ノートルダム清心女子大学は,教員養成という点においても大きな実績をあげています。
英語英文学科の卒業生も,最近10年間で見ても,中学校,高等学校の英語科教諭として正式採用された卒業生は70名を超えています。そして毎年10名前後が本学卒業後に中学校または高等学校等に教諭または講師として勤務し,生徒たちに英語を教えています。
教員免許状を取得するためには,教職課程を履修し,教員になるために必要な定められた単位を修得することが求められています。今回の学科エッセイでは,教師を目指す学生たちの姿の一端を紹介したいと思います。
本学の学生たちがとりわけ苦労しているように思われるのが,二つの演習科目のようです。「英語科指導法演習Ⅰ」という科目は,国内外の英語の論文を読みながら,将来必要になるであろう英語教育に関する知識を演習形式で蓄えていけるよう設定された科目ですが,英文を正しく理解するためには,その背景となる主に言語学に関する知識が必要になるため,どの学生にとっても最初の段階では単なる英文読解を超えた難解さがあるようです。この科目では,英語科教育の理論面を深く学びます。
さらにもう一つの演習科目である「英語科指導法演習Ⅱ」では,学生たちはグループごとに指導計画を立案・検討し,一人の学生が生徒役の他の学生に対して模擬授業を行います。この科目では,実際の学校の授業を想定して学生たちの実践的指導力を育成しています。事前にどれほど準備をしていても,授業というものは日々の状況や環境によって常に変化するものであるため,想定外の出来事に遭遇し,その対処に苦労しながらも学生たちは最終学年で実施される教育実習に備えています。
より良い教師になるためには,免許を取得するために英語に関する専門科目だけを学んでいればよいということではないため,学生たちはこの他にも様々な教職に関する科目を4年間にわたって学んでいます。「教職基礎」から始まって,「教育課程論」,「学校経営論」,「教育心理」,「生徒指導論」などの科目履修を通して,教師としての学びを深めていきます。筆者は,過去5年間,卒業前の最後の科目で,教職に関する意識調査を実施してきましたが,その中で4年間の教職履修で自分にとって教育に関する心に残る言葉は何かという問いかけをしてきました。以下に挙げているのは学生たちの心に残った言葉の一部ですが,学生たちが4年間の教職履修の中で,講義の内容,教育実習先の生徒たちや先生方から学んだ内容,自ら読んだであろう幾多の本,そして学生自らの体験を通して,多くのことを学び取ってくれたことが,これらの言葉から読み取れるのではないかと思います。
心に残る言葉 |
①生徒から信頼される先生は,生徒を信頼している教師である。 ②どんな生徒も,その生徒を取り巻く人間次第で変わる。 ③良くなると思えば必ず良くなる。悪くなると思えば必ず悪くなる。それが子ども。 ④生徒の短所・欠点を見るのは凡人。長所・美点を探し出すのが名人。 ⑤できない教師ほど子どもの愚痴を言い,子どものせいにする。 ⑥成功したのは生徒のおかげ。失敗したのは教師のせい。 ⑦子ども同士の教育(教え合い・学び合い)は,親や教師による教育に優る。 ⑧大人がしてやれるのは,相談に乗ること,支えること,大事な時に逃げないこと。 ⑨子どもは教師を選べない。 ⑩厳しい指導とは,決して見捨てない指導である。 ⑪人は人によって人になる。 ⑫忘れられて喜べる教師になりなさい。 ⑬学校は「正しいこと」が,何にもまして大切にされる場所でなければならない。 ⑭教えるとは希望を語ること。学ぶとは誠実を胸に刻むこと。 ⑮教育は教えるものでなく,学ばせるものである。学び方を指導するものである。 ⑯人は好きな人からしか学ばない。 ⑰教えることは学ぶこと。 |
また、本学では年に数回、卒業生を招いて3年生及び4年生を対象に特別講義を実施しています。中学校または高等学校等で英語教師として勤務している本学の卒業生に、実際の学校や生徒の様子及び教員としての仕事と勤務状況を、後輩たちに話をしてもらうよう依頼しています。学生たちにとっては、年齢の近い先輩から聞く体験談は、自らの教職履修を振り返るとともに、職業としての教師の在り方に思いをめぐらせて卒業後の職業選択を自覚する良い機会となっています。
学生たちの前で堂々と話をしている卒業生の姿を見ていると、つい最近まで大学の講義室で学んでいたとは思えないほど、彼女たちの卒業後の成長の大きさを実感するとともに、教師を目指す学生たちに関わる担当者としての大きな喜びを感じています。