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人間生活学科

2016.01.01

実践即研究の精神|伊木 洋|日文エッセイ147

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日本語日本文学科 リレーエッセイ
【第147回】 2016年1月1日
【著者紹介】
伊木 洋 (いぎ ひろし)
国語科教育担当

国語科教育の実践理論を研究しています。
 
 実践即研究の精神 
 -ノートルダム清心女子大学日本語日本文学会国語教育部会(三時の会)第100回例会に学ぶ-


 中等国語教育において国語教育実践史上、例をみない独創的な国語教室を創造なさった大村はま先生は、実践即研究の精神を貫き、戦後、中学校に移られてからだけでも220回を越える研究授業を実践なさいました。東京都大田区立石川台中学校では、国語科実践研究発表会を開催して実践的提案を重ね、その後「大村はま国語教室の会」においても提案を続けられました。大村はま先生の実践研究の精神は、1972年(昭和47年)に届けられた第一回国語科実践研究発表会の案内に次のように示されています。

 国語教育を飛躍的に前進させるためには、もっと、日々の国語教室の実践そのものによる研究が大
切にされ、実践的提案がなされなければならないと思います。現場の実践者による実践的提案-現場
の実践によってしかできない提案がさかんになされなければならないと思います。(大村はま 国語
科実践研究発表会案内 1972年9月) 

 ここには、あくまでも学習者から出発し、学習者主体の学習を求め続け、「日々の国語教室の実践そのものによる研究」を大切にし、「現場の実践者による実践的提案-現場の実践によってしかできない提案」の重みを実感なさっていた大村はま先生の実践即研究の精神が如実に示されています。
 ノートルダム清心女子大学文学部日本語日本文学科には、日本語日本文学会が組織されており、学会の国語教育部会の取り組みとして国語教育研究会が開催され、国語教室における実践提案が重ねられています。国語教育研究会は通称「三時の会」と呼ばれ、年間5回程度の開催を続けており、2015年10月17日の開催をもって第100回の開催を数えています。大村はま先生の国語教室に学び、自らの国語教室を創造していこうとする本学科教職課程の履修生に、実践即研究の精神を学んでほしいという願いから、第100回例会への教職課程履修生の参加を計画しました。
 第100回例会は、2015年10月17日(土)、ノートルダム清心女子大学ジュリーホール4-1セミナー教室において、100回の開催を記念しささやかなお祝いの意味をこめて開催しました。実践研究発表は、川合萌先生(岡山県立西大寺高等学校教諭・本学科卒業生)、昨年度まで夜間定時制高等学校勤務であったご経験をもとに、学習者の実態に基づいて独創的な単元を構想し実践なさった意欲的な取り組みのご発表でした。研究協議に続いて、この研究会を創設なさった田中宏幸先生(現 広島大学大学院教授)に「主体的な学びと言語活動」と題する講話を行っていただきました。次期学習指導要領のキーワードであるアクティブ・ラーニングの解説とアクティブ・ラーニングの実践事例として「文学として読む古典-和歌の贈答を楽しむ」をお示しいただきました。第100回例会を記念するお祝いの会は、畝岡睦実先生(岡山県立岡山城東高等学校教諭・本学科卒業
生)の進行で進められ、田中宏幸先生からお祝いのことばをいただき、坂本素子先生(本学科卒業生)をはじめ、多くの参会者の方から三時の会との関わりについてスピーチをしていただきました。

 第100回例会に参加した教職課程履修生のM・Tさんは、学び得たことを次のように記しています。

 今回初めて三時の会に参加させていただき、同じ教科の教員同士が集まり、お互いに意識を高め合える機会は非常に貴重なことのように感じた。また、会が終了すると自然と自分も頑張らなくてはならないと思え、三時の会が今回で第100回を迎えるほど長く継続して開催されてきた意味がわかったような気がする。研究協議では先生方のおっしゃっていることが今の自分には難しく、少しでも理解することができるようにすることで必死だった。そのため、意見を発信することなどはできないが、まずはベテランの先生方の実際の体験談をお聞きするだけでも自分にも生かせるヒントをいただけるため、このような会に積極的に参加することが自分のために、自分の力になると感じた。今後もぜひ参加させていただきたいと感じた。
(ノートルダム清心女子大学文学部日本語日本文学科4年 M・T)

 第100回例会への参加は、M・Tさんの学び得たことに記されているように、「自然と自分も頑張らなくてはならない」という思いをわきたたせ、「今後もぜひ参加させていただきたい」という意欲を喚起し、学生一人一人が実践即研究の精神を肌で感じることができる場となりました。
 実践即研究、研究即実践の姿勢を貫くことは決して容易なことではありませんが、本学科教職課程で学んだ履修生一人一人が、目の前の学習者と真摯に向き合い、ことばの力、生きる力を確かに育てるために学び続ける実践研究の実の場として、今後も国語教育研究会(三時の会)を継続し、支え続けていきたいと思います。

参考資料
大村はま「国語科実践研究発表会案内」東京都大田区立石川台中学校 1972年9月
ノートルダム清心女子大学日本語日本文学会国語教育研究会(三時の会)記録 2015年10月

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