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日本語日本文学科

2008.12.01

今、「書」は面白い!?|佐野 榮輝|日文エッセイ62

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日本語日本文学科

日文エッセイ

佐野 榮輝 (書道担当)
書の実技・理論を通して多様な文字表現を追求しています。
 
 インターネットの影響力は大きい。私に関わる事例を2件挙げたい。
 一は、今夏、今(2008.10)から2年9ヶ月も前、リレーエッセイで発表した私の『ウッタテ考』に、広島市の田村道夫氏から学科に問い合わせがあって、引用した江守賢治氏の出身地については全く私の勘違いだったので、訂正・更新させていただいたこと。詳しくはそちらを御覧願いたい。
 二は、上記エッセイについて、『岡山弁JAGA!』などの著者で、「オセラ」編集長・青山 融氏が、『Osera No.31 初春号』(2007.12.25発行)の「岡山弁JARO? 31」に《岡山弁の「うったて」騒動?》として取り上げていただき、......まさに晴天の霹靂だった。長いこと岡山弁ウォッチングを続けてきた私だが今回ほど驚愕した出来事はない。(中略)「うっそ~!!」と叫びながら机の周囲を走り回ったものだ。
 と、私にとって思いもしなかった反響をいただいたこと。その記事の中に、ブログで「うったて」が評判になっているとの由、覗いてみると、確かに、多くの人が書き込んでいた。青山氏はRSKラジオでもご紹介下さり、その上さらに、全国の書道家や書道教室に電話で確認し、「なぜ、岡山(と香川)だけで「うったて」が使われているのか...これが現在残された謎である」と結んでいる。
 以上、インターネットの威力を実感した次第。
 話は本題へ。前記の田村氏からのメールの返信に、マンガの『とめはねっ! 鈴里高校書道部』(2007.5小学館)は面白いとあり、 私も『書道美術新聞』の新刊書欄で見て、付箋にメモしてずっと手帳に貼っておいたのを思い出し、早速取り寄せた。本年8月までで単行本が第3巻・第37話まで刊行されている。

『とめはねっ!―鈴里高校書道部―/1』(河合克敏著・小学館ヤングサンデーコミックス)表紙

『とめはねっ!―鈴里高校書道部―/1』(河合克敏著・小学館ヤングサンデーコミックス)表紙

 舞台は神奈川県鎌倉市内で生徒数1600人以上の、とある私立高校だが、女子部員3名だけの書道部。5名以上いないと廃部になるという設定でストーリーが展開し、何とか無理矢理、全く初心者の新入生2人、カナダからの帰国子女の男子と柔道部とかけ持ちの女子を入部させるところから始まる。そのため書の専門用語には注が付され作品や図版も豊富。また作品も募集している。書と無縁だった人たちにも好評のようだ。
 第37話では、毎日書道会主催の「書の甲子園」出品に向け落款(らっかん。作品に署名などを書くこと)に捺(お)す、自用印を刻すために「篆刻(てんこく)」に挑むところで終わっている。ストーリーの詳細を記すのは、購読意欲を半減させそうなので、いちいちは述べないが、ぜひ、興味ある方は読んでみて欲しい。現在、増刷を重ねている。「まんが界のマイナージャンルをさまよう作家、河合克敏」氏と紹介されているが、「マイナー」(?)な書にとっては、これが中高生の「書写」「書道」離れに歯止めがかかり、愛好者が増加するなら、まさに福音と言うべきであろう。
 書のマンガといえば、魚住和晃氏編著の『マンガ 書の歴史 殷~唐』(2004.5講談社)・『同 宋~明』(2005.11)が初めてかと思うが、こちらはマンガの部分は少なく、図版作品には釈文・解説、固有名詞にはふんだんなルビとさらに索引も付す。じっくり時間をかけて読みたい入門書。
 日本では年間12億冊ものコミック誌が売れているとか。『ヒカルの碁』や『のだめカンタービレ』は娘が貸してくれ、テレビドラマ化されてそれも観た。前者では小学生の囲碁ファンが急増したと報じられ、数年前訪れた因島では本年、本因坊秀策記念館もでき、今後は本因坊戦の対局も行う予定とか。また後者はドラマ化によって音楽を聴くことができ、若い人たちのクラシックファンが増えたという。このごろは料理好きの妻が購入してくる『築地魚河岸三代目』を愛読中。これも何時かドラマ化されるのを待ちたい一作。
 最近テレビのクイズ番組は、難漢字の読みや、部首・筆順・四字熟語などの分野からの出題も多いし、漢字検定は平成18年度では年間260万人あまりもが受験したらしい。今なぜ漢字がと不思議な、歓迎すべき、現象である。
 ともあれ、『とめはねっ!』はストーリーの展開にインパクトがあり、コミックの性格上、奇想天外なシーンもあるが、高校時代、書道部にも所属していた頃を思い出しながら、夢中で読み終えた。ブーム的一過性ではなく、漢字文化、日本・中国文化を理解するための手引きとして、さらに児童生徒への毛筆文化としての「書」の面白さも惹起してもらいたいと望んでいる。
 以上の稿を書いた後、『とめはねっ!』編修担当の方から、書のコミックで『ラブレター』(1998.1小学館)、『書きくけこ』(2002.8講談社)が出版されていることを御示教いただいた。検索してみると確かにある、ある。出版年がすぐさま知られ、『マンガ 書の歴史』以前に刊行されていたことに驚いた。これまたインターネットの威力。取り寄せなくては。

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