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現代社会学科

2016.11.29

授業の話-「史料講読Ⅳ」-:学科の紹介【25】

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現代社会学科

学科ダイアリー

授業の話-「史料講読Ⅳ」-
轟木広太郎 准教授
「教員紹介」ページへ

 今回は、私が担当している「史料講読Ⅳ」という授業について紹介したいと思います。この授業では、おもに英訳されたヨーロッパ史関連の史料を輪読するのですが、今年度はたとえば、(1)中世の聖遺物崇敬に関わる史料、(2)古代ローマの解放奴隷に関わる史料、を取り上げました。

 中世においては、聖人の遺物(もっぱら骨)が起こす奇蹟への信仰がすこぶる盛んでした。(1)は北東フランスのランという町で12世紀前半に書かれた史料で、町の騒乱で瓦解した聖堂の再建のために、聖職者たちが聖遺物を教会から持ち出して、北フランス各地、そしてイングランドにまで募金活動に出かけるという内容です。そして行く先々で奇蹟が起こるのですが、この史料からは、献金を募るやりかた、起こった奇蹟の種類、聖遺物の活用方法、領主たちや一般民衆の期待や反発など、中世のごく普通の信仰のありようを垣間見ることができます。教会の難しい教義や公式の儀礼だけでなく、こうしたことも歴史、とくに社会史の恰好のテーマになるのです。

写真は中世の聖人の遺骨を入れた「聖遺物函(せいいぶつばこ)」の一例

写真は中世の聖人の遺骨を入れた「聖遺物函(せいいぶつばこ)」の一例

 (2)は、解放奴隷について記した古代ローマの碑文(ひぶん 石に刻まれた記録文)の数々です。ローマは古代地中海世界によく見られた奴隷制社会のひとつでしたが、固有の特徴として、ごく頻繁に奴隷たちを解放する習慣がありました。碑文からわかるのは、たとえば解放を行う主人たちの動機です。有能な奴隷を、自由に行動できるビジネス・パートナーとするため、気に入った奴隷の子どもを養子にするため、見初めた奴隷と結婚するため、たんに富と度量の大きさを示すため、等々、古代ローマ人の振る舞い方とその考え方や思いがこうした史料からはよく見えてくるのです。

写真は古代ローマの解放奴隷に関わる碑文の一例

写真は古代ローマの解放奴隷に関わる碑文の一例

 今回の話は、歴史、とくに社会史という学問は、こうした身近なことがらも扱う学問だということを知ってもらいたいと思って書きました。ただし、私たちとはおよそ異なる価値観や信仰や行動様式を持った人たちが、どのようにそうした当たり前の暮らしを送っていたのか、を探求するというところに面白さがあるということも、同時に感じ取ってもらえたらと思います。
 

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