• Youtube
  • TwitterTwitter
  • FacebookFacebook
  • LINELINE
  • InstagramInstagram
  • アクセス
  • 資料請求
  • お問合せ
  • 受験生サイト
  • ENGLISH
  • 検索検索

日本語日本文学科

2008.04.01

落語「品川心中」リメイクあれこれ|広嶋 進|日文エッセイ54

Twitter

Facebook

日本語日本文学科

日文エッセイ

日本語日本文学科 リレーエッセイ
【第54回】 2008年4月1日

落語「品川心中」リメイクあれこれ
著者紹介
広嶋 進 (ひろしま すすむ)
古典文学(江戸)担当
井原西鶴を中心に、江戸時代の小説・演劇を読み解くことをテーマとしています。

レンタルCDショップをのぞいてみると、落語のCDが以前より増えたことに気がつく。聞けば、戦後何度目かの落語ブームだという。

「幕末太陽伝」という映画がある。川島雄三監督の1957年の作品である。幕末の品川遊廓を舞台に、勘定の金がなくて居残った佐平次を狂言回しとして、遊廓のてんやわんやを描いた喜劇である。
この映画は主人公の名前からも分かるように、落語の「居残り佐平次」を下敷きとしている。この話以外にもさまざまな落語ネタのエピソードが盛り込まれていて楽しい。その一つに遊女の心中咄である「品川心中」がある。「品川心中」はこんな話である。

人気が落ちてしまった遊女が、意地と見栄から心中を企てる。心中をすれば、自分がもてていることを世間に示すことができると考えたからである。しかし心中をするには相手が必要だというわけで、選ばれたのは人のいい出入りの貸本屋。二人で品川の海に心中することになる。男が冷たい海に飛び込むのをためらっていると、遊女が突き落とす。ちょうどそこへ「お金ができた」と連絡が入り、遊女の方は入水を中止、さっさと引き上げてしまう。貸本屋は一人でバチャバチャと水のなかでもがいていたが、浅瀬と分かり立ち上がる。男は女にだまされたと知り、のちに幽霊になりすまし、遊女に復讐するというもの。

「品川心中」を下敷きにした一連の場面は本映画のなかでも出色の出来であった。「金」と「うそ」と「虚栄」で成り立っている遊里のありさまが、皮肉や笑いや悲哀とともに痛快に描かれている。
昨今の落語ブームは平成17年のTVドラマ「タイガー・アンド・ドラゴン」(宮藤官九郎脚本)の影響だという。この連続ドラマは、主人公のやくざの青年が落語家に弟子入りし、毎回一話ずつ落語を覚えていくという、変わった趣向のドラマであった。その第11回目の放送に「「品川心中」の
回」がある。

本屋の金蔵と遊女のお染が心中を決意するところでは、現代の青森県出身の保とメグミの二人が、江戸時代の金蔵とお染になって青森弁で語り合う。

お染(メグミ)「本当に死んでくれるの?」
金蔵(保)「おう、付き合うべ」
お染(メグミ)「付き合うべって――ソバ食べるわけでねんだ、心中だよ」

ドラマは毎回、落語のストーリーと現実の事件とが二重写しになって語られる。そして、江戸末期と平成の現代が、少しも変わっていないことが示されるのである。

「品川心中」「幕末太陽伝」「タイガー・アンド・ドラゴン」、比べながら鑑賞してみてはいかがでしょう。

(「幕末太陽伝」DVD、日活。「タイガー・アンド・ドラゴン」DVD、TBS・ポニーキャニオン。落語「居残り佐平次」「品川心中」はともに古今亭志ん生、志ん朝版がおすすめ。いずれもレンタルショップにあります)

画像は、『タイガー&ドラゴン 上』(宮藤官九郎・著、角川文庫、(C)角川書店)

日本語日本文学科
日本語日本文学科(ブログ)

一覧にもどる