生涯学習

2025.07.18

【清心felice講座報告】7/12「別れと出会いの物語―グリーフケアの人間学」

  • 生涯学習

    生涯学習センター

  • 社会連携・研究

    社会連携

  • 卒業生支援

    卒業生支援

X

facebook

2025年7月12日(土)に、清心フェリーチェ生涯学習講座「いきがいの人間学」の2025年度講座が本学で開催されました。今年は「グリーフケアと私たち~つながりの未来を考える」というテーマのもと、3回の連続講座が企画されています。この日は第1回目として、﨑川 修教授(本学人間生活学科教授)が「別れと出会いの物語―グリーフケアの人間学」と題して講演しました。

 「グリーフケア」は、東日本大震災などの災害や、大きな事故などをきっかけに、日本でも広く知られるようになりました。「悲しみ」は、さまざまな喪失を避けることのできない人間が、それに向き合っていくために与えられた「生きる力」でもあります。しかし現代社会では、古来悲しみの受け皿となってきた宗教や地域共同体、家族などの「つながり」が衰退し、悲しみに耳を傾けて共に寄り添う時間や場所も見失われつつあります。そうした中で、大切な人を失い、行きどころのない感情を抱えて苦しむ人も多く、そうした喪失の悲嘆や苦悩へのケアの必要性も高まっています。
 「喪失」は、人間の誕生や成長のプロセスの中にも必ず存在する経験であって、人は失うからこそ、何かと新しく出会うことができるともいえます。喪失はその人の生きる世界を揺るがし、悲しみを引き起こします。しかしその「悲しみ」には、たんなる心の内側にある「心理作用」にとどまらない、世界に滲み出し、他者とのあいだに通いあう「情」(パトス)としての働きがあると思われます。そうだからこそ、人は悲しみを通じて、自己と世界をつなぎ直すことができるのではないでしょうか。
 そうした「悲しみ」から「つながり」を生み出すために重要な役割を果たすのが「言葉」や「物語」です。それは悲しみの中から人生の意味の断片を拾い上げ、それを組み換え、語り直していく経験を与えてくれるものだといえます。講演では、ノーベル賞作家ハン・ガンの作品にも触れながら、見えないものを呼び起こし、隔てられたものをつなぎ合わせる「言葉」が、苦悩を心の中から世界へと開き、人生への出会い直しのきっかけを与えてくれるものであることについて、お話ししました。
 もちろん、すぐに言葉が見つからなくてもよいのです。沈黙の中で、忘れていた世界の豊かさに時間をかけて出会うプロセスが大切であり、それを支援する「つながり」がグリーフケアなのだと思います。
 猛暑の中ご来場いただき、熱心に耳を傾けてくださった皆様、有り難うございました。(﨑川 修)
 

【お問い合わせ先】
ノートルダム清心女子大学 生涯学習センター
〒700-8516 岡山県岡山市北区伊福町2-16-9 ヨゼフホール内
E-mail:opc@m.ndsu.ac.jp  (@を半角にしてご利用ください)
TEL:086-252-7045 FAX:086-252-7044
受付時間:月~金曜 8:30~17:00
     土曜(講座日のみ) 8:30~12:30
 



﨑川修教授の教員紹介ページ
清心フェリーチェ(生涯学習センター)のウェブサイト
 (↑講座詳細やオンライン申し込みはこちらから)
生涯学習センターのX(旧Twitter)(地域連携・SDGs推進センターと共用:ぜひフォローください)
生涯学習について(社会連携・研究)