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日本語日本文学科

2012.02.01

救助された日本人名を調べる|神原 俊治|日文エッセイ100

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日文エッセイ

日本語日本文学科 リレーエッセイ
【第100回】 2012年2月1日

救助された日本人名を調べる
著者紹介
神原 俊治(かんばら としはる)
図書館学・司書課程担当
図書館を活用した資料と情報の探索方法を探究しています。

課題:
イギリスの豪華客船タイタニック号は、1912年4月10日処女航海に出たが、4月14日夜11時40分ニューファンドランド沖で氷山と衝突し15日午前2時20分沈没。1,513人の犠牲者を出した世界最大の海難事故を起こした。このタイタニック号に日本人が乗船していて救助されたそうだ。その人物の名前が知りたい。また、掲載新聞名、年月日、面、段なども知りたい。

調査条件:
本学図書館が所蔵する印刷メディアを使用し調査すること

私は、司書課程以外に司書教諭課程の科目も担当しています。その一つ「情報メディアの活用」という科目を履修している学生に上記の課題を課しました。貴方はこの課題を、どのようにして解決しますか?

「タイタニック号」をテーマにした映画は数多く制作されていますが、1997年レオナルド・ディカプリオ主演の映画は、記憶に新しいところでしょう。この世界最大の海難事故のことは、後に世界中の人々が知ることになるのですが、現在のようにインターネットでリアルタイムに情報が伝わったわけではありません。

当時はまだ、通信手段恵まれていませんでしたので、情報は活字なって初めて知るところとなります。その活字情報の代表として新聞があります。(一般的に耳で聞く情報は、記憶として残りますが多くの場合消滅します。しかし文字などを使った印刷物は、時間が経過しても読むことが出来ます。このことが判っていれば新聞や雑誌記事を探せば良いということになります。)新聞記事は、もちろん紙に印刷されたものですが、紙質が悪く、時間の経過とともに劣化してしまいます。劣化する前にメディア変換して保存したものが、マイクロフィルムです。現在はCD-ROMとかDVD-ROMでしょうが、まだその様な技術がない時代ですからマイクロフィルムとなったのです。しかし、マイクロフィルムは高価でしかも拡大読取機(マイクロリーダー)も必要になり、多くの図書館が資料として収集することは困難です。そこでフィルム化した記事を覆刻版という本の形態で再発行することになります。本の形態ですとフィルムよりは安価で、機器も必要としませんから図書館としては収集しやすいことになり、所蔵館も多くなります。

さて、このような情報の形、変化などが判っていないとスムースな"シラベ"は難しいし、同様にどのような情報源を図書館が所蔵しているのか、すなわち、新聞記事や雑誌記事を検索するための索引があるのか無いのかを熟知していないと簡単には探せません。(司書課程ではこれらを充分に勉強します)

前置きが長くなりましたが、設問に返りましょう。キーワードは「タイタニック号」「1912年4月15日沈没」「日本人生存」などが上げられます。

まず、1912年は日本の元号にするとどの時代なのか、という疑問が湧けば『日本史年表 第4版、机上版 歴史学研究会編(岩波書店 2001)』で調べると、明治45年(p.264)と判ります。(この年は微妙な年で、7月8日に明治天皇が亡くなられたので、これより以後が大正となります)これにより、明治のニュースとして探せばよいことが判るので『明治ニュース事典全8巻+総索引(毎日コミュニケーションズ 1983-'86)』を見ます。総索引の「見出し索引」で【タイタニック号】を検索すると【タイタニック号沈没】の項目に八つの見出しがあり、その一つに「日本人ただ一人乗船、無事救助される Ⅷ420」という見出しがあります。他のキーワードを使うことなくズバリの見出しが記載してあるので、同事典第8巻420ページを見ると、見出しのもとに[明治45年5月20日 時事]とあり、また記事内に「鉄道院副参事・細野正夫」氏の名前を見て取ることが出来ます。救助された人物名が判っただけでなく、掲載新聞名も掲載年月日も判明した訳ですが、残念ながら本学では『時事新報』を収集していませんので、記事が掲載されている面や段は調べることが出来ません。他の新聞で覆刻版がないかを探しました。『朝日新聞<復刻版>明治編(日本図書センター 2002)第229巻明治45年4月』のp.128に第一報として「汽船氷山衝突」の見出しがあり、日付は明治45年4月17日で第4面第1段。その後、p.152に4月20日第4面第1段「タ号日本人乗客」の見出しで「東京鉄道院の細野正文」の記事があり、同日第5面第6段に「巨船沈没と日本人」の見出しで「万死に一生を保ったとの確報があったので一同安心した」との記事あります。なお、当時の新聞名は『東京朝日新聞』です。

ここまでで必要な情報は入手しましたが、重要な事柄が判明しました。明治ニュース事典では[細野正
夫]、朝日新聞では[細野正文]となっていますが、どちらが正しいのか検証しなければなりません。『大百科事典(平凡社 1985)』第9巻 p.27-28では、「鉄道院副参事細野正文が唯一の日本人として乗船していた」とありますので、新聞記事が正しいと判断します。したがって回答としては、人物名:細野正文 掲載新聞名:東京朝日新聞 掲載月日、面、段:明治45年4月20日、第4面、第1段 ということになります。

このように情報の伝わり方や、それを調べるためのツール(索引などの参考資料)を熟知していなければ、適確な調査は困難です。図書館で辞書事典を手に取って、"君はどんなときに役立つのかな?"と、呟いてみてはいかがでしょう?

画像は、『明治ニュース事典全8巻+総索引(毎日コミュニケーションズ 1983-'86)』。

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