2021.09.13
このような現代社会学科の教員の中で、今回は、考古学が専門の紺谷亮一教授のお話です。紺谷教授はこの夏、毎年の研究のため、トルコ共和国へ発掘調査に赴きました。トルコではどのような発掘をおこなっているのか、発掘がどのような意味をもっているのか、またこのコロナ禍で世界はどうなっているのかについて、答えてもらいました。
■トルコでは、どの地域でどのような発掘をしていますか?
トルコ中央部のカイセリ(古代ローマのカエサルから命名)市にあるキュルテペ遺跡で発掘しています。この地域はカッパドキアともいわれ、現在観光地としても有名です。近郊には標高4000mにも及ぶエルジェイズ山がそびえています。遺跡は標高1000mの高原地帯に位置し、日中は30度を超えますが、標高が高く湿気が少ないので日本より過ごしやすいです。また朝、夜はかなり冷えます。なので、気をつけないとすぐに風邪をひいてしまいます。
トルコ カイセリ(Google マップ)
それはまだ秘密です!(笑) 今から5000年以上前の大型建築跡を発見しました。現在も発掘は進行中なので、最終的な評価は今後判明します。新聞発表、学会発表等で詳細にお伝えしますので、成果についてはもう少しお待ちください。
我々のテーマは「都市文明の起源」を探ることです。キュルテペ遺跡は4000年以上前からアナトリア(現在のトルコ)の大交易都市でした。その起源を明らかにすることで、なぜ古くからこの地域に都市が築かれたのかを解明しようとしています。古代メソポタミア文明はムギを中心とした農耕生産が基盤にありました。一方、キュルテペ遺跡周辺は、今日でもあまり農耕に適した地域ではありません。我々の調査は従来の都市文明成立の概念を覆す可能性を秘めています。その意味で今回の発掘調査は大きな手応えがありました。
■発掘はどのようなやり方でおこなっているのですか? スコップを持って地道に掘っているのでしょうか?
遺跡近郊から労働者の人を募集します。中には村の女性もいます。この人たちといっしょに発掘します。最初はツルハシ等の大型の道具で掘っていき、日干しレンガ壁や土器がたくさん出土しはじめたら、スコップ等小型の道具で慎重に掘っていきます。ちなみに、私は日本のホームセンターで購入したスコップを使用しています。日本の道具は繊細で、とても使いやすいです。
日干しレンガは西アジアに特徴的な建築材で、泥を木枠に流し込み、天日干しにしたものを壁材として使います。夏は涼しく、冬は暖かい、断熱材の役目をはたします。発掘では、日干しレンガの目地をみつけられるかどうかが、重要です。なので、絶えずホウキで地面をクリーニングしながら掘っていきます。
■コロナ禍でのトルコ行きでしたが、トルコはどのような状況でしたか?
羽田発、イスタンブル行きの飛行機は満杯でした。ちょうど東京オリンピックに参加した選手たちが帰国するのです。トルコをはじめ、エジプト、クロアチア、ウクライナ、モンテネグロ等、多くの選手たちがいました。またイスタンブルからカイセリへの国内線ではスペイン人の観光客が多くいました。ヨーロッパではワクチン接種後は、旅行を段階的に進める方向に舵を切ったようです。
トルコではワクチン接種が日本よりも進んでいます。観光立国でもあるので、すみやかに接種を済まし、少しでも外国人旅行者を受け入れたいのでしょう。その一方、トルコはシリア、アフガニスタン難民を数百万人単位で受け入れています。文化的背景が異なる多くの人たちを受け入れることに、トルコ国民からは反発も起こっています。日本でこの規模の難民を受け入れることは、想像できないでしょう。難民政策がいかにむずかしいかを痛感しました。
■来年の発掘への意気込み、または課題や目標があれば教えてください。
今回みつかった大型建築物のプランと、その機能を明らかにしたいです。つまり、この建物がどのような目的で造られたのかということです。正直、もう少し現地に滞在し、発掘を続けたかったです。でも大学に勤めている以上、学内業務の準備もしなければなりません。何事も自分の思い通りにはなりません。
あとは、体力づくりの大切を痛感しました。日頃から基礎体力をつけておかねばなりません。体力、精神力この二つがうまく合致しないと発掘はできません。でも、来年を楽しみにこれからもがんばっていきたいと思います!
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