岡山県内には、明治の中頃から昭和の初期頃まで、とても変わった建築が数多く姿を現しました。現在も県内にこれらの建物が、たくさん残っています。「擬洋風建築」って、聞いたことがありますか。このように呼ばれる建物は、県内の身近なところでもその気になれば探し当てることが出来ます。
「擬」という言葉には、「なぞらえること、型取り、似せること」といった意味があり、西洋建築を似せて造った建物を「擬洋風建築」と称しました。現代の建築が発展する中で、擬洋風建築はこれまであまり評価されてきませんでした。しかし、この建築スタイルは、日本の大工さん達が明治以降の文明開化の中で、西洋の建築に憧れ、日本の大工技術で工夫を懲らせて西洋に負けじと考え出したものです。これまでの木造建築の技術で工夫を重ね、世界に類のない素晴らしい建築様式を編み出したと考えています。現在では、どこか懐かしい風景を創り出す建物でもあります。
県内の代表的な擬洋風建物を紹介しましょう。例えば倉敷市の美観地区の中にある旧倉敷町役場(写真-1)がそうですし、倉敷市庁舎の隣りに移築された旧倉敷幼稚園園舎(写真-2)もこの建物様式です。擬洋風建築では、屋根に日本瓦が多く用いられ、壁には板を縦と横に張り、一部は漆喰壁でも表現されています。また、窓は上げ下げ窓が付けられ、曲線の造形も随所に見られることがあります。
岡山市では、岡山市中央図書館の隣りに移築保存されている旧旭東小学校附属幼稚園園舎(写真-3)や岡山県総合グランドの片隅に移築保存されている旧陸軍第十七師団岡山偕行社もそうです。高梁市では、岡山で残存している教会建築として最も古い日本基督教団高梁教会堂(写真-4)や旧吹屋尋常高等小学校校舎(写真-5)があります。
笠岡市の日本基督教団笠岡教会教会堂(写真-6)も今も使われています。また、真庭市の旧遷喬尋常小学校校舎(写真-7)は、端正な美しさが見られ、最も素晴らしい小学校校舎の一つとして評価しています。総社市や牛窓には、旧総社警察署(写真-8)や旧牛窓警察署本館(写真-9)も残っていて郷土の歴史博物館等として使われています。
県内にまだまだこのような建物が数多く残っています。是非とも、町歩きを楽しみ擬洋風建築を探し出して下さい。
私の生活環境学研究室では、これまで卒業研究として「岡山県における擬洋風建築-庁舎建築に関する考察」、「岡山における擬洋風建築について-建築の意匠表現を探る-」、「岡山県における擬洋風建築-教育施設を通して-」といった題目で卒業論文を書き上げています。岡山の建築に関心のある学生さんが集まる研究室です。