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英語英文学科

2015.06.02

単眼から複眼のまなざしへ | 中村善雄

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英語英文学科

授業・研究室

2009年にスウェーデンの小学校英語教育の実態を視察しましたが、それは同時に異文化理解を体験させてくれる貴重な機会ともなりました。

スウェーデンと言えば、「税金が高い福祉国家」で、なおかつ「白人の国」というイメージを抱く人は多いと思います。私も例外ではありませんでした。実際、ストックホルム中心の駅構内の壁にはサッカー選手のズラタン・イブラヒモビッチを始め、有名人と思しき人たちのパネル写真が並べられており、そのナショナル・アイコンとも言える顔ぶれは一様に白人でした。

ところが、白人の国というイメージは翌日早々に崩れ去りました。小学校視察のために、ストックホルム中心部から約30分ほど南に下った駅に降りてみると、どうも思い描いていた様子とは違うのです。駅から小学校へ向かう10分ばかりの間に、すれ違う通行人の顔ぶれはアジア系やアフリカ系と思しき人たちだったからです。小学校に到着すると、その違和感はなおいっそう強まりました。すぐさま1年生の英語の授業を参観したのですが、「ここは一体どこの国なのだろう」との思いを強くさせられたのです。それもそのはず、多種多様な国籍の子ども達から成るクラスであったからです。後になって知ったのですが、このクラスはイラン、イラク、アフガニスタン、パキスタン、ソマリア、トルコといった、主に中近東から来た移民や難民たちによって占められていたのです。

その後、他のクラスの授業参観も終え、副校長と小学校の食堂で昼食を共にし、食事も終わり、洗い場へと食器を載せたトレイを持っていくと、すぐ近くの壁にカラフルな一枚の絵が掛かっていました。この絵は一体何なのだろう、なぜこんな絵が食堂にあるのだろうと自問自答してみましたが、興味深い絵という以外、判然としません。そこで副校長にこの絵の目的を尋ねてみると、次のような答えが返ってきました。「色々な動物が描かれているこの絵は私たちの小学校の特徴を表しているのです。つまり絵と同じように、この小学校も様々な国から移住してきた子どもたちで成り立っているのです」と。周りには色々な肌の色や目の色をした人間、また色々な文化や歴史的背景をもった人間がいるということ、そうした多種多様な人たちと共に一つの枠の中で生きていることを、その一枚の絵は雄弁に物語っていたのです。他と違うことが普通であることを教えるさりげない教育的配慮にハッとさせられ、日本の教育とのスタンスの違いを感じました。

数日足らずの訪問でしたが、「移民の国スウェーデン」というもう一つの顔を知ることのできた体験は、スウェーデンをイメージする私の白のキャンバスに多彩な色を加え、ステレオタイプに物事を捉えることの危うさを教えてくれた貴重な機会となったのです。

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