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現代社会学科

2016.04.22

アイドル・ファンの行動にみる現代社会:学科の紹介【20】

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現代社会学科

学科ダイアリー

アイドル・ファンの行動にみる現代社会
─2015年度卒業論文から─


中山 ちなみ 講師
 「地蔵」をご存じでしょうか。お地蔵様のことではありません。アイドルのライブなどで体を動かさず着席したままのファンを指す言葉です。ライブには積極的に参加するのに、ほかのファンのようにコールや振りコピをすることもなく、じっと座って静かに見つめているのが地蔵の鑑賞スタイルです。会場でアイドルや他のファンと一体となって楽しみたいタイプのファンの目には、みんなで盛り上がっているときに着席したまま動かない地蔵は、そこだけ場違いな雰囲気を作り出す、いかにも空気の読めない身勝手な存在と映るかもしれません。

 では、地蔵はライブを楽しんでいないのかというと、じつはそうではないらしいのです。むしろ気合を入れて楽しもうとしています。「パフォーマンスを一瞬でも見逃すのがモッタイないんですよ。すごくて。すごすぎて」と、ある地蔵スタイルのファンが述べているように(註)、彼・彼女らはアイドルのパフォーマンスを一瞬たりとも見逃したくないと思っています。他のファンと一緒に体を動かしたりコールをしたりすると、隅々までじっくり鑑賞することができない。それはもったいない。それで地蔵は座って静かに鑑賞するというスタイルを選んでいるわけです。わざわざ会場に足を運んでいることからも理解されるように、地蔵はアイドルへの思い入れが薄いわけではありません。表面的に楽しさを表現していないだけで、心の中では熱狂しているのです。

@JAM the Field vol.5でアイドルとともに盛り上がるファンたち(2014年2月16日 東京・恵比寿 LIQUIDROOM)

@JAM the Field vol.5でアイドルとともに盛り上がるファンたち(2014年2月16日 東京・恵比寿 LIQUIDROOM)

 現代では、アイドル・ファンの楽しみ方も多様化しています。地蔵スタイルだけでなく、ライブ会場で他のファンと一緒に盛り上がるのも、握手会で憧れのアイドルと会話を交わすのも、自宅でアイドルに関するあらゆる情報を集めて一人で鑑賞するのも、どれもその人にとっての最高の楽しみ方です。自分が好きなアイドルを、自分の好きな方法で応援するのが現代のファンの特徴といえるでしょう。優先されるのはあくまで「自分が」楽しむことです。他人がどのような楽しみ方をしようと気にしない。でも、自分の楽しみ方にも口を挟まないでほしい。自分は自分で楽しみたい。現代のファン行動にはこのような意識が垣間見えます。

@JAM the Field Vol.9にて(2016年2月28日)http://www.at-jam.jp/thefield_vol9/N23

@JAM the Field Vol.9にて(2016年2月28日)http://www.at-jam.jp/thefield_vol9/N23

 このように良くも悪くも個人の選択を優先するというファンの行動は、個人化し、消費社会化した現代社会の縮図のようにも思えます。私たち一人ひとりの普段の行動や意識に、社会の影響は如実に反映されます。場を盛り下げるかのように思える地蔵の行動も、個人の楽しみをとことん追求しようとする現代ならではのスタイルなのでしょう。アイドル・ファンの生態から、その背後にある「社会の姿」が見えてくるのも社会学のおもしろいところです。

 以上は、三島麻美「『会いに行けるアイドル』時代のファン行動」(2015年度現代社会学科卒業論文)をもとにしています。

 註:エンタメNext「ドルヲタ女子が@JAMで地蔵になりたくなったワケとは」(www.entamenewx.com/topics_detail2/id=311)

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