2017.02.20
2016年度の現代社会学科研修旅行は、12月8日に西播磨を巡るコースで実施された。はじめに、行基が開いたとされる摂播五泊の一つである室津を訪れた。現在でこそ小さな漁港に過ぎないが、かつては朝鮮通信使や西国大名が立ち寄る重要港湾であり、本陣だけでも5軒を数え、参勤交代時には室津で船を下り、陸路で江戸に向かう水陸交通の重要な結節点となっていた。港は北側を山、東と南を自然の防波堤の機能を持つ半島で囲まれ、天然の良港となっている。現地ではボランティアガイドの方から説明を受けながら、歴史を感じる路地をたどり、室津海駅館、室津民俗館、賀茂神社などを巡った。岬の丘にある賀茂神社は平清盛が厳島詣の折に立ち寄ったことでも知られ、展望所からは家島や小豆島が彼方に浮かぶ瀬戸内海の絶景を眺めることができた。
昼食後は次の訪問地、永富家住宅に向かった。重要文化財である住宅は、長屋門を入ったところにある主屋がひときわ目をひく。二階建て・本瓦葺きの農家風建築で、播磨における庄屋住宅のもっとも発達した形態を残しており、外観だけでなく内部の構造も立派で、多くの付随建物や庭の美しさに驚かされた。なお、永富家は子孫が鹿島家に婿入りし、鹿島建設の社長となったことでも知られている。
最後に、淡口醤油と素麺「揖保乃糸」及び「赤とんぼ」作詞者三木露風の出身地で知られる城下町龍野を訪問した。龍野城は中世に赤松氏が築いた山城を起源とし、寛文12(1672)年に移封された脇坂氏が現在地に平山城を築城したものである。天守閣は当初からなく、本丸御殿、城壁、多聞櫓などが復元されている。かつての城郭内には検察庁・裁判所・龍野小学校などの公共施設が立地しているのは、歴史地理学の法則どおりである。その城郭内にある歴史文化資料館や霞城館を見学した後、白壁の土塀が残る旧脇坂屋敷付近を散策し、城下町の情緒を味わいながら最後の見学地である「うすくち龍野醤油資料館」に向かった。入館者数のカウント用であろうが、入館料10円がほほえましい。見学後は三々五々、あまり人気のない町屋地区をたどって駐車場に向かった。途中の菓子店で買った名物の醤油まんじゅうをほおばりながら、龍野の町を後にしたのは帳が降りるころであった。