2021年度現在、英語英米文学専攻の大学院生の人たちに、大学院での研究について書いてもらいました。2回にわたってお送りします。
2回目はアメリカ文学分野の佐藤彩さんです。佐藤さんは2年目の院生で、この1月末に修士論文を提出します。本学の英語英文学科出身の佐藤さんは、学部時代にユダヤ文学に魅入られ、それと同時に英語力も飛躍的に伸ばした学生です。(英語英米文学専攻主任 木津)
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私は、ユダヤ系アメリカ文学の作家である、アイザック・バシェビス・シンガーの作品を研究しています。大学院に進学してより詳しく研究したいと思った理由は、シンガーの作品に魅力を感じたからです。彼が描く作品の中では、さまざまな視点から「ユダヤ教の世界」を見ることができます。ハシディズム*やイディッシュ語の要素、実はホロコーストと表裏一体の関係にあるマジカルリアリズム**やユーモアを扱うことで、シンガーは「ユダヤ教の世界」を作り出しています。また、作中の登場人物の中に反映されている「人の多様性」という部分に注目すると、迫害されてきた「ユダヤ人」のアイデンティティーを深く考えることができます。
*ハシディズム:正統派ユダヤ教のうちの一派
**マジカルリアリズム:文学スタイルのうちの一つ。超自然的要素を描くことで、現実と非現実の境界を曖昧にするという特徴がある。
修士論文で扱ったシンガーの長編大作『ハドソン川の影』
イディッシュ語新聞に実際に連載されていたシンガーの作品