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現代社会学科

2017.04.27

なぜベトナム人は日本へ働きに行くのか?:学科の紹介【29】

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現代社会学科

学科ダイアリー

なぜベトナム人は日本へ働きに行くのか?
二階堂裕子 准教授
 「ベトナム」といえば、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?

 インドシナ半島東南部に位置するベトナムは、南北に細長い国で、人口約9,270万人(2016年現在、ベトナム統計総局)を抱えています。就業者の約4割が農林水産業に従事しており、コメ、コーヒー、天然ゴムなどをはじめとする多数の農作物が世界有数の生産量を誇る農業大国です。

 ところで、近年、日本で生活するベトナム国籍の人々が急激に増えています。2000年は16,908人であったのが、2016年には203,653人にも達しており(法務省在留外国人統計)、この16年間で12倍に増加しています。このうち、とりわけ増加が著しいのは、日本で最大3年間就労するために来日した「技能実習生」と呼ばれるベトナム人です。

 では、なぜ、多くのベトナム人が海外での就労先として日本を選ぶのでしょうか?もちろん、「日本で働けば高賃金が得られるから」という理由が考えられますが、ベトナムよりも賃金の高い国は他にも多くあるはずです。この問いを明らかにするためには、ベトナム社会の状況やベトナム人の意識を知る必要があると考え、ここ数年間、私はベトナムでのフィールドワークを続けています。

 1980年代後半から「ドイモイ(刷新)政策」を推進しているベトナムは、海外企業の誘致に力を入れていることも功を奏して、1990 年代半ば以降、高い経済成長率を維持しています。実際にベトナムを訪問すると、日本とベトナムの経済的・文化的な結びつきが年々強化されつつあることを実感します。たとえば、ベトナムではバイクのことを「HONDA」と呼ぶ人が少なくありません。それほど、日本のバイクが多く愛用されているのです(写真1)。また、2014年よりベトナムにイオンモールが4店舗オープンし、多くの買い物客で賑わっています(写真2)。このほか、書店のマンガコーナーに行けば、「ドラえもん」や「コナン」のシリーズが書棚の大部分を占めており、日本のアニメーションに対する人気の高さをうかがい知ることができます(写真3)。実際に、技能実習生に対するインタビューでは、「ドラえもんを読んで、日本に憧れを抱いた」といった声を度々耳にしました。さらに、日本との関係が強化されるにともない、大学のほか、高校や小・中学校でも日本語教育を開始する学校が増えています。

写真1 ベトナム人の生活の足であるバイク(2012年3月撮影)

写真1 ベトナム人の生活の足であるバイク(2012年3月撮影)

写真2 日本の食材が豊富なイオンモール(2016年3月撮影)

写真2 日本の食材が豊富なイオンモール(2016年3月撮影)

 つまり、ベトナムの社会において日本の文化や技術は深く浸透しており、日常的な「日本」との接触によって、ベトナムの人々の間に日本への親しみや憧れが生まれていると言えるでしょう。また、日本で技能実習生として就労した期間に、高い日本語能力を身につけた人の場合、ベトナムへ帰国後、現地の日系企業への就職を有利に進めることができ、ベトナムの一般企業で働くよりも高賃金を得られるということもわかりました。こうした要因が、ベトナム人の日本就労を促しているようです。

 このように、フィールドワークを通じて、ある社会の人々の意識と行動の関係を、よりリアルに把握することができるのです。

写真3 ベトナムでは「ドレーモン」と呼ばれています(2015年6月撮影)

写真3 ベトナムでは「ドレーモン」と呼ばれています(2015年6月撮影)

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