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現代社会学科

2021.05.10

農業がつなぐ、農業でつながる(その1)|現代社会学科 二階堂裕子教授

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社会連携・研究

社会連携

   農作業がゼミ生のつながりを強くする?     (2019年9月16日 二階堂撮影)

   農作業がゼミ生のつながりを強くする?     (2019年9月16日 二階堂撮影)

 新型コロナウイルス感染症の影響により、私たちの食生活にさまざまな異変が生じています。まず、外出の自粛が求められるなか、自宅で過ごす時間が長くなり、「おうちごはん」の機会が大幅に増えました。また、食材や料理のデリバリーサービスが広く浸透し、宅配可能な商品の数も急激に伸びています。長引くコロナ禍のもとで、私たちの命を支える「食」と、その根源である「農」に対して、自ずと関心が高まり、食と農をめぐる意識や行動も少なからず変化しているようです。
 タキイ種苗が2020年7月に行った「2020年度 野菜と家庭菜園に関する調査」によると、調査時点で家庭菜園を行っている人の割合は回答者全体(600人)の26.5%で、そのうち、2020年3月以降に始めた人が29.6%となっています。また、今後も家庭菜園を継続したいと考える人は、「ややそう思う」と答えた人も含めると96.2%に達しており、満足度の高さがうかがえます。こうした回答結果の背景には、何よりもまず、自宅での「巣ごもり生活」が長期化していることがあるでしょう。それに加えて、生活スタイルや価値観の変化にともない、安全な野菜を自給自足したいと考える人が増えつつあることを示しているとも考えられます。
 さらに、海外では、コロナ禍を契機として、「市民農園」「コミュニティガーデン」と呼ばれる都市内の貸し農地での園芸活動が注目されているようです。たとえば、オーストラリアやアメリカでは、市民農園の増設や自給自足による農産物の流通のしくみづくりが進められています¹)。こうした取り組みは、コロナ対策として経済活動が休止され、物流に混乱が生じた場合でも、都市住民が食材を確保できるようにするための試みです。
 ただ、市民農園の意義はそれだけにとどまりません。各国の都市内農園について研究している新保奈穂美さんは、コミュニティガーデンが移民や貧困者、ハンディキャップを有する人々などの社会的マイノリティに居場所や社会参加の機会を提供したり、農作業を通じて世代や立場の異なる人々が交流を深め、体験を共有できたりするといった社会的意義の大きさを指摘しています²)。「巣ごもり生活」によって、人々がつながりを作る場や機会もいちじるしく減っている今日、市民農園での共同作業がつながりを再び取り戻したり、新たなつながりを生み出したりするきっかけとなるかもしれません。
 ところで、私は以前から、ゼミの学生とともに農作業に関わってきました(詳しくはまた次回述べます)。その経験をふまえて、岡山市の市街地にあるビルの屋上や大学の構内などに畑を作り、いろいろな人がもっと日常的に農作業を経験できるような環境になればいいなと考えています。そうした「都市内の農地化」の推進によって、農業の活性化やコミュニティの創造が進む可能性があるように思います。何よりも、「まちなかで農業ができる都市」は、とてもユニークで楽しいだろうなと想像するのですが、いかがでしょうか?

1)『日本農業新聞』2021年1月17日付
2)新保奈穂美「世界で広がる都市内農園―その社会的意義と私たちの生き方への示唆」東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所編『Field+ : フィールドプラス : 世界を感応する雑誌』no.21 pp.24 -26、2019年

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