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日本語日本文学科

2024.04.01

大村はま先生の意思を引き継ぐ | 伊木 洋 | 日文エッセイ244

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日本語日本文学科

日文エッセイ

【著者紹介】
伊木 洋(いぎ ひろし)
国語科教育担当

国語科教育の実践理論を研究しています。
 
大村はま先生の意思を引き継ぐ 
 
 本学日本語日本文学科における中等国語教職課程では、大村はま先生の国語教室における実践を取り上げて国語科教育の実践理論を学んでいく。そうした学びを踏まえ卒業論文の研究テーマとして、大村国語教室における実践を取り上げて論文の作成に取り組む学生もいる。2023年度も2名の学生が大村実践を取り上げて研究を進めており、その一人であるS・Sさんは、大村はま先生の個人文集の実践を取り上げて考察を進めている。 
 大村はま先生の個人文集の実践は、自己を見つめ、学習者一人一人の書くことの力を育てることを目指して行われたものである。大村はま先生の個人文集の実践に関する資料は、大村はま国語教室第6巻に「個人文集―の本全9冊」と「個人文集―の本第2案」が掲載されている。また、大村はま国語教室資料篇3に、「個人文集わたしの本9冊」、「個人文集わたしの本第2案」が、実際の学習者が作成した個人文集とともに収録されている。 
 S・Sさんは、大村はま国語教室に掲載された資料を考察したうえで、橋本暢夫博士の『大村はま「国語教室」に学ぶ―新しい創造のために―』に掲載されている文集目録をもとに、鳴門教育大学附属図書館大村はま文庫に所蔵されている個人文集を調査し、大村はま国語教室に掲載されていない個人文集を取り上げてその実際を検討している。 
 

『個人文集 わたしの本』

『個人文集 わたしの本』

 2023年10月8日、2023年度大村はま記念国語教育の会研究大会さいたま大会が、さいたま市文化センターで開催された。大村はま記念国語教育の会の甲斐雄一郎会長は、あいさつの中で大会テーマ「今、大村はま実践から何を考えるか」に関わって、「大村はま先生が現在ここにいらっしゃったならば、教育をどう語られるだろうか」とおっしゃった。続いて古川久理子氏による俳句創作の実践発表、廿樂裕貴氏による創作指導の実践発表が行われた。 
 昼食をはさみ、大村はま記念国語教育の会理事長の苅谷夏子氏の司会によって、話し合い「今、大村はま実践から何を学ぶか-さまざまな角度から話し合う-」が行われた。登壇者は中山厚子氏(南部国語の会会長)、熊谷芳郎氏(聖学院大学)、山本賢一氏(川口市立前川小学校)、甲斐理恵子氏(軽井沢風越学園)であった。苅谷氏は大村実践「わたしの生まれた日」を示してお話をなさり、中山氏は個人文集わたしの本の実践をもとに書くことの学習指導について提案なさった。熊谷氏は大村実践におけるグループ編成を取り上げてその特徴をお示しくださり、山本氏は大村はま先生のてびきに学び、子どもをイメージしててびきを作ることについて言及なさった。甲斐氏は子どもとともに大人も学び続けることの価値をお話なさった。 
 
 話し合いに続いて、桑原隆日本国語教育学会会長による講話、「探究的言語活動と試作単元『小』考」が行われた。最後に、甲斐会長は、展望の中で、二つの大村実践、1950年の「読書の技術」と1974年「外国の人は日本(日本人)をこのように見ている」を示し、大村実践の成熟の過程を明らかになさった。 
 この大会に、大村はま実践を取り上げて研究を進めているS・Sさんをはじめ、本学4年生3名が参加した。S・Sさんは、大会に参加した感想を次のように記している。

 今回、初めて研究大会に参加し、様々な先生方のお話を聞かせていただいたことで、改めて大村先生という存在の偉大さ、大村先生の言葉や実践にある重みなどを実感し、これからも多くの人へ語り継いでいかなければならない価値のあるものだと思いました。研究大会の中で印象的だったのは、実践研究の発表です。大村先生の意思をしっかりと引き継ぎながら、子どもたちの力を育もうと尽力されている先生方に大変感銘を受けました。 
 また、自分が卒業論文で取り上げている内容に関して、論文を執筆なさっている中山先生のお話を、実際に聞くことができたことも印象に残っています。自分が勉強しているからこそ分かることも多くあり、話題を共有しているような嬉しい気持ちに浸りつつ、学ばせていただきました。ほんとうに自分のためになったと感じた時間でした。大村先生の実践を卒業論文で取り上げることを誇りに思いながら、最後まで全力を尽くしていきたいです。(S・S) 

 S・Sさんは、研究大会に参加し、「改めて大村先生という存在の偉大さ、大村先生の言葉や実践にある重みなどを実感し、これからも多くの人へ語り継いでいかなければならない価値のあるものだと思いました。」と大村実践の価値に思いを寄せている。また、大村実践に学んだ実践発表に触れて、「大村先生の意思をしっかりと引き継ぎながら、子どもたちの力を育もうと尽力されている先生方に大変感銘を受けました」と述べている。さらに、個人文集に関する先行研究をなさった中山厚子氏のお話を聞きながら、考察への意欲を高めている。この研究大会は、S・Sさんのような若い世代が、大村はま先生の意思を引き継いでいく貴重な学びの機会となっていることを改めて実感した。 
 
 
参考文献・参考資料 
大村はま『大村はま国語教室第6巻』1983 筑摩書房 
大村はま記念国語教育の会研究大会2023年度研究大会【さいたま大会】配付資料 2023 
大村はま記念国語教育の会「はまかぜ第53号」2023  
橋本暢夫『大村はま「国語教室」に学ぶ―新しい創造のために―』2001 渓水社 

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