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日本語日本文学科

2024.02.01

日本初! 「ユネスコ創造都市ネットワーク」〈文学〉分野に岡山市加盟 ―「ツボジョーワールド探検隊」7年間の貢献― | 山根 知子 | 日文エッセイ243

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【著者紹介】
山根 知子(やまね ともこ)
近代文学担当
宮沢賢治・坪田譲治を中心に、
明治・大正の小説や詩および児童文学を研究しています。


日本初! 「ユネスコ創造都市ネットワーク」〈文学〉分野に岡山市加盟
 ―「ツボジョーワールド探検隊」7年間の貢献― 

〈文学〉の力を心の糧に 

 2023年10月末日の夜のこと、岡山市が「ユネスコ創造都市ネットワーク」〈文学〉分野に認定を受けたことを、いち早くネットニュースで知った「ツボジョーワールド探検隊」(日本語日本文学科開講科目「総合探究Ⅰ」)のひとりの学生が、メンバーにその速報を流しました。その速報を読んだメンバーは、待ち受けていましたといわんばかりに数分以内に全員が反応し、喜びを共有しあっていました。私は、岡山市長への提言の段階から関わっていたため、ユネスコからの認定を受けた感動はもちろん大きなものでしたが、学生たちの様子を知ってその喜びが倍増する思いでした。
 振り返ると2023年5月に岡山市がユネスコに提出した申請内容には、主軸として強調される「坪田譲治文学賞」に連なり、「ツボジョーワールド探検隊」の活動も記載されました。私はそのことが学生たちの今年度の活動の励みになればと思って伝えていました。それを学生たちは意識して、10月末頃のユネスコからの発表を心待ちにしていてくれたのです。 
 続いて、その喜びが冷めやらぬ翌11月のことでした。すでに卒業をして社会人5年目となった「ツボジョーワールド探検隊」第1期生のメンバーと久しぶりに会う機会があり、この事実を伝えました。第1期生たちは、自分たちが試行錯誤しながら創設した「ツボジョーワールド探検隊」の活動が、後輩たちによって7年も続けられ、「ユネスコ創造都市ネットワーク」認定という世界的な動きへの貢献につながったと、満面の喜びを表してくれました。その創設時の第1期生たちは、岡山市政策企画課が「学生イノベーションチャレンジ推進プロジェクト」を募集し始めた初年度にこのプロジェクトに加わって活動を始めた1期生です。そのときから〈文学〉に心寄せて研究する日本語文学科の「ツボジョーワールド探検隊」のメンバーには、様々なまちづくりへのアプローチがあるなかで、〈文学〉こそ人々の心の基盤に根づいて心豊かなまちづくりができるという信念が共有され、〈文学〉で岡山市を活気づけたいという思いが貫かれてきました。 
 2023年度の「ツボジョーワールド探検隊」の7期生たちも、そうした先輩の思いを引き継ぎ、岡山から生まれた〈文学〉が、作者の岡山での体験と愛着ゆえに現在の岡山を生きる人々の心の糧になるかけがえのないものであると認識し、発信を続けています。 
 これまで譲治文学の魅力をさまざまな角度から普及する活動をしてきましたが、さらに2023年度の学生たちは、坪田譲治に関連が深い文学者との関係に拡げたいとの思いをもって、新しいアプローチを考えました。それは、岡山の詩人・永瀬清子との関係をめぐり譲治と重なる郷土愛について探究・発信することでした。
 こうして7期生の活動は、大きく2点の挑戦の方向を生み出しました。1点目は、初めて譲治と他作家との関係におよぶ2作家分の内容としたことで、視点を広げることができた点でした。2点目は、学生たちの活動領域が初めて岡山市内だけでなく永瀬清子の出身地である赤磐市にも及んだという領域の広がりでした。 

坪田譲治と永瀬清子の郷土愛 

 2023年度の前期には、学生たちは、新しいテーマによる内容を吟味して、『川とはぐくむ郷土愛―譲治と清子の見た世界―』という題名での坪田譲治紹介冊子を仕上げ、発行しました。譲治の童話でも清子の詩でも見出すことができた郷土愛として、岡山県の三大河川への両作家のまなざしが象徴的であるとして注目したのです。 
 

「文学創造都市岡山」を冠した冊子 『川とはぐくむ郷土愛 ―譲治と清子の見た世界―』

「文学創造都市岡山」を冠した冊子 『川とはぐくむ郷土愛 ―譲治と清子の見た世界―』

2023年10月14日 『山陽新聞』

2023年10月14日 『山陽新聞』

 永瀬清子の詩「美しい三人の姉妹」には、「ゆたかな髪をもった大きな姉のようだ」とされる「吉井川」、「知的な瞳の中の妹」とされる「旭川」、「気性のいさぎよい末の娘」とされる「高梁川」が、岡山の大地をゆたかに潤す三人姉妹として魅力的に描かれています。この詩を、坪田譲治は編者として『少年少女文学風土記 ふるさとを訪ねて〔Ⅱ〕岡山』(泰光堂)という本に収録しています。一方譲治も、岡山三大河川に言及した随筆や川を舞台にした多くの童話を書いています。 
 また永瀬清子が、譲治没後に岡山市が「坪田譲治文学賞」を制定する際に尽力し、その第1回から第7回まで運営委員を務めたことも、この冊子に紹介されています。 

赤磐市と岡山市での行事へ 

 こうした学生の活動は、卒業生の学芸員・白根直子さんが勤める赤磐市教育委員会の展示「坪田譲治と永瀬清子―おかやま三大河川を愛したふたりの交流」への協力と、関連行事「朗読とお話 坪田譲治と永瀬清子」開催につながりました。 
 

坪田譲治童話「ハヤ」のパペット人形劇 2023年9月17日 於 赤磐市くまやまふれあいセンター

坪田譲治童話「ハヤ」のパペット人形劇 2023年9月17日 於 赤磐市くまやまふれあいセンター

2023年9月21日 『山陽新聞』

2023年9月21日 『山陽新聞』

 そこで、学生たちは作品朗読を通して二人の郷土愛を紹介するとともに、一人ひとりが自身の地元の川への思い入れを語りました。それに触発されて次々と川体験を語ってくれた参加者とともに、心響き合う感動を味わいました。 
 それ以降も、「ツボジョーワールド探検隊」は、岡山市の各所をスタンプラリーでつないで活気づける活動や、岡山芸術創造劇場ハレノワでのイベント参加を通して、2作家を紹介する活動をしました。 
 坪田譲治も永瀬清子も、〈文学〉のなかであたためてきた郷土愛が、様々な人たちの感覚で受けとめられて次世代へと拡がり、さらにグローカルな魅力を育てることを喜んでいることでしょう。 

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