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児童学科

2021.02.25

児童学科|6研究室座談会 Vol.4|コロナ禍において各学術領域が直面している課題

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2月19日に掲載しました、児童学科 6研究室座談会(2020年12月収録)のブログの続きをお送りします。

前回のブログはこちらをご覧ください。
児童学科|6研究室座談会 Vol.1|6研究室の座談会が始まりました
児童学科|6研究室座談会 Vol.2|コロナ禍における児童学科の授業のようす
児童学科|6研究室座談会 Vol.3|コロナ禍における児童学科の授業のようす②

コロナ感染症の拡大は、私たちの身の回りのいたるところに閉塞感を生み出していますが、それは、同時に社会・教育のありかたについても大きな変革を求めるものになっています。各学術領域がこのコロナ禍において直面している課題は、時代の先端となる研究課題となりえるものですし、場合によっては、新たな時代のブレークスルーを生み出す可能性を秘めています。

ここからは、先生方の専門領域の視点から、コロナ禍を読み解いていただきたいと思います。

「教育現場は、大学はもちろん、全ての教育機関において混乱は生じましたが、一方で、読み書きの困難のある子どもたちに対するICT(Information and Communication Technology)のサポートが、一気に進みそうないい予感もあるのですが、特別支援教育が専門の東先生はどのように感じられますか?」(湯澤)

「確かに、そうした一面は、あります。2023年度までの実現を目指していたギガスクール構想(ICTを活用した児童生徒の学習活動の支援)についても、早急の対応が必要との認識が広がり、今年度は新たに補正予算が組まれています。そのため目標実現(一人1台のPC)は加速するでしょう。ただし、これはあくまでも、ハード面の話でしかありません。本来、ギガ構想実現には、ハード、ソフト、指導体制が必要ですが、後者のソフト、支援体制について実施は追いついていないというのが現状ではないでしょうか。また、ハード面(パソコン・ネットワーク)に関しても、生徒にとっては使い勝手の悪い古いタイプものの購入が計画されているようです。様々なニーズを抱えている生徒にとって、ICTを有効に活用しようという機運が本当に学校現場で生じているのかといった点については、まだ懐疑的です。だからこそ、大学教育や研究者が、現場をリードしていく必要があると思います。」(東)

「アートは、人生を豊かにする大切な要素ですが、美術領域ではどういった現状でしょうか?」(湯澤)

「当初、コロナ感染拡大防止対策が模索される中で、美術館での鑑賞活動は問題ないとされていましたが、やはり一時期美術館も閉鎖期間がありました。現在では、予約制で入館できるようになってきており、以前より人数が制限されている分、鑑賞しやすい環境になっているかもしれません。しかし、ふらっと行きたいんですよね、美術館。オンライン予約に敷居の高さを感じる方もおられると思います。
そして、どうしても海外都市のロックダウンを受け、展覧会のための作品の渡航が難しいようです。今、開催されている展覧会は、すでに国内にある作品に光を当てたり、江戸絵画や日本の美術作品、日本人作家の作品に注目したりした企画が多いような気がしており、そこから起こるかもしれない新たな潮流を楽しみに感じています。」(小田)

「最近の学校現場において、特に、音楽の授業はなかなか歌声を響かせることができないというニュースも聞きましたが、教育現場では、どういったことが生じていますか?」(湯澤)

「小学校音楽科では、コロナ禍による歌唱や楽器演奏の制約の中でも、子どもたちが音や音楽を感受し、表現する授業の工夫がなされています。例えば、『教育音楽小学版(2020年10月号)』には、小学校教諭である平野次郎先生の記事が紹介されています。ここでは、子どもたちが和音の響きや構成音について、実際に音を重ねたり、旋律にいろいろな和音を組み合わせてみたりして、試行錯誤して考えながら学ぶ姿が示されています。コロナ禍においても、子どもたちの思考力や表現力を発揮できるような授業の方法をポジティブに考えていくことの重要性を感じています。」(藤掛)

「新型コロナ流行下で、子ども向けの無料電子書籍の公開等のサービスが拡大しましたが、このことについては、どのように考えますか?」(湯澤)

「早急な対応で、すばらしい動きであるとは思いますが、その子にぴったりの本を手渡すこと、その後につながる1冊の本との出会いには、やはり身近な大人の存在が欠かせないと痛感しています。小学校教諭の立場で、クラスの子どもたちに読み聞かせをしている方も話しておられましたが、「子どもが自分で読めるもの」と、「今のその子の心にぴったりのもの」はちがいます。手軽に読めるものだけ流し読み、拾い読みをするだけでは、暇つぶしにしかならず、読書の喜びを感じることができません。どんなに読書環境が整っても、やはり、本を手渡す大人の役割は、大切です。そのことを、改めて学生たちとも考えていきたいと思います。」(片平)

「実際、緊急事態宣言下でも保育園は休むことがありませんでしたし、幼稚園や学校も急変する状況に対応しながら、休校中の子どもたち・家庭へのケアに取り組んでいました。そのことについて、何か、お考えはありますか?」(湯澤)

「現場では、これまでの実践のあり方を見直して、現在の状況下でよりよい保育・教育を目指す努力が続けられています。こうした経験を通して、社会を維持する上で欠くことのできない「エッセンシャル・ワーカー」の仕事の意義が、改めて注目されています。教育学の世界では、感染予防を十分にしつつ、子どもたちの学びを止めないための少人数学級化に向けた提言の動きもあります。子どもたちが育ち、未来の社会を築いていく上で、ケアと教育の営みは欠くことができません。こうしたケアや教育がよりよく実現されるような、社会のあり方を考えていくことが重要な課題だと思います。」(西)

「では、最後に心理学の観点で今の時代を読み解いてみたいと思います。
コロナ禍において、「AI」や「ICT」の利便性は広く認識されるに至りました。一方で、テクノロジーにはない、人間の「心」に関心が集まっていることも事実だと思います。

便利さと効率性を追い求めてきた人間は方向を見失っていたけれども、コロナ禍において、授業の本質とは何かといったことを大学の授業者として、私たちが自問してきたように、個々人もまた、「自分は本来、何を求めていたのか」といったことを自問し、改めて、自分の「心」に素直であることに目覚め始めてきているのではないかと思います。

心理学の様々な知見を、一人ひとりが「よりよく生きる」ためのツールとして再構成していくフェイズ(局面)に入ってきたのではないかと感じています。」(湯澤)

私たちが生きた中で、こんなにも世の中が変わろうとした時代もありませんでした。この数年を、1000年に一度の転換期になり得ると読む歴史学者もいます。新たな時代の幕を開けるのは若い人々です。今は、力を蓄える時でもあります。そこで、次の2回は、この時代にこそ読んでおいて欲しい本を、各教員が1冊、紹介していきます。
 
【今読んで欲しいおススメの本】につづきます。


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西隆太朗教授
小田久美子准教授
東俊一准教授
湯澤美紀准教授
片平朋世講師
藤掛絢子講師

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