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日本語日本文学科

2008.05.01

譲治作品 学生からの発信|山根 知子|日文エッセイ55

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日本語日本文学科

日文エッセイ

日本語日本文学科 リレーエッセイ
【第55回】 2008年5月1日

譲治作品 学生からの発信
著者紹介
山根 知子(やまね ともこ)
近代文学担当
宮沢賢治・坪田譲治を中心に、明治・大正の小説や詩および児童文学を研究しています。

若者に元気がないと言われることの多い現代ではあるが、日本語日本文学科の学生たちからは、自己表現をめざした、ほとばしるようなエネルギーを感じている。

なかでも、2008年4月4日から放送開始の一年間のラジオドラマ『坪田譲治 童話の風景』(レディオモモ79.0MHZ・毎週金曜日夜7~8時)に、脚本・声優など全面的に協力してくれている学生たちの姿をお伝えせずにはいられない。

今このエッセーを書いている3月現在では、脚本担当7名、声優担当7名、計14名が精力的に動いている。私は統括指導として1年52回分の作品を選び学生たちにそれらの作品を分担・指示するところから、声優の配役決め、そして脚本担当・声優担当の合同の議論や練習の場においての姿を見守り、スタジオで無事収録を終えるまでかかわっている。設定された1年間52回の毎週の作品、しかも100作品に近い作品が、次々とこの行程を経て、完成にまで至るわけである。一見気の遠くなる話ではあるが、学生たちの姿は、これぞチャンスといわんばかりに、一作一作それぞれに自分らしさを表現しようと、春休みも毎日のように、大学での練習かスタジオでの本番かに通い、全力投球している。脚本にしても声優にしても、譲治作品のおもむきや登場人物たちの性格などが変わるたびに、学生たちも自分のなかの新たな個性的な一面を作品づくりに投入していて、頼もしいかぎりだ。また脚本・声優が、一つの作品をお互いの立場から解釈をしあって議論する場では、お互いの読みについての意見をぶつけながら切磋琢磨して作品づくりの質が向上してゆくなかに、日頃の日本語日本文学科学生としての文学および語学における勉学が生かされる瞬間が垣間見られる。そろそろ、脚本の担当者が声優もやってみたいという声、声優担当者が脚本を手がけてみたいという声もあり、さっそく実現もしている。おそらくこのエッセイを読んでいただくころには、すでにオンエアーされ、またこのラジオドラマに加わりたいという学科の学生が増えているのではないかと期待される。

こうした創作への熱意は、6、7年程前から本学科の学生のなかにすでに芽生えていた。創作をしたい、自己を文学的に表現したいという学生それぞれの思いが集まり、創作劇や放送劇を自主的に行なう動きが起こりつつあった。彼女たちはついに「星のこえ」というグループを結成し、たまたまその大部分が私のゼミ生であったこともあり、一度演劇の舞台を計画したときには、私も練習の教室や本番のカリタスホールを確保したり、またバックミュージック生演奏のお手伝いをしたりしたことも懐かしく思い出される。

そうした学生たちの動きも受け、本学科にそれまではなかった創作の授業をつくることになった。「星のこえ」の学生が卒業した次の年、すなわち今から5年前だった。その授業を担当することになった私は、学生の創作作品の上達をめざしながらも、1年間の創作のための勉強の一貫として、ぜひ朗読発表の場がほしいと思い、最初の2年は本学附属小学校に、ここ数年は「坪田譲治 子どもの館」(石井幼稚園2階)に出向くことを行なってきた。そこで、聞き手を目の前にしながら、自分は何のために書くのか、何を伝えたいのか、どんな言葉で伝わるのか、相手の反応はどうか、といったことを感じてほしいと思った。そして、そのあと作家の方を指導者としてお招きし、具体的な創作法の指導や、学生の作品の講評にあたっていただいている。年度末の創作文集をつくるまで、さらに作品について学生同士の合評と推敲が繰り返され、各個人の作品が完成する。文集は、学生が編集者になった気持ちで印刷までの全行程を分担して手がけ、共同作業として仕上がる。このような開かれた場で、「お互いの厳しい指摘や忠告、また励ましがあってこそ、自分の作品が納得のゆくものになっていきました」という最後の授業での感想を述べてくれた学生たち。そんな学生が今回のラジオドラマ制作の母体になってくれていることは、本当に心強く頼もしい。今日もスタジオの本番で、「ちょっと、止めて下さい」と声優の声を止める監督役の学生の厳しい指示。「この人物は、20代ですからもっと若そうな声で。控えめですが、言葉ははっきりとお願いします」といった声が飛び交う。

ところで、本学科では、郷土出身の坪田譲治の研究活動を盛んにしようと、生原稿や初版本を収集していることも、今回の番組づくりにつながってきた。私も、文学研究の授業で生原稿を活用しながら作品の制作過程を辿(たど)り、解釈を深める授業を行なっているが、この授業を受けた学生も、今回の番組づくりに携わっている。譲治作品に対する知識をふまえて魅力をとらえ、地域のみなさんにその魅力を伝えたいという思いから、岡山方言も駆使して発信しようとしている。その奮闘ぶりから、1年間の成長が楽しみである。

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