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日本語日本文学科

2018.09.01

大村はま国語教室の実践と思想の継承-「大村はま記念国語教育の会」研究大会-|伊木 洋|日文エッセイ179

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日本語日本文学科

日文エッセイ

【第179回】 2018年9月1日

【著者紹介】
 伊木 洋(いぎ ひろし)
 国語科教育担当
 国語科教育の実践理論を研究しています。

大村はま国語教室の実践と思想の継承-「大村はま記念国語教育の会」研究大会-

 大村はま先生が帰天なさった平成17年、「大村はま記念国語教育の会」は、大村はま先生の実践と思想をたしかに受け止め、次代へと継ぐことを願って歩み始めた。平成17年、第1回研究大会の横浜大会に始まり、大村はま先生ゆかりの地を中心に全国各地で開催されてきた。第2回以降は、山形、諏訪、目黒、鳴門、埼玉、福岡、千葉、鳥取、秋田、横浜、岩手、尼崎と続き、平成29年に開催された第14回研究大会東京大会は、大村はま先生が多くの単元を実践なさった大田区立石川台中学校が会場校となっている。研究大会では、大村はま国語教室の理念を継承すべく、実践研究発表、研究発表、講演の他、教え子の方々による証言など豊かなプログラムが用意されている。会報「はまかぜ」の記録をもとに、「大 村はま記念国語教育の会」研究大会のうち、第5回、第9回、第12回研究大会を紹介する。

 第5回研究大会鳴門大会は、平成21年8月19日に、大村はま先生の貴重な実践資料や学習記録が寄贈された大村はま文庫が開設されている鳴門教育大学で開催された。佐藤浩美氏の実践研究発表に続き、伊木も「学びひたり教えひたる優劣のかなたを目指して-学校図書館と学習者を結ぶ学習指導の実際-」と題して、実践研究発表を行う貴重な機会をいただいた。実践研究発表では、大村はま先生の詩の単元に学んで構想し実践した「単元 一句との出会い 心ひかれる季節のことば」をとりあげた。山元隆春氏の研究発表「学習のてびきの一源流-E・A・クロス編『文学 アンソロジーシリーズ』を中心に」、余郷裕次氏の研究発表「大村はま文庫の絵本」、苅谷夏子事務局長の講話「大村はま先生に学んだこと」、苅谷剛彦氏による講演「これから教師に期待されること-教育改革と職業としての教育-」、野地潤家氏の講演「源泉としての大村はま国語教室に学ぶ」、倉澤栄吉会長による講演「国語教育の現在と今後-大村はまがのこしたもの-」が行われた。大村はま文庫も公開され、橋本暢夫氏による解説の後、参加者は実践資料や学習記録を次々と手にとり、大村国語教室に思いをはせた。

 第9回研究大会鳥取大会は、浜本純逸氏を実行委員長として、平成25年10月12日、鳥取市遷喬小学校で開催された。午前は、河野智文氏の研究発表「経験主義国語教育の論点と大村はま先生-教育観の拡張を中心に-」、苅谷夏子事務局長の研究発表「大村はまの『てびき』の諸相」、竹田潤氏、河村英樹氏、草野十四朗氏の実践研究発表、研究協議の指導助言者は、難波博孝氏、坂口京子氏、田中宏幸氏であった。午後は、湊吉正会長による展望に始まり、シンポジウム、対談、講演が行われた。シンポジウム「自ら考え表現する学び手を育てる国語教育」の登壇者は、東和男氏、甲斐利恵子氏、遠藤瑛子氏、平松はるみ氏、小原俊氏であった。伊木はこのシンポジウムの司会を担当させていただいた。登壇者お一人お一人の豊かな識見や豊富な実践に裏打ちされたお話は広がりのあるものとなった。浜本純逸氏と中島諒人氏の対談「ことば・演劇・教育」の後、鹿内信善氏の講演「読書と作文の町づくり」が行われた。  
 第12回研究大会は、平成27年8月2日、岩手県盛岡市アイーナ・ホールで開催された。藤井知弘氏の基調講演「これから求められる国語学力」、甲斐利恵子氏による授業提案「中学校一年生『語り継ぐ人』その一 友達編」、糸坪伸宏氏、長根いずみ氏、の実践研究発表、菊池とく氏と苅谷夏子事務局長の対談、望月善次氏の司会、桑原隆氏、甲斐雄一郎氏、西川さやか氏によるシンポジウム「単元学習と国語学力」、苅谷剛彦氏による講演「グローバル化の時代と大村はま-オックスフォードから考える『学ぶ』ということ」、湊吉正会長による展望が行われた。
 甲斐利恵子氏の授業提案について、伊木は、「体験記録を書く-単元 平成12年鳥取県西部地震を風化させないために-」(注1)を実践したことを思い起こしつつ、「語り継ぐこと」の重みを改めて実感し、「はまかぜ第31号」に、次のように記した。

「『何かできごとがあったとき、他人ごとではなく、自分のこととして語り継ぐことが できる人になってほしい』という願いに基づいて構想された単元であった。東日本大震災にみまわれた東北の地に生きる学習者にとって、「他人ごとではなく、自分のこととして語り継ぐ力」は、決して震災を風化させることなく、未来に向かって歩みを進めるほんとうの生きる力になると思われた。」

 第15回研究大会(注2)は、平成30年10月20日、大村はま研究ゆかりの地、広島で開催されることになっている。大会テーマは「一人ひとりをいかす国語教室を求めて」、大村はま先生の実践と思想が確かに語り継がれ、受け継がれていく。多くの方々の参加を期待したい。

追記
 平成30年7月の豪雨は、まさに他人ごとではなく、西日本に甚大な被害を与えた。岡山でも多くの貴重な命が失われ、多くの方々が被災なさった。亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りしたい。

注1 「体験記録を書く-単元 平成12年鳥取県西部地震を風化させないために-」の詳細は、伊木 洋(2018)『中学校国語科学習指導の創造』溪水社 pp.173-201、に報告している。
注2 第15回研究大会(広島大会)に関しては、大村はま記念国語教育の会HP参照。
  
参考資料
大村はま記念国語教育の会 2015『会報 はまかぜ 第28号』
大村はま記念国語教育の会 2016『会報 はまかぜ 第31号』
伊木 洋 2018『中学校国語科学習指導の創造』溪水社

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