このエッセイでは、言語学という専門分野を紹介します。
2つの単語を合わせてできた単語を複合語と言います。例えば、blackとboardという2単語を合わせて、blackboardという1単語ができます。
black + board → blackboard 「黒板」
私たちの日常生活で見かける英語の複合語について、どのように書かれているか見ていきましょう。
一つ目は、道路標識です。私たちの大学の近くに、写真のような標識があります。
この標識には複合語が二つ載っています。パーツとなっている単語は下の(ア)(イ)のとおりです。標識では、(ア)は分けて、(イ)は続けて、書いてあります。道路の区分を指すという点では仲間どうしなのにです。
(ア) bicycle+way 「自転車道」
(イ) walk+way 「歩行者道」
ここで疑問が起こります。―二つの複合語は、なぜここで違った書き方をされているのか―
二つ目は、ハンバーガーです。
(ウ)(エ)の表記が気になりました。
(ウ) cheese+burger 「チーズバーガー」
(エ) rice+ burger 「ライスバーガー」
インターネット検索を行った結果を下に示します。次の2点のことが分かります。―第1に、続ける表記・分ける表記のどちらがあるかと言えば、これらのバーガーについては実際に両方の表記が使われている。第2に、どちらの表記がより普通かに関しては、「チーズバーガー」では続けるほうがが多く、「ライスバーガー」では分けるほうが多い。―
検索文字列
件数
(ウ) "a cheeseburger" 710,000
"a cheese burger" 210,000
(エ) "a riceburger" 207
"a rice burger" 5,460
検索:2015年4月17日、グーグルによる。
みなさんも、近所のハンバーガー店でどう書いてあるか見てください。「チーズバーガー」は高校生の使う英和辞書に掲載されています。辞書ではどうなっているか見てください。
「ベーコンチーズバーガー」(オ)は、「チーズバーガー」(ウ)と違い、インターネット上ではcheeseとburgerの間で切るほうが多く見られます。みなさんで検索して確かめてください。
(オ) "bacon and cheeseburger"
"bacon and cheese burger"
バーガーの名前は、それぞれで、続けやすさ・分けやすさが異なっている。そうなっているのはなぜでしょうか。
以上は言語学が取り扱う題材といだく関心の例です。まず、言葉がどのように使われているのか、実態を明らかにします。さらに、なぜそうなっているのか、仕組みを考察します。これらの作業を積み重ねながら、言葉という(不思議な)ものの本質へ近づいていきます。