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現代社会学科

2016.10.21

犬のはなしをしよう:学科の紹介【24】

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現代社会学科

授業・研究室

犬のはなしをしよう
山下 美紀 教授
 実は、小さいころは犬がとても怖かった。光る眼、とがった牙、唸り声、どこまでも追いかけてくる脚力。どこからともなく姿を現す不気味な存在。家の玄関先につながれていても侮れない。まったく気が付かぬそぶりをしているくせに、近づいた途端、吠える、吠える。「怪しい者ではございません」との弁明も一切通用しない。私にとって犬とは、懐柔できぬ恐るべき個体であった。
 だから椋鳩十著『孤島の野犬』(1964年)に代表される犬ものを読むたびに、犬の野性性、自由性、人間との対等性になんともいえぬ感動と畏怖の念を覚えたものである。

 さて、私は、例年9月を「サブカルチャー強化月間」と勝手に位置づけ、気になるマンガやビデオを一気に漁るという荒業を成し遂げている。今回の「犬」テーマに関連したものを挙げよといわれれば、「のらくろ」(田河水泡1931年)と「銀牙:流れ星-銀」(高橋よしひろ1983年)は外せない。とくに「銀牙」は、犬世界のリーダーにして人格者もとい犬格者の熊犬・銀を中心とし、人間と共存しながらも、人に媚びることなく、戦い、生き抜く存在として描かれた壮大な冒険物語である。

写真1 田河水泡「のらくろ」現在も人気は根強い。東京神田・小宮山書店HPより転載

写真1 田河水泡「のらくろ」現在も人気は根強い。東京神田・小宮山書店HPより転載

どうして犬の話ばかりするかと言えば、この4月から、中国大連の留学提携大学の大学院生が研究生として本学に来ていることにかかわる。彼女の研究テーマが「ペット意識に関する中日対照比較」なのだ。 

 中国では、若い人たちはもちろんだが、子どもが大きくなって、親元を離れてしまったあとに、そのさみしさを埋めるべくペットを飼うという高齢者が増えているのだそう。そういえば中国では、今年から廃止になったが、1979年以来「一人っ子政策」が実施されていた。一方、急速な経済発展により、就業先を求めて離家が進み、家を離れる若者が増え、人口構造、経済状況の変化は家族の構造や家族意識を変化させ、ペットを子ども代わりにかわいがるという新たな意識が生まれてきたようである。

写真2 かわいがられる犬

写真2 かわいがられる犬

 日本でも「ペットは家族か」というテーマについては、家族社会学者・山田昌弘著『家族ペット―やすらぐ相手はあなただけ』(2004,サンマーク出版)といった書籍も出されている。

 「動物愛護に関する世論調査」(2010年・内閣府)によれば、ペット飼育の良い点として「生活に潤いや安らぎが生まれる」という回答が61.4%と最も多く、「家庭が和やかになる」55.3%、「子どもたちが心豊かに育つ」47.2%が上位の回答となっており、ペットが家庭生活に溶け込んでいる様子がうかがえる。

 そういえば、あんなに恐ろしかった野良犬を近所で見かけなくなった。環境省の統計資料(2015年)によれば、犬の殺処分数は1万5千811件であるが、約40年前の115万9千件であったことを考えると、この数十年のうちに、犬状況はさま変わりしているようだ。犬は人間の管理下に置かれたともみえる。かわいがられる犬と排斥される犬の二極化。
 銀に尋ねてみたいものだ。いまの世の中生きづらくないかな。

 ところで、なんですって?
 「ペットの研究もありですか」って?
 「ありです!」

 

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