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日本語日本文学科

2007.09.03

図書館見学 町立図書館の巻|神原 俊治|日文エッセイ47

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日文エッセイ

日本語日本文学科 リレーエッセイ
【第47回】 2007年9月3日

図書館見学 町立図書館の巻
著者紹介
神原 俊治 (かんばら としはる)
図書館学・司書課程担当
図書館を活用した資料と情報の探索方法を探究しています。

今回は"斐川町立図書館(島根県簸川郡斐川町)"を紹介します。西は出雲市、東は宍道湖に挟まれ、そして出雲空港のある町、というのが私の認識している斐川町です。この町の図書館は、平成の大合併が叫ばれるなか、単独町制の維持を公約して町長に当選した本田氏が実現させた図書館です。

普通、図書館施設を造る場合は行政だけで決めるものですが、斐川町は違っていました。2000年4月、図書館設置準備室長に実務経験豊かな人物を、福岡県立図書館からヘッドハンティングして据えました。その人物が白根一夫氏です。その他にも「図書館建築基本計画」を策定するとき、町民の代表を加えて委員会を構成したり、設計者を選定するときプロポーザル方式(注↓)としたり、公共施設を設置するにあたってユニークな手法を次々と導入しています。このように時間をかけ町全体のコンセンサスを得ながら"我が町の図書館"を練り上げ、2003年10月開館しました。

おおよそ正方形の敷地に、概観はほとんどガラス張りで平屋建て一部二階建ての建物は、まさに"図書館"でした。徒歩や自転車での利用者には、正面とその脇に、車での利用者には駐車場の入り口が用意され、細かな配慮がされていることが分かります。正面と駐車場からの入り口には固定の「返却ボックス」が設置してあり、また、徒歩、自転車の利用者には移動用の「返却ボックス」が用意してあり、この気配りも利用者にとっては嬉しいことです。

館内は非常に明るく採光に工夫が見られます。入り口左手にあるカウンターからは、館内の大部分が見渡せるように造られ、視界を遮る太い柱は、閲覧スペースには1本もありません。利用者には開放感を覚えさせる空間です。入り口には『こどもスペース』、その右手に半円形の低い雑誌架を配置し、丸机(椅子3脚)やソファーがさり気なく置いてあり、自然に雑誌や新聞を手にとって読みたくなるような空間がしつらえてあります。奥には、インターネット用の端末6台が用意され、隣に視聴覚コーナーを配置し、ブースも2つあります。その右手に一般資料が排架してあり、左手には参考図書コーナーや郷土資料コーナーがあります。事典類は当然ですが県内各市町村の広報誌、「しまね映画祭」等の情報誌、町の広報誌もファイルして排架、さらにレジャー関係・日用品・電器店・スーパーのチラシもパンフレットファイルに入れてあります。まさに生活に役立つ図書館です。利用者の知りたいこと見たいこと"すべてを提供する図書館"を実践しています。また、お年寄りのために暖炉を模したコーナーには大活字本が排架され、昭和のモノクロ写真、教科書やビデオテープもあり、無言で高齢者にも優しい図書館であることをアピールしています(イギリスで始まった「回想法」という方法)。

カウンターは職員が2人担当し、常にどちらかが館内を歩いています。多くの図書館では、返却された資料はブックトラックや返却棚に並べ、翌日の開館前に排架しています。しかし、ここでは来館者の動向を見ながら、それらの資料を職員が迅速に排架(返却)し、資料は常に書架上にある、という状況を保っています。同時に書架の乱れなどを直していて、訓練のゆきとどいた意識の高い職員集団という印象を受けました。

《町の財産は「人」であり、人づくりの拠点は『図書館』である》──この理念を忘れないかぎり、山陰地域トップの図書館サービス活動は継続できるはずです。わが国の公共図書館は今、住民の知る自由を行政が責任もって保障するのか、その責任を放棄して"民間に任せる"のか、という岐路に立っています。学生には、講義だけでなく実際に「自身の目で見、臭いを鼻で嗅いで、雰囲気を肌で感じて」欲しいので、今後も見学ツアーを計画し、考える材料を提供したいと思っています。

注)プロポーザル方式
施主側が建築計画書(構想)を提示し、これに対して設計案ではなく「考え方」を原則的に文章のみで提出させ、設計者を選定する方法。つまり、建築物に対する設計者の発想、解決方法、経験、能力等を図面以外の書類等によって申し込ませ(プロポーズさせ)設計者を選定する方法。

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