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日本語日本文学科

2015.04.01

思いを感じて心が動く -「大村はま文庫」を訪ねて-|伊木 洋|日文エッセイ138

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日本語日本文学科

日文エッセイ

日本語日本文学科 リレーエッセイ
【第138回】 2015年4月1日
【著者紹介】
伊木 洋(いぎ ひろし)
国語科教育担当

国語科教育の実践理論を研究しています。

 鳴門教育大学附属図書館には、「大村はま文庫」が常設されています。「大村はま文庫」には、中
等国語教育において、優劣のかなたに学習者を導く国語教室を創造なさった大村はま先生から寄贈を
受けた、大村はま国語教室に関する学習記録、実践資料、文献が収められています。
 「大村はま文庫」で配付しているパンフレット「大村はま文庫について」には、「1995年、大
村はま氏は、永年にわたって単元学習を中核として指導してきた教え子の方々の学習記録、及び、指導記録・指導資料類、ならびに実践・研究のため収集した文献を鳴門教育大学附属図書館に寄贈くださった。本学図書館では寄贈を受けた学習の記録約2000冊、単元学習実践資料約500点、文献10000冊を「大村はま文庫」と名づけ、教科教育実践学研究の貴重な資料として学内外の利用に供している。」(橋本暢夫 第六代附属図書館長 大村はま文庫について 鳴門教育大学附属図書館配付パンフレット 一部抜粋)と紹介されています。

 2014年9月16日(火)、大村はま先生の国語教室に関心を持つノートルダム清心女子大学日本語日本文学科の学生とともに、「大村はま文庫」を訪ねる機会に恵まれました。絶好の機会ととらえ、学生一人一人に自らの興味・関心がどの方向に向いているか自覚させ、問題意識を高めたいと考えました。そこで、見学のしおりとして、鳴門教育大学附属図書館のHPに掲載されている「大村はま文庫」に関する資料を一人一人に配付することにしました。見学のしおりの特殊分類表を手にした学生からは、「この単元はどんなものなんだろう。」「実際に生徒が書いた学習記録を見てみたい。」という期待の声が聞こえてきます。

 利用手続きを済ませ、2階の「大村はま文庫」に向かうと、まず、大村はま先生の等身大の写真が目に飛び込んできます。写真の横には大村はま先生の略歴が記され、大村はま文庫の入り口にはガラスケースが設置されています。ガラスケースの中には、大村はま先生自筆の毛筆資料や学習指導で用いた指人形・ぬいぐるみ・操り人形・西洋人形などが展示されています。指人形には「人前でじょうずにものが言えない生徒の練習に使った」と説明が添えられており、まさに学習者一人一人に即した細やかなくふうの実際に触れることができました。単元で学習者が実際に活用した『旅の絵本』や『白銀の馬』などの文献をじかに手に取って見ることもできました。また、単元を支えた膨大な国語教育関係資料や言語・言語文化に関する資料が、開架式で閲覧できるようになっており、圧倒されるばかりでした。
 「大村はま文庫」の開設に尽力なさった橋本暢夫先生がおいでくださり、「大村はま教室における『自己を育てる』教育」と題するお話をしてくださいました。大村はま先生による自筆の資料『綴方十二ヶ月』や小西まゆみさんの学習記録『栄光』の原本を見せていただきながら、大村はま国語教室の理念・実践の根基・創造性について、わかりやすくご指導いただきました。それぞれが国語学習記録など自らの問題意識に即した資料に目を凝らしているうちに、予定した時間はまたたく間に過ぎ、館員の皆様にお礼を述べて「大村はま文庫」を後にしました。

 参加した4年生のT・Yさんは、大村はま先生の思いを、次のように受けとめています。「大村はま先生がお使いになった学習材のぬいぐるみやあやつり人形、絵本など、先生が一つ一つ生徒の実態に合わせてご準備なさったことを知り、そうした温かみのある学習材が生徒の心を開き、その子の力をひきだしていったのだと感じました。」
 また、T・Yさんは、感想に「大村はま先生の実践や理念を知り、教師は生徒にどのような力をつけさせたいかをまず考え、そのために授業者は工夫を凝らし、どのように生徒に働きかけるかを、常に求め続けなければならないことを学びました。また、国語教師としての実践だけではなく、教師という職業の責任や覚悟についても深く考えることができました。」とも記し、大村はま先生の教育者としてのあり方に深く心を動かされています。
 大村はま先生の思いを感じて心が動く、「大村はま文庫」へあなたも出かけてみませんか。

 なお、大村はま先生の願いが込められた遺稿「優劣のかなたに」は、2014年7月1日のリレーエッセイ第129回で取り上げています。
 本訪問において、ご指導いただいた橋本暢夫先生には心より感謝申し上げます。また、ご協力いただいた鳴門教育大学附属図書館事務室長の吉田啓治様をはじめ、館員の皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。
 
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