2025年5月10日と11日の2日間にわたって、九州女子大学で日本キリスト教文学会2025年度第54回全国大会が開催され、英語英米文学専攻博士後期課程3年に在学中の香川理恵さんが、研究発表を行いました。
日本キリスト教文学会は、1965年に「キリスト教と文学」研究会として創立され、1982年に本会名に変更された〈文学〉と〈キリスト教〉の関係を研究する学会で、5つの支部から成り、外国文学系と日本文学系の文学作品および作家を主なる研究対象としています。年1度の全国大会の他、機関誌『キリスト教文学研究』や「会報」も発刊しています。
「日本キリスト教文学会会報」第58号に掲載された香川さんの発表の要旨は以下の通りです。
「ジョン・スタインベック『赤い子馬』―イニシエーション物語から信仰と生物学への旅」
香川理恵
ジョン・スタインベックによる短編『赤い子馬』は、一般的に主人公のイニシエーションを語る物語とされている。しかし、作家自身の幼い頃の経験や両親の死を子馬に反映させるという伝記的要素を描きつつ、より普遍的な形で「死」という事象の本質に迫ろうとし、さらにその過程で、宗教的・象徴的な描写と写実的・生物学的な描写を混在させていることから、単なるイニシエーション物語とは言えない。また、生物学者エドワード・リケッツが主張する生物の集団行動理論をさらに発展させたファランクス理論を作品に取り込んでいることからも、この作品を宗教性から生物学的思考へと向かうスタインベックの過渡的作品であると位置付けることが可能である。スタインベックが考えるファランクス理論は、生物の集団行動理論を個々の細胞の働きにまで落とし込み、さらには生物学的視点だけではなく、宗教や戦争といった一般の人間の行動心理にまで派生させている。このファランクス理論を作品にどのように反映させようとしたのか、作家の真意を考える。学会の第二日目では本学のキリスト教文化研究所の教授で、英語英米文学専攻博士前期課程の専門関連科目「聖書学特論」をご担当の山根道公先生も「日本のキリスト教文学における文化的受容――日本文化に根ざす垂直的信仰と汎在神論」という演目でご講演をされました。
・英語英米文学専攻(大学院紹介)
・英語英文学科
・山根道公教授(教員紹介)
・キリスト教文化研究所