伊木 洋(いぎ ひろし)
国語教育担当
国語科教育の実践理論を研究しています。
国語科教育の実践研究に取り組んできた私は、大村はま先生の国語教室に注目してきた。大村はま先生は、中等国語科教育において、学習者を主体とする独創的な実践を生み出し、その実践は大村単元学習と称された。大村はま国語教室における具体的な実践の記録は、『大村はま国語教室』全15巻別巻1(筑摩書房)に収められている。
『大村はま国語教室1 国語単元学習の生成と深化』(筑摩書房)
大村はま先生のご逝去後に設立された大村はま記念国語教育の会は設立20周年を迎え、2025年10月25日に記念研究大会が専修大学で行われた。大会テーマは「今、ことばを育てる教室の原点を求めて」であった。開催案内には、次のように記されている。
大村はま没後20年、大村はま記念国語教育の会設立20周年の年を迎えました。社会が、文化が、教育が急激に変化している今、その変化のただ中にいても見失ってはいけない軸を確認することが必要だと痛感します。20年を経て、私たちは何を目指し、何を守り、何を実現しようと力を尽くすのか。改めて深く考えあう研究大会にしたいと願っております。
大村はま記念国語教育の会(2025)「大村はま記念国語教育の会20周年記念研究大会東京大会開催案内」
社会、文化、教育が急激に変化し、新しい学習指導要領の編集が始まっている今、大切にしなければならない不易の考え方を確認する重要性は増している。中等国語科教育において、類例のない実践を残した大村はま先生が没して20年、大村はまの名前を聞いたことがないという若い実践者も増えつつある。こうした状況であるからこそ、学習者を学習の起点にすえて学習者主体のことばの学びを創造した大村はま先生の国語教室は、まさに、ことばを育てる教室の原点であり、その実践の数々は、真に大切にすべき軸を明示するものである。
記念大会は二つの実践発表から始まった。佐藤勇介先生(横浜市立川上小学校)の「やなせたかしの自伝・評伝を読むわたしたち-比べ・重ね・伝え合う」では、自伝、評伝を読んで考える探究型の学習指導が展開されていた。達富悠介先生(青山学院中等部)の「偶然の出会いを創造する“ぶくぶく交換会”-小川洋子「生涯の友と出会う」をもとに」では、読書生活を拓く学習指導が行われていた。幾田伸司先生(鳴門教育大学)による指導・講評では、二つの実践に共通性と独自性が指摘された。実践発表についで、第10回大村はま奨励賞授賞式が行われた。
午後は、記念大会を祝して、作家、小川洋子さんと大村はま記念国語教育の会の苅谷夏子理事長の特別対談「言葉の船に乗って心を旅する」が開催された。小川洋子さんと大村はま教室で学んだ苅谷夏子理事長の対談は、互いに言葉の重みをかみしめ、相手の心を大切にしながら、言葉を交わすものであった。苅谷夏子理事長の問いかける言葉に対する小川洋子さんの透徹した人間観から発する一言一言が聴衆の心に響いた。
特別対談に続いて、20周年を記念して、「20年を経て大村はまの実践と思想を捉え直す」と題して、3人の研究者による研究発表が行われた。寺井正憲先生(千葉大学名誉教授)は「編集からみた大村はまの読むことの学習指導について」、本学の教職課程の基礎を築いてくださった田中宏幸先生(広島大学名誉教授、元ノートルダム清心女子大学教授)は「大村はまの「書くこと」学習指導の特色」、望月善次先生(岩手大学名誉教授)は「大村はま先生に学ぶ二つの道」と題して、大村はまの実践と思想の価値を示してくださった。
大村はまの「書くこと」学習指導の特色 田中宏幸(広島大学名誉教授、元ノートルダム清心女子大学教授)
最後に展望として甲斐雄一郎大村はま記念国語教育の会会長(文教大学)によって、記念大会の意味づけがなされた。
記念大会に参加した本学卒業生で、大村実践に学びつつ実践研究に取り組んでいるA・H先生は、大会に参加して学び得たことを、次のようにメールで伊木に知らせてくださった。
今回発表された先生方の実践では、図書館を活用し、絵本・伝記・小説など多様なジャンルの本を教材として取り入れ、子どもたちが目的を共有しながら読書そのものを楽しみ、没頭している姿が印象的でした。国語科で育てたい資質・能力は、教科書の中だけでは十分に培われないこと、「自立した読者を育てる」という意識が教師に求められることに改めて気づかされました。今後は、学校図書館を積極的に活用し、子どもたちが自ら読み、考え、つながっていくような授業づくりを実践していきたいと思います。
今回の学会参加を通して、国語科の本質と教師としての姿勢の両面から、自分の実践を見つめ直すことができました。これからも日々の授業の中で、子どもたちの「読む力」と「生きる力」を育てることを目指し、丁寧に実践を積み重ねていきたいと思います。(A・H)
A・H先生は、「学会参加を通して、国語科の本質と教師としての姿勢の両面から、自分の実践を見つめ直すことができました。」と記し、ことばを育てる教室の原点に触れて、自らの実践を見つめ直し、丁寧に実践を積み重ねていく気持ちを新たにしている。ここには、ことばを育てる教室の原点に学ぶことが、A・H先生のように若い実践者の豊かな単元づくりにつながっていくことが示されている。
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