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日本語日本文学科

2022.11.16

《特殊文庫の魅力》第6回 「パーティーのマナーは重要 ―歌会の場合―」

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日本語日本文学科

本学特殊文庫には、本学国文科(現・日本語日本文学科)の教授であった故・正宗敦夫氏の旧蔵書からなる正宗敦夫文庫、江戸時代を代表する国学者である黒川春村・真頼・真道の旧蔵書を収める黒川文庫を中心とし、貴重な古典籍が多く所蔵されています。特殊文庫の資料を授業や自身の研究に活用している日本語日本文学科の教員が、全10回にわたって「特殊文庫の魅力」を発信します。


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《特殊文庫の魅力》第6回

「パーティーのマナーは重要 ―歌会の場合―」 

日本語日本文学科 講師 江草弥由起

 

もし、ノーベル賞の授賞パーティーに呼ばれたら、どうしますか?急にそう聞かれても、なんとも想像がつかないかもしれませんね。では、結婚式や葬儀などの冠婚葬祭の場に呼ばれたらと考えてみて下さい。正式なパーティー・儀礼の場に呼ばれるということは、その場を構成する一人としての振る舞いを期待されるということです。それを知る人たちは、何を着ていけばいいのか、どんな振る舞いをするべきなのか、NG行為はあるのかと作法(マナー・ルール)を調べ、その場にふさわしくあろうと努めるでしょう。

もし、ノーベル賞の授賞パーティーの主催を任されたら、どうしますか?出席者は作法に則った振る舞いを身につけてやってくるのですから、主催者はそれ以上にその場の作法を知りもてなすのが礼儀というものです。さあ、これはいよいよ困ります、こんな専門的なことはネットで簡単に調べられるものでありません。「作法書(マナーブック)が欲しい!」と思いますよね。儀礼・儀式の作法が重要視され求められるということは、作法書の発生につながることなのです

さて、今回の副題に「歌会の場合」とあります。「歌会」を砕けた表現で説明するなら、歌を披露し合うパーティーのことです。この歌会にも作法書が存在します。(歌会については、以前日本語日本文学科ブログにて簡単な説明をしていますのでご参照下さい。https://www.ndsu.ac.jp/blog/article/index.php?c=blog_view&pk=162677037104c1e722d226b0716fb4c0924bfbe756&category=&category2=


本学の特殊文庫には歌会の作法書がいくつか所蔵されています。今回はその中から『和歌会式』(黒-H138)についてご紹介したいと思います。

『和歌会式』(黒-H138)表紙

『和歌会式』(黒-H138)表紙

『和歌会式』内題

『和歌会式』内題

外題(表紙に書かれている題)に「和歌式 二条冷泉秘本」とあり、内題には「二条冷泉和歌式傳 極秘」とあります。「秘本」「極秘」というなんとも心くすぐる詞は一旦置いておきましょう。外題・内題にある「二条冷泉」について、これは歌道家の二条家と冷泉家をさします。茶道に御家元があり表千家や裏千家などの流派があるように、和歌にも歌道家の意識があり流派があります。家意識・流派の考えがある以上家の教えに相違が生じるのは道理で、歌会の作法書も複数伝存しています。
 

「二条冷泉」と、二条家と冷泉家が並べて記されることは珍しいことではありません。二条と冷泉を合わせて二流(ふたながれ)と言うこともあります。しかし、二つの家をまとめて一緒くたに扱ったというわけでもないのです。冷泉為和『題会庭訓』(だいかいのていきん)という作法書の末尾に「当家二条家相違此分候」(現代語訳:冷泉家は二条家とは異なるためこれを分けて書いたのです)と記されていることからも窺えるように、両家の相違を明確にして作法を理解することが求められていました。『和歌会式』にても、外題・内題に記される通り二条家と冷泉家の作法の違いに触れながら説明がなされています。

『和歌会式』(5丁オ)

『和歌会式』(5丁オ)

[校訂本文]*用字等を通行に改めた。
懐紙巻様、奥よりくるくると巻て、二条家はしかと折て上一寸ばかりすぐに二裏の方へ折也、冷泉家には巻終に折り目を付ず小口の丸く成様にして上を筋違に折也

ここでは歌を記す懐紙の巻き方について、「二条家は巻いた後に折り目をつけて上を裏の方に折り曲げる、冷泉家は巻いただけで折り目を付けないで上の方を斜めに折り曲げる」という内容が、絵付きで説明されています。些細な違いに思えるかもしれませんが、こういう小さな作法の違いの重なりが「家の慣い=流派」の特色となっていくのです。作法書が作成される背景には、家(流派)の教えを後世に伝授するという目的もあります。

『和歌会式』には歌会の場のしつらえ(セッティング)、会席での役目とその人選、着座の順番、懐紙・短冊の書式や持ち方置き方などが記されています。多くの場合、作法とは意味があって作られます。作法の中で何が重んじられ、何が変化していったのかを知ることで、歌会の場における人の考え方を探っていくこともできるでしょう。

本資料には成立年代や筆者を判断する材料となる奥書や識語がないため、内容から他の作法書との影響関係を研究・分析していく必要があります。その先に、本資料の新たな価値の発見があるかもしれません。引き続き調査していきたいと思います。

『和歌会式』本文

『和歌会式』本文

附記

 本記事は2022年度学長裁量経費教育改革研究助成金「「ノートルダム清心女子大学」特殊文庫目録」改訂に向けての資料整理および調査・研究」を受けての研究活動の一環として作成・公開しています。

 

ノートルダム清心女子大学附属図書館

「特殊文庫」紹介ページ

https://lib.ndsu.ac.jp/collection/special.php

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