社会史コース(研究分野)

紺谷先生のトルコ発掘記
キュルテペ遺跡発掘現場|現代社会学科|社会史コース(考古学)|紺谷亮一教授
 

・⼈類史における都市の起源を探る旅 -トルコ共和国キュルテペ遺跡調査 15 年の成果-(PDF410KB))

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