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現代社会学科

2019.02.20

関心のある不関与・無関心の不関与──都市空間のルール──:学科の紹介【45】

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現代社会学科

関心のある不関与・無関心の不関与──都市空間のルール──

中山 ちなみ 准教授

 人口が多く匿名的で、見知らぬ人どうしが絶えず出会ったり行き違ったりする都市空間においては、「不関与規範」という暗黙のルールが存在すると言われてきました。例えば、電車の中のような公共空間では、私たちはできるだけ他人と目を合わさないようにするために、新聞や本を広げたり、吊り広告を読むふりをしたり、外の景色を眺めたりします。こうして、「私は他人のことに関心がありませんよ」ということを、その場にいる全員が態度や行動で示すことで、お互いのプライバシーを守り、わずらわしさや無駄なトラブルを避けるためのルールなのです。みんながこのルールに従っている中で、隣の人が読んでいる新聞をのぞきこんだり、気安く話しかけたりしようとしたあなたは、都会のルールを知らない"田舎者"とみなされることになります。都会の人間関係は冷淡で、親密な関係が築けないというイメージがありますが、それはその通りなのかもしれません(洗練された都会人のスタイルとはそういうものと思っておきましょう)。

 ただし、このような「見知らぬ人にみだりに関与しない」という態度を、都市の人びとが他者に無関心であることと同義でとらえるのは誤りです。「関与しない」というルールをみんなが守り、「不関与的に」相互作用しあうことで、人びとは都市空間の秩序を保つために相互に協力しあっているのです。各自が電車の中の様子に絶えず目を配り、どの席が空いたか、自分が立つ位置はここでよいか、あのおばあさんに席を譲るべきか、痴漢と間違われないだろうか、などと観察していなければ、不関与規範は成立しません。人びとは他者に無関心なのではなく、無関心と見られるように細心の注意を払って行動しているわけです。みんなで一生懸命にお互いに干渉することを避け、無関心を装いながら協力しあっているというのは、想像すると何となく可笑しくなってきませんか。

 さて、携帯電話やスマートフォンは、不関与規範を遵守するための小道具としてうってつけのものです。画面に目を落とし、イヤホンを装着すれば、苦労せず「不関与」「無関心」の態度を示すことができます。しかしその結果、わたしたちは無関心を装うのではなく、本当に無関心になってはいないでしょうか。空間を共にしている他の人びとよりも、画面の向こう側にあるものへ関心が向かい、同じ場にいる人びとへの関心はお留守になってしまっているのではないでしょうか。

 「私はちゃんと、この場でふるまうべき行動を理解していますよ」ということを意識しながら(関心を持って)不関与を装うのと、その場の人びとに本当に関心がないために結果として不関与になるのとでは、表面上の行動は似ていますが、中身は全く異なります。公共空間にいきなり各個人宛に電話がかかってくるような時代になってから、わたしたちは社会のルールよりも、個人のルールを大切にするようになってきているといえるのかもしれません。

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