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日本語日本文学科

2023.12.10

【卒業生寄稿】低迷すれど沈むことなく(栢山シキ)|日本語日本文学科

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日本語日本文学科

文学創作論

今年2023年度、集英社が主催する公募文学賞「ノベル大賞」で、2023年準大賞を受賞した卒業生・栢山シキさんに、記事を寄せてもらいました。
栢山シキさんは、本学の日本語日本文学科の授業「文学創作論」を2年続けて受講し、卒業後は卒業生創作の会「水鏡会(みかがみかい)」に加わって、仕事の傍ら創作を続けてきました。その経験を振り返り、あとに続く後輩たちへのエールを送ってくれました。

 
低迷すれど沈むことなく
栢山シキ
 
1.ぼんやりのんびり大学生
 学生の時、分不相応に見ていた夢がある。「在学中に小説家デビューして、就活せず生計を立てる」夢だ。たぶん、ちょっと小説をかじった人間なら、1度は憧れる夢だと思う。
 結論から言うと、叶わなかった。というか、書いてもいなかった。高校の時は1年に1回、必ず文学賞に投稿していたのに、大学入学後、全然書かなくなってしまった。物語そのものを書くより、キャラクターを作ることのほうが楽しくなっちゃったのである。
 この本末転倒っぷりはしっかり自覚しており、このままではまずいと思い始めたときに、友人づてに「文学創作論」なる授業の存在を知った。彼女に先導してもらう形で受講を決め、教室に飛び込んだ。
 今まで好き勝手に書いて来たので、決められた締め切りやテーマなんてものとは無縁だった。文字数もろくに気にしたことがなかった。そんな私にとって、「文学創作論」は書く以前の心構えを叩きこんでくれた場所だった。
 特に印象に残っているのが「忘れられない幼少期の経験を随筆として起こし、さらにその経験をリアリズム小説で書く」という課題である。首どころか頭のてっぺんまでファンタジーに浸かっている人種だったので、これには頭を抱えた。今まで得意なハイファンタジーしか書いてこなかったので、どう書いたらリアリズム小説になるのか全く分からず、手探りでとにかく書いた。何とか及第点には達していたようで、無事単位を頂くことができた。本当に良かった。

文集『こころ』と『プリズム』。『こころ』では同期生とともに表紙を担当した。

文集『こころ』と『プリズム』。『こころ』では同期生とともに表紙を担当した。

2.忙殺される社会人
 さて、文学創作論を受講した卒業生には「水鏡会」という小説サークルに所属できる権利が与えられる。
 毎月1回か2回、額を付き合わせてそれぞれの作品を品評し、文学賞に投稿、受賞を目指すサークルだ。元は大学構内で実施していたそうだが、コロナ禍の影響で現在は主にzoomで開催されている。
 栢山が受賞した作品も、このサークルで助言をもらいながら書き上げた。選評を読むと、水鏡会で指摘された内容がそのまま選考委員にも指摘されていたりしているのだから興奮してしまう。
 実は、栢山は卒業後すぐに水鏡会に所属したわけではない。夢破れて就活に励み、一般企業に就職して、忙しさの内に小説に携わる気力も意欲も失い、本1冊読むこともできない生活を送っていた時期がある。
 いろいろあって再び何とか筆を持った時、水鏡会のメンバーから声をかけてもらった。栢山に文学創作論の存在を教えた彼女である。彼女がいなかったら、栢山は母校のブログに載せる文章なんて一生書いていないだろうと思う。いつもありがとう、これからもよろしくお願いします。
 水鏡会に所属してからは、1か月に1回は必ず締め切りが設定されるため、とにかく時間を見つけて書いた。2行しか増えていない原稿を提出したこともある。
 久しぶりの執筆作業に迷走し暴走する栢山を、水鏡会のメンバーは優しく厳しく受け止めてくれた。投稿ペースを高校時代と同じ頻度に戻せたのは、間違いなく水鏡会のおかげだ。
 自分以外の創作者と直接言葉を交わして意見のやり取りができるのは確実に刺激になる。私もやらねば、という気持ちになれる。各々の好みや傾向や専門分野も違うのだから、得られる知見は多岐にわたる。逃す手はないと、そう思う。水鏡会はいつでも新メンバーを募集しております。

受賞のお祝いに、水鏡会のメンバーから頂いた花と万年筆、インク。万年筆には「Shiki Kayama」と刻印されている。

受賞のお祝いに、水鏡会のメンバーから頂いた花と万年筆、インク。万年筆には「Shiki Kayama」と刻印されている。

3.さいごに
 「文学創作論」で毎年作成する文集が、2022年度で第20集に達したとお聞きした。表紙もなんだか表紙係だった栢山が作ったものよりも美麗な感じで、後輩の技術センスに震えた。すごい。栢山が参加した文集が第12集と第13集だから、つまり卒業してから……と考えかけてやめた。どうりで徹夜する体力がなくなるわけである。
 「文学創作論」という、「書き綴る」力を養う授業が存続しているのは、喜ばしいことだと思う。教育職に就いているでもない立場で語るなんて片腹痛いことだと思うが、「書く」という行為は一生ついて回る。一般企業に就職するならなおさらだ。
 自分の言いたいこと、伝えたいことをどう書いて、どう提示するか、提示した結果、どういう反応が得られるのか。同年代の、複数人の人間からの意見が得られる場というのは、たぶんそんなに多くない。「文学創作論」という授業は、そういう機会を与えてくれる数少ない場のひとつだ。
 もしかしたら、受講するかどうかが、あなたの人生の岐路かもしれない。無二の友人を得るかもしれないし、思わぬ才能が花開くかもしれない。「小説なんて書けないしなあ……」としり込みせず、「書くべきは小説じゃなくてレポートだし」などと考えず、ぜひ飛び込んでみてほしいと思う。せっかくの機会なのだから。
 この文章については、小説家が書いた随想ではなく、とうに卒業した先輩の、お節介な手紙だとでも思ってほしい。残念ながら、私はまだそんなに大層な地位には付けていない。その上で、少しでも私の伝えたかったことが伝わっているなら幸いである。

愛猫たちのうちの一匹。受賞作「レディ・ファントム」は彼を抱き抱えながら直しを行った。いつまでも小さくて、人と猫に優しい、鳥を獲るのが得意な猫だった。

愛猫たちのうちの一匹。受賞作「レディ・ファントム」は彼を抱き抱えながら直しを行った。いつまでも小さくて、人と猫に優しい、鳥を獲るのが得意な猫だった。

【著者紹介】
栢山 シキ(かやま しき)=ペンネーム
ノートルダム清心女子大学日本語日本文学科卒業(2015年度卒業 64期生)。
集英社が主催する公募文学賞「ノベル大賞」で、卒業後8年目の2023年度、準大賞を受賞。
受賞作品は、今後、集英社のオレンジ文庫から出版される予定。


■【卒業生の活躍】集英社オレンジ文庫「ノベル大賞」で2023年準大賞を受賞しました|日本語日本文学科卒業生
卒業生創作の会「水鏡会(みかがみかい)」とは
■文学創作をめぐる好循環|山根 知子|日文エッセイ103
■文学創作論紹介ページ
■学生の作品紹介|「イニシエーション・テディベア」(森本 彩乃) 文学創作論・ 文集第20集『始発点』(2022年度)より



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