このシリーズでは英語英文学科の卒業生の方々の学生時代と現在の活躍についてお伝えします。
まず第一回目は、認定特定非営利活動法人AMDAの難波妙さんです。英語英文学科2年生でI.S.A.岡山支部長の蟻正成美さんがインタビューしました。今回はP a r t 2として、ハンガリー国境でのウクライナ避難者への支援活動を掲載します。
−P a r t 1はこちらから
−現地の声を聞く〜ニーズに応える支援活動〜
蟻正:ハンガリーの国境に行ってウクライナからの避難者のために活動されたということですが、具体的な活動内容を話していただけますか。
難波さん:3か所で活動しました。そのうち2か所は歩いて20分ほどで国境に到達するという場所で、ひとつめはウクライナから最初のハンガリー側の駅のチケットセンターです。ふたつめはヘルプセンターというところに行きました。どちらの場所でも医療支援活動を行いました。
これらとは別で、もうひとつの場所は国境から20キロほど離れている町で、そこはウクライナに支援物資を持っていく集積ポイントのような場所になっていました。そこの団体で、実際にウクライナに支援物資を持って行って、また戻って、ということをずっと繰り返しやっている産婦人科のドクターがいたんです。
そのドクターといろいろ調整をして実際に現場で何が足りていないのかを聞いて、その時は処方薬が足りないとのことだったので、支援金をドクターに渡して処方薬を買ってもらいました。また、車両を渡したりもしました。そうすることで、現地のニーズが何なのかを現地で聞いて、即座に判断して支援を行うということをしました。
蟻正:現地の声を直接聞いて、それを生かしていくんですね。
難波さん:そうですね。いろんな災害でもそうなんですけど、ニーズは刻々と変わるんですよ。だから日本から物を送っても「それはもういらない」ということもあるし、日本から薬を送ったとしても、薬の処方箋が現地の言葉で書かれていないと困りますよね。
例えば、今こうやって「これが海外の薬です。飲んでください」と言われても、誰だって混乱しますよね。だから現地で必要な薬を調達して、現地の人たちが使いやすい物資を渡すんです。例えば、実際に私がハンガリーに行ったら歯磨き粉だと思ったものが実はマヨネーズだったんですよね(笑)。ですからその土地で自分たちが使っていたものをもらうのが一番安心だと思います。
−「立ち上がる強さ」を人は持っている。だからこそ生きることをあきらめないで欲しい。
蟻正:支援活動をされてきて、明るい面だけでなく辛い面もございましたか?
難波さん:いっぱいありましたよ。いろんな患者さんが来ましたからね。本当にキーウの付近で足を撃たれて3週間杖を突きながら歩いてきた人だったり、子どもと途中で別れてしまったお母さんの精神状態が本当に不安定になって、命の危険をみんなが心配したり。頭の包帯を交換してくれと言われて取ってみたら、空爆で陥没していた患者さんもいました。
話ができなくなった子どもたちもいたかと思えば、お母さんに連れられて遠足のようにはしゃいでいる、いたいけな子どもたちもいました。私は戦争を知らないけれども、こういった子どもたちが戦争を知ることになってしまったということはとても残念ですよね。いえ、残念という言葉では言い尽くせないほどです。もっと私が知らないような過酷な状況はウクライナの中にあると思うんですね。
今、500万人以上が国外に避難したということが注目されていますが、ウクライナは人口が4000万人いるんですよ。その中で500万人が逃げたということ。だけどまだ残りの3500万の人たちは国内にいるわけです。18歳から60歳までの男性は戦闘員として働かなければならないので、国から出られないんですよね。だから家族が離れ離れになっているんですよ。(※2022年4月インタビュー時)
お父さんだけウクライナに残って他の家族が逃げる人たちもいるし、子どもだけ預けてウクライナに戻る人もいる。そういう人たちもたくさんウクライナの中にはいるし、実際逃げたくても逃げられない人もいる。そういったいろんな人たちがウクライナ国内に残っている。
そういう状況の中で、それでも逃げてきた人たちと私はたくさんお会いしましたが、みんな「本当に逃げてきて、逃げることができてよかった」と言う。ただ自分の国にも戻りたい人がたくさんいると思うんですね。それだけでなく、これからどうしようかといった、いろんな不安がいっぱいあると思う。
なかでも必死に生きている人たちとたくさん出会って、私は「最後まで生きることを諦めないでほしい、生きることは尊い」ということを訴えたいと今回も強く思っています。
蟻正:そういう辛いことも目にされて、生きることを諦めないでと伝えたいんですね。
難波さん:そうです。自分の故郷に戻りたい、国に帰りたいという人はたくさんいると思うんですよ。そういう人たちの中の、国をもう一度復興していく、自分たちがウクライナに戻るという強さみたいなところを私は信じたいと思うんですね。
そういう人の強さというところは今までも災害支援の中で見てきて、いろんな方たちと触れ合ってきましたけど、「立ち上がる強さ」を人は持っていると思うんですよ。だからこそ、「最後まで生きることを諦めないでほしい」というのはすごく思うことですね。
−「生き残る」ということ
難波さん:私もいろんな災害支援をしてきて、実際に2016年の熊本地震のときには実家が全壊したんですね。母親は助かったので、自分の母校の小学校を救護室に代えて災害支援を行いました。これまでのいろんな状況の中で本当に死にたくなかった人はたくさんいると思うんですよね。
そういう生き残っている、生きているということは何らかの役割があると思うんですね。だから、とにかくどんなに辛いことがあっても、それがどんな病気でも最後まで生きることを諦めないでほしいと伝えているんです。
今回ハンガリーのほうへ、ウクライナの人道危機に対しての支援活動ということで、ハンガリーの国境で1か月ほどずっと活動をしてきましたが、いろんなひとたちが生き延びてきているんですよね。本当にsurvive(生き残る)したというか、そういう人たちが国境を越えてきて最初にやっとほっとする場所での活動だったんですね。
そういうなかでいろんな人たちを見てきました。「これが運命だ」と言った人も中にはいた。そんな人たちを見ても、みんな一生懸命生き延びて国境を越えて来ているんです。そういう人たちを見て思うことは、「最後まで生きることを諦めないでほしい」ということです。
―P a r t 3に続く
インタビュアー:英語英文学科2年生 蟻正成美さん
I.S.A.(International Student Association)部長。
I.S.A.は
I.S.A.岡山支部長として、支部内の会員同士の交流と、
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・ウクライナ緊急募金活動…学内において5月11日~31日まで実施。活動の様子は後日ブログで紹介します。
・【卒業生インタビュー】シリーズ