• TwitterTwitter
  • FacebookFacebook
  • LINELINE
  • InstagramInstagram
  • manaba
  • ENGLISH
  • 検索検索

英語英文学科

2015.10.13

黒後家蜘蛛の会│福島 富士郎

Twitter

Facebook

英語英文学科

黒後家蜘蛛の会
福島 富士郎

 言葉に関するいろんな知識は特に専門書的なものを読まなくとも、普段のいろんな小説にも表れてくることがあります。SF、サスペンス作家のアイザック・アシモフ(Isaac Asimov)という名前は聞いたことがあるでしょうか。 彼が書いた「黒後家蜘蛛の会」(Tales of the black widowers)という本があります。その中に言葉に関しての面白い箇所が出てきますので、少し紹介したいと思います。

この本は写真のような文庫本で5巻出ています(創元推理文庫)。ストーリーは6人の仲間が定期的に会食をし、いろんな四方山話をするのですが、そこへ毎回ゲストが出席しミステリーじみた話をして、そのなぞ解きをみんなで考えるのですが、最後はいつもレストランの給仕のヘンリーが見事な謎解きをしてみんなを感心させてしまうというものです。

 第2巻の101ページから102ページにかけて「一つの言葉に別の意味が雑居している・・・」ということの例としてunionizedを挙げています。第一音節にアクセントを置いて読むと、unionという単語に名詞を動詞化する接尾辞のizeと過去(分詞)の接辞edが付いたと分析でき意味としてはおおよそ、「労働組合(union)化された(ized)」ということになる。一方、第二音節にアクセントを置いて読むと、un +ion+ize+(e)dと分析でき、「イオン(ion)化されない」という意味になる。これは言語学の形態論の分野の事柄ですね。「一つの言葉(発音)に別の意味が雑居している」例として、同じ単語を大文字で書く場合と小文字で書く場合意味が異なるというのもあります。例えば発音が異なるPolishとpolish、発音が同じJapanとjapan、更にJohnとjohnもありますね。

 第3巻の74ページから、blainという単語は英語の単語としてあるか否かという話題が出てきます。脳を意味するbrainではありません。ある者は「聞いたことがないな」と言います。すると別の人が「皆、英語じゃないっていうんだな。・・・知っている英語の単語を全部考えて、ああ、ブレインなんて言葉はないと判断するのかい?それとも、耳慣れした響きかどうかで検討をつけるのかね?あるいは・・・」。また別の人が「人間がどうやって物を思い出すのかまだわかってないんだよ。・・・こうやって今使っている言葉は全部私の語彙のなかにあるわけだけれども、いちいち考えなくても自然に口から出てくるんだよ」と言います。 実際私たちの言語を支配する脳の中がどうなっているか心理言語学の領域で研究がされています。言いたい言葉が出てこない、或は意図した単語とは別の単語が口から出てくるという経験は普通にあるものですが、これらの現象は脳の中の辞書の仕組みとどう関係しているのか解明が待たれる問題です。

 第5巻98ページからの「三重の悪魔」では ある男が知人の一万冊ほどの蔵書の中から大変値打ちの1冊を遺言で贈られることになり、その本の著者、題名はヒントとして「トリプル・デビル(三重の悪魔)」とだけ告げられた。それは一体誰の何という本かという謎が出されます。そこで給仕ヘンリーの推理は次のようなものです。「人は面と向かって悪魔の名を呼ぶことを嫌うものです。・・・悪魔には様々な又の名や、婉曲の呼称、・・・なかでもよく使われますのが男の名前を縮めた愛称でございまして・・・さしずめ "オールド・ニック"など、その最たるものでございましょう」。Old Nickは悪魔を指す表現です。Nickから推理されるのが「Nicholas Nickleby」。これは有名な作家Charles Dickensの本で、題名には二つのNick(悪魔)が含まれています。ヒントでは三つの悪魔ですからもう一つの悪魔があるのですが、それはdickensを英語の辞書で調べてみましょう。Dickensという大文字で始まるのではなく小文字のdickensです。

一覧にもどる