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英語英文学科

2016.03.24

留学生への手紙│伊藤豊美

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英語英文学科

エッセイ

次の文章は,本学の海外留学制度に関する担当者として,筆者が英語英文学科の留学生に送った手紙です。将来,大学で外国語を学ぼうと考えている高校生の皆さんの参考になれば幸いです。

本学留学生の皆さんへ

語学教育センター長 伊藤豊美

日本を発ってから早くも3ヶ月以上が経ち,4人が皆それぞれに元気でカナダ・ビクトリアでの生活を送っていることと安堵しております。

毎月,皆さんから報告書をいただいていますが,一つ気になることがあり,この手紙を書いています。皆さんの中には,配当されたクラスのレベルについて悩んでいる方がいるようですが,以下の内容をよく熟慮して,それでも必要であると考える場合は,ビクトリア大学の担当者にクラス替えを相談してください。

私が高等学校で英語を教えていたとき,英語の授業で2種類の教科書を使用していました。一つは精読用でたいへん難しい教科書,もう一方は速読・音読用で,当時,周辺のどの学校も採択していないような基礎的・基本的内容の教科書でした。あるとき一人の英語の成績の良い生徒が職員室の私のところへ来て,次のように苦情を言いました。「先生,この教科書(易しい方)を授業で使っていて大丈夫ですか。自分が通っている塾で,○○高校の英語科ともあろうものがこんな易しい教科書を採択しているとは信じられないと塾の先生も驚いていましたよ。」とのことでした。そこで私は,本人が持参していたその教科書を受け取り,教科書の英文を日本語にして生徒に言い,即座に英語で言い直すようにその生徒に要求しました。その生徒はほとんど英語に直して言うことができませんでした。それから,私は次のようにその生徒に話をしました。

易しいとあなたが馬鹿にしている教科書の英文が,なぜすぐに口をついて出てこないのですか。私たちは生徒の皆さんが英語の基礎・基本を繰り返し訓練することにより,あなた方が中学校以来学習してきて身に付けたであろう「知っている英語」を,本当の意味で「使える英語」に転換するためにこの教科書を使用しているのです。だからこの教科書の授業では,LL教室を利用して英文の内容を理解した後に,徹底的に音読や暗唱をあなた方に課しているのです。難しい英文を辞書を引き引き,後ろから訳しあげてばかりでは,英文の「解読」はできても,英文全体の意味をとらえた「読解」にはなりませんから,いつまで経っても英語を使いこなせるようにはならないのです。あなたが易しいというこの教科書の英文がすらすらと理解し表現できるようになったら,いつでも私のところへ来てください。そのときはこの教科書の使用について考えることにします。

外国語を学ぶ際に,基礎・基本を馬鹿にしていたら絶対に習得などできません。英語の規則を学習者の頭の中に内在化して,いつでも英語が口をついて出てくるような訓練が必要なのです。英語学習は単なる知識の習得ではなく技能の習得です。そのための訓練には,難解な英文ではなく基礎的な英文のほうが望ましいのです。あなたの英語の成績は確かに立派ですが,自分が英語が得意であると思った瞬間からあなたの英語力の進歩は止まってしまいますよ。英語を本当に身に付けようと思うのであれば,基礎・基本を「愚直」なまでに繰り返して,その単調さに負けず努力を継続するしかありません。

その後,この生徒は一度も不満を口にせず,黙々と努力を重ね,高校3年生のセンター試験では満点を取り,卒業式の日に私のところにお礼に来てくれました。また,高校卒業後の大学4年生時に,実用英語技能検定1級(英検1級)取得の報告にも来てくれました。

大学生の皆さんとこの高校生を単純に一緒にはできませんが,英語を学ぶ姿勢に違いはないものと思います。今一度,自身の英語力と学ぶ姿勢を振り返っていただきたいと思っています。ビクトリア大学の関係者には,本学の学生が,ホームステイやクラスについて悩みがある場合は必ず良い方向に調整していただくようお願いをしていますので,今日の私の手紙の内容をよく考えて,それでもあなた自身でクラス替えが必要と判断したら,いつでも相談してください。

大学生の皆さんとこの高校生を単純に一緒にはできませんが,英語を学ぶ姿勢に違いはないものと思います。今一度,自身の英語力と学ぶ姿勢を振り返っていただきたいと思っています。ビクトリア大学の関係者には,本学の学生が,ホームステイやクラスについて悩みがある場合は必ず良い方向に調整していただくようお願いをしていますので,今日の私の手紙の内容をよく考えて,それでもあなた自身でクラス替えが必要と判断したら,いつでも相談してください。

さらに,大学生の皆さんには,この高校生に要求したこと以外にも次のことを考えて英語の習得に努力してほしいと思います。

あなた方の英語を話す力を本質的に支えるのは,あなた方自身の持つ価値や人間性であり,それが英語によるコミュニケーションを決定づける要素であることを忘れないでください。そのためには,英語だけではなく,いや,それ以上に日本語で本をたくさん読んでほしいと思います。一般的に最近の大学生があまり本を読んでいないという現状を,私は深く憂慮しています。時間のとれる大学時代に,より多くの本を読んで,自分自身を見つめ直してほしいと願っています。

この貴重な留学期間中に,皆さんがそれぞれに,今,カナダでしか得ることができない様々な生きた体験を積みながら,多くの人や書物と出会って,しっかりと自分自身の人間性を磨いていかれることを期待しています。

皆さんの留学が有意義なものとなるよう,そして,全員が無事に元気で帰国することを祈っています。

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