坂口 真理
新型コロナ・ウィルスの感染が広がる中、本学の行事も中止や縮小が続いている。ゼミ単位の卒業式というのは、私がこの大学に勤めだしてから初めてのことである。
今回のエッセイは、これから新しい世界に飛び立っていく卒業生の皆さんや大学で新しい生活を始めようとしている皆さん、そして、これから大学受験を目指す高校生の皆さんへの応援メッセージである。
私たち教員は、いつも種まく人であり、皆さんの応援団でありたいと思っている。皆さんの中には、潜在的に高い能力(英語力、理解力、実行力等)を秘めながら、自分自身に限界を設定している人はいないだろうか? 例えば、自分は、これくらいの能力しかないから、試験のために最少限の勉強をするとか、あの大企業の採用試験は受けても落ちるだろうからやめておこうとか思っていないだろうか。最初から自分の能力の限界を設定しないで、いろいろなことに挑戦してみよう。皆さん一人ひとりが無限の可能性を持っている。
私は英語英文学科で英語学を教えている。英語学とは、簡潔に言うと、英語という言語の文法的な特性を研究する分野である。今年私のゼミ生は、全員がんばって卒業論文を書き上げたが、その中で英語学系というよりも、実践的な国際コミュニケーション系の研究テーマを追究した学生がいた。その人、M.Y.さんの論文のタイトルは “How to give precise disaster information to English speakers living in Japan”である。 彼女は大阪、香川(高松)、岡山の市の施設をまわり、それぞれの市の防災用英語版パンフレットを集め、それらを比較分析した。また、日本在住の英語使用者を対象にアンケートを行なって分析した。彼女の分析の視点は文法的観点からというよりも、日本在住の英語話者にとって災害が起こった時、どのような情報が必要で役立ったか、また役に立たなかったかという視点からだった。この春彼女は東京大学の大学院(「人間の安全保障プログラム」)に合格し、自分のテーマを追究することになった。文化人類学的視点から研究し、偶然にも本学科の小野真由美先生の後輩となる。
言語学にこだわらず、自由に自分のテーマをM.Y.さんに追究してもらったことが彼女にとって一番よかったのだろう。また、3年次にWaring先生とFast先生の引率で模擬国連に参加したこと、Swierski 先生のもとでEnglish Dramaの舞台に立ったこと、NewYorkの模擬国連でもスピーチをしたことなど、すべてが彼女の自信につながったのだろう。
皆さん、M.Y.さんのように、自分の能力の限界を設定せず、部活であれ、仕事であれ、学問であれ、興味を持ったことをとことん追究しよう!そうすれば、きっと道は開ける。新しい世界(新しい学び舎、新しい職場)の中で、時にはカルチャー・ショックを受けることもあるかもしれないけれども、強い好奇心と清心スピリット(広い人間愛と理解の精神)があれば、きっと克服していける。
本学のすべての先生方、ご指導ありがとうございました。現代社会学科の文化人類学者二階堂先生、ご指導ありがとうございました。
p.s. 坂口ゼミのM.Y.さんの同級生は皆仲良しだった。9月の登校日を決めて3回ほど集まって卒論の勉強したことが思い出される。皆さん、ご卒業おめでとうございます。皆さんには、厳しい先生だったかもしれないけれども、私は楽しかったです。いつか同窓会を開き、再会しましょう。
落ち着いたら、大学にも遊びに来てください。
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