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日本語日本文学科

2022.06.23

歌集から絵巻を考察する授業|授業紹介・研究紹介|日本語日本文学科

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日本語日本文学科

授業紹介

歌集から絵巻を考察する授業
―「中世文学講読」ではどんなことをしているか?―
 
日本語日本文学科 講師
江草弥由起

大学2年生になると「講読」という授業を履修することができるようになります。1年生で履修する授業では大学で専門を学ぶための基礎を身につけ、2年生から履修できる「講読」では作品を精読、先行する論文を正確に把握し、さらに作品を深く解釈していくための研究方法を学んでいくことになります。
 
私が担当している「中世文学講読」では、昨年度は『艶詞』(えんし)という中世の歌集を受講生みんなで精読していきました。『艶詞』は藤原隆房(ふじわら・たかふさ)の歌がおさめられている歌集で、その成立については諸説あるものの元々『隆房集』という隆房自身が撰んだ歌集があり、後に他者の手で編纂し直されて出来たという説が現在有力視されています。

授業内では『艶詞』と『隆房集』を比較し、歌集がどのように変えられたのかを分析しつつ、なぜそのような編纂が為されたのか、またなぜそのような作品が求められたのかを考えていきました。『艶詞』は分類上歌集ですが、歌の間に付されている詞書(ことばがき)により、歌物語のような歌集となっています。ちなみに本歌集に描かれている物語がどんなものかというと、小督(こごう)と目される女君に恋し恋仲となった隆房が、小督を高倉天皇に奪われた後も報われぬ恋心に悶え苦しむといったものです。
 
高校の授業では、このような歌集を目にすることがないものですから、学生たちは四苦八苦しながらも読解に勤しんでいました。

(A)『隆房卿艶詞絵巻』 *隆房と小督が向かい合う様子

(A)『隆房卿艶詞絵巻』 *隆房と小督が向かい合う様子

さてこの『艶詞』の面白いところは、元々ある歌集を編纂し直して出来たというだけに止まりません。『隆房卿艶詞絵巻』という絵巻物が現存しており、その絵巻には『艶詞』の末尾にある長歌が記されているのです。

授業内で『艶詞』を精読したからこそ見えてくるものがあります。例えば、『隆房卿艶詞絵巻』に描かれている絵の場面がなぜ『艶詞』にないのか? 『隆房卿艶詞絵巻』の長歌と『艶詞』の長歌の詞が微妙に異なるのはなぜなのか? そもそも『艶詞』から絵巻が出来たと考えて果たして良いのか?
 
現代でも「小説から漫画」「漫画からアニメ」といったように表現媒体を変換して展開する作品があります。表現媒体を変換することの意味は、現代と中世で変わらぬものなのでしょうか? それとも違うものなのでしょうか?

「歌集から絵巻を考察する授業」から学び得たものから、知的好奇心を大いに羽ばたかせて考える楽しさを学生に伝えたい! 「中世文学講読」はそんな思いで出来ている授業です。

(B)『隆房卿艶詞絵巻』

(B)『隆房卿艶詞絵巻』

*(A)に続く場面。(B)の画像右下には、長歌の一部が葦手(文字を絵に交えて描く手法)で描かれている。
※精読・・・ 細かいところまで、ていねいに読むこと。熟読。

注:本ブログ記事中の画像は、小松茂美編『日本の絵巻』10(中央公論社 1988)に依った。


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