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日本語日本文学科

2018.01.01

辞書・事典の中の司書|川﨑 千加|日文エッセイ171

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日本語日本文学科

日文エッセイ

日本語日本文学科 リレーエッセイ
【第171回】 2018年1月1日
【著者紹介】
川﨑 千加 (かわさき ちか)
司書課程担当 図書館も使った情報リテラシー教育を研究しています。


辞書・事典の中の司書

1.書を司る


 「司書」(ししょ)という言葉を知らない人は思っているより多い。『何を教えているのか?』と尋ねられて,「司書課程なのですが」というと,『秘書ですか。なるほど』と返ってくる。「いえ,<ひしょ>,ではなく,<ししょ>です」というと,けげんな顔をされる。「図書館で働くための資格を取る科目を教えています」というと,それを「司書」というのだと初めて知ったという人や,図書館で働くのに資格がいるんですか?という人もいる。司書課程を履修している学生や,司書を目指している人なら当然知っているが,決して誰もが知っているわけではない。図書館現場においても図書館で働く人を総称して,「図書館職員」とか「図書館員」と呼んでおり,「司書」という言葉を使っていないことも多いのでなおさらかもしれない。

 では,「司書」とは何か,いくつかの辞書・事典で「司書」の説明を見てみたい。『ブリタニカ国際大百科事典』(ブリタニカ・ジャパン, 2014)や日本最大級の国語辞書と言われる小学館の『日本国語大辞典 第2版』(2000)では,最初に「書籍をつかさどる職」と説明されている。この「書籍を司る」ということを具体的に表現すると,『大辞林』の「図書館資料の整理・保管・閲覧などに関する専門的事務を行う」(三省堂, 2006)ということになるだろう。近年では書籍=図書だけを扱っているわけではないので,『世界大百科事典』(平凡社, 1998)の「図書館において書物をはじめとする各種情報(文献資料,マイクロ資料等)の整理・処理にあたり,これを広く利用者に供することを仕事とする職業」という説明の方が実態に少しは近いかもしれない。

司書は人々の思考にどこまで寄り添えるか。画像は、岐阜市立中央図書館。

司書は人々の思考にどこまで寄り添えるか。画像は、岐阜市立中央図書館。

2.法律上の司書

 上記のような定義は『図書館法』によって示されていることで,多くの辞書が法的な根拠を基に解説しているといえる。『日本大百科全書』(小学館, 1994)によると,司書が法令上初めて明記されたのは1906(明治39)年に改訂された『図書館令』第6条であるとしている。そこでは,「公立図書館ニ館長司書及書記ヲ置クコトヲ得」と記されていた。

 1950年に施行された現在の『図書館法』第4条(司書及び司書補)において,「図書館に置かれる専門的職員を司書及び司書補と称する」とされ,2に「司書は,図書館の専門的事務に従事する」ことが記されている。『図書館法』が対象とする図書館は,公立図書館と日本赤十字社の設置する図書館,私立図書館で学校に附属する図書館などは含まれない注1)。そのため,図書館界での専門用語を収めた『図書館情報学用語辞典』(日本図書館情報学会, 2013)では,「「図書館法」の性格からして,司書は公共図書館の専門的職員であるが,広義には専門職としての図書館員一般の名称としても用いられることがある」と説明している。

 現状では,大学でも専門図書館でも同じ司書資格で「司書」として働くことができているが,これらは法的な根拠を持たないと言える。司書課程や司書講習科目で教える内容は,公立図書館を中心とした内容である。ただし,前節で示した「専門的な事務」と言える,資料の整理(分類や目録)の技術はすべての図書館で共通に使うものである。

3.司書の仕事とAI

 最後に,『世界大百科事典』(平凡社, 1998)では,図書館の利用が一部の特権階級だけに限られていた時代の司書は,蔵書の管理と共に「学問の研究者であり,愛好者」であったと解説している。そこには哲学者のG. W. ライプニッツ,グリム童話でも知られるドイツの言語学者J.グリムなども司書であったことが紹介されている。多様な人々が利用する現代の司書には,様々なメディアを活用して利用者の知的欲求に応えるための対人スキルが求められる。今後,図書館の"専門的な事務"の多くはAI(artificial intelligence=人工知能)が担うことになるだろう。"図書館にいる人"として研究的な活動も行い,自己を進化させて行くことができてこそ専門職であり,多様な人々を支援するための"知と情報を司る仕事"としての新しい言葉が必要になるのかもしれない。それがAIロボットではないことを願って。

注1) 2014年に『学校図書館法』が改正され,「学校司書」という言葉が法律の中に書き込まれたが、まだ司書のように国が認める資格とはなっていない。

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