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現代社会学科

2014.11.04

婚活とマンガとジェンダー研究:学科の紹介【7】

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現代社会学科

授業・研究室

婚活とマンガとジェンダー研究

山下美紀教授
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 2010年次の生涯未婚率(1)は、女性10.61%、男性20.14%、平均初婚年齢は、女性29.2歳、男性30.8歳となっており、経年変化を見てみると日本社会は未婚化・晩婚化傾向にあるといってよい。このような状況のなか、流行語となったのが、社会学者山田昌弘とジャーナリスト白河桃子らが、結婚を就職活動になぞらえて提唱した造語「結婚活動=婚活」である(2)。

 この言葉はまたたくまに世間を席巻し、'婚活'ばやりの世の中となった。

 ためしに婚活サイトを覗いてみると、婚活パーティの案内がこれでもかというぐらい出てくる。いくつか例を挙げると、「O山市内開催 23歳~35歳ぐらい、参加費男性6,000円、女性500円」、「O山市内開催 男性25歳~39歳、参加費3,500円、大卒or公務員or上場企業勤務or年収400万以上、女性20歳~35歳、参加費2,000円」といった具合である。性別によって微妙に異なる参加費や年齢設定、男性の参加条件の厳しさが目に付く。この年齢や参加費の差、条件の差はどのように説明されるのだろうか。このあたりは本学の私の講義でたっぷり語るので、ここでは割愛させていただく。

 それよりも、婚活にみられる構図について考えてみたい。生き方の選択肢が拡がった現代社会、あらゆる場面において自分で選択することが求められる。そして、選んだからには自分で責任を取らなければならない。結婚についていえば、女性も男性も自分で相手を選ばなければならないし、選ばれなくてはならなくなったといえる。婚活パーティでも、参加条件の厳しい男性と違い、女性は所与の条件で選ばれることがないため、自分を選んで欲しいと思った相手に選ばれるよう努力することが求められよう。しかし、努力している様子をあからさまにしすぎてもいけない・・・。

 この女性の戦略の構図、昔、よく見ていたことを思い出した。1970年代の少女マンガである。

 小学生の頃は少女マンガが大好きだった。少年マンガの世界が戦いの世界であるのに対して、少女マンガは恋愛の世界である(3)。少女マンガのモチーフはかなり似通っている。主人公の女子は、そんなに美人でも、頭が良いわけではないが、少し天然で、誰からも好かれるような明るい性格であることが多い。その主人公が幾度かの試練を乗り越え、最終的にスポーツ万能、学業優秀、眉目秀麗男子とハッピーエンドを迎える。試練の際にあらわれる悪役女子は完璧(金持ち、超美人、スタイル抜群などなど)であればあるほど良い。なぜならば、その女子との戦いに勝つということは、完璧女子を超えたという証左となるからだ(自分とどっこいどっこいの人に勝っても、あまり嬉しくないでしょ?)。

 さて、こうして考えると、実は少女マンガも戦いの世界かもしれない。この戦いの場合、血で血を洗うような肉体武闘であってはならない。むしろ神経戦であろう。当該男子から選ばれるように仕組まなければならない。しかし、仕組んでいることを明らかにしてはならないし、仕組んでいる様子を見せてはならない。極めて高度な戦略を要する。(自分が仕組んでいることに)気がつかないふりをすることが効果的なので、ここで「少し天然」というキャラ設定が効いてくるのである。なんというあざとさであろうか。そして、このような描き方は、40年たった現代においてさえ踏襲されているところがあるのだ。

 もしかすると、マンガ家はかなりのジェンダー研究者ではないかとさえ思えてくる。その社会のジェンダー問題をこれでもかと突いてくるのだ。だからマンガを読むのはやめられない。だからジェンダー研究はおもしろい。



(1)国立社会保障・人口問題研究所『人口統計資料集』2013参照。生涯未婚率とは、45~49歳と50~54歳未婚率の平均値であり、50歳時の未婚率である。

(2)山田昌弘・白河桃子2008『「婚活」時代』ディスカバートゥエンティワン.

(3)斉藤美奈子2001『紅一点論』筑摩書房. 斉藤美奈子は、少年マンガ、少女マンガのそれぞれの世界を「男の子の国=軍事大国」、「女の子の国=恋愛立国」という枠組みで説明している。

 

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