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現代社会学科

2021.06.17

台湾の「スピリチュアルプラザ」|現代社会学科 福田雄講師

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学科ダイアリー

大学院

国際交流

 2018年に台湾に行ったときのことです。国際空港の一角にSpiritual Plazaという場所がありました[図1]。その場所には三つの部屋が設けられており、左端の部屋には月と星のマークが、真ん中の部屋には卍のマークが、そして右端の部屋には十字架のマークが付いていました。一体ここはどのような目的のための空間なのでしょうか?このSpiritual Plazaは、三つの部屋でそれぞれの宗教に応じたお祈りをするための空間です。

図1 台湾の高雄国際空港の一角にあるSpiritual Plaza

図1 台湾の高雄国際空港の一角にあるSpiritual Plaza

 月と星のマークが書かれた左端の部屋はムスリムの方々が祈るための場所です。イスラームでは毎日5回、メッカの方向に向いて礼拝します。礼拝ではひざまずいてお祈りをするため、その部屋には敷物が敷いてあります。また礼拝の前には手足を洗うのでそのための洗い場も用意されていました。さらに部屋の手前には履き物を脱ぐように注意書きが貼られており、また部屋の中ではこちらがメッカの方向になりますよと、矢印が書かれていました[図2]。この部屋ではムスリムの方々がイスラームの礼拝をするにあたって重要な環境が用意されているのです。

図2 イスラームの祈りの部屋

図2 イスラームの祈りの部屋

 次に、十字架のマークが書かれた右の部屋はキリスト教徒の方々のための祈りの部屋です。ステンドグラスを通じて色鮮やかな光が入るその部屋には、大きな十字架が設られ、協会や礼拝堂に置かれるような長椅子が置かれていました[図3]。そこに神父も牧師もいませんが、聖職者が説教や講話を語るための教壇が置かれており、キリスト教の小さな礼拝堂のような雰囲気が演出されています。

図3 キリスト教の祈りの部屋

図3 キリスト教の祈りの部屋

 では中央の卍のマークがついた部屋は誰のための祈りの場所なのでしょうか?部屋に入ってみると、前にはブッダの絵が書かれていました[図4]。そう、ここは仏教者のためのお祈りの部屋です。壁には般若心経など、いくつかのお経が貼られているほか、小さな本棚にはお祈りのためと思われる冊子がたくさん用意されていました。

図4 仏教の祈りの部屋

図4 仏教の祈りの部屋

 このように海外では様々な宗教のためのお祈りの場が用意されていますが、それは国際空港ばかりではありません。たとえば公立の病院のなかにもそれぞれの宗教のためのお祈りの部屋が用意されているところがあります。なぜそうした場所が公共の空間に必要なのでしょうか。それは宗教が個々人の私的な営みであるというだけでなく、社会的に重要な意味をもつということが認識されているからです。現代社会は、多様な宗教的背景をもつ人々が一つの文化圏や国境を越えて移動し生活します。国際大会であるオリンピックという行事は、そうした現代社会の側面が可視化される場の一つとなるでしょう。私たちは、それまで馴染みのなかった他者を知り、ともに生きるための知恵と実践を求められる時代を生きており、宗教はその一つの重要な切り口なのです。


現代社会学科
福田雄講師(教員紹介)
キリスト教文化研究所

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