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日本語日本文学科

2017.11.01

NIEの先駆者、大村はま先生|伊木 洋|日文エッセイ169

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日本語日本文学科

日文エッセイ

日本語日本文学科 リレーエッセイ
【第169回】 2017年11月1日
【著者紹介】
伊木 洋(いぎ ひろし)
国語科教育担当
国語科教育の実践理論を研究しています。
  
NIEの先駆者、大村はま先生

 2000年10月、横浜に日本新聞博物館がオープンして17年になる。日本新聞博物館の誕生は、大村はま先生と深い関わりがある。日本新聞博物館には、羽島知之氏が50年にわたって収集した10万点以上に及ぶ新聞コレクションが貴重な資料として保管されている。羽島知之氏は昭和20年代に目黒第八
中学校で大村はま国語教室に学んだ方である。

 『教えるということ』(大村はま 1973 共文社 PP60-62)によると、戦後の大村はま国語教室は、教科書もノートも、黒板も机も椅子もない、窓ガラスの割れた校舎に、100名を越す生徒を集めた焼け跡の教室から出発した。

 大村はま先生は「ウワンウワン」と騒ぐ生徒をつかまえ、疎開先の荷物の中にあった新聞や雑誌をもとにして作った教材と学習のてびきを書いた紙を渡して、授業をスタートなさった。そのとき、手のつけようもないほど騒いでいた子どもたちが、しーんとなって食いつくように勉強し始めた姿に感動し、涙なさったという。大村はま国語教室における新聞を活用した学習は、こうしてやむにやまれぬ状況の中から生み出された。

 その後、大村はま先生は、学校新聞、学級新聞の制作、新聞内容のさまざまな研究、読書新聞等、新聞を活用した単元を構想し、実践なさった。西尾実編国語教科書「国語 一下」の第六単元「新聞」には、大村はま先生が執筆なさった「わたしたちの新聞」という教材が掲載されている。「わたしたちの新聞」は、「いずみ新聞(泉中学校新聞部)」第一面とこの新聞の批評会で構成されている。「いずみ新聞」を含め、すべて大村はま先生がご自身で書き下ろされたものである。この単元では、新聞と新聞の批評会を通じて、学校新聞の意義、学校新聞編集の技術、見出しの工夫をはじめ、記事、論説、ホームルームだより、声欄、文芸欄など、さまざまな文章を通じて、学校新聞が取りあげる記事の視点に気づかせ、書く力の基礎力や意見・感想が育つよう工夫されている。そこでは学習環境の問題や昼休みの意義、いじめの問題など学校生活の生きた問題を的確に取りあげ、学習生活全体を向上させる自覚を高めるため、学習者一人一人がどのように考え、どう行動すべきかを示唆し、学校生活という社会へのまなざしが育てられている。

 羽島知之氏は、「私の原点は、中学1年の時の新聞学習にある」と語っており、大村はま国語教室における「新聞」を活用した単元の学習で、新聞の種類を調べ、全国の新聞題字を集めたのがきっかけで、新聞収集を始めたという。羽島氏は、収集し、記録し、保存することを大切にし、社会人となっても、中学時代に興味をもった新聞を集め整理し続け、その結果が貴重なコレクションとなった。

 2017年3月に告示された小学校学習指導要領、中学校学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指した授業改善が求められている。国語科の内容は、〔知識及び技能〕及び〔思考力、判断力、表現力等〕から構成されている。〔知識及び技能〕の内容は、「言葉の特徴や使い方
に関する事項」、「情報の扱い方に関する事項」、「我が国の言語文化に関する事項」で構成され、急速に情報化が進展する社会において、情報活用能力の育成が重視され、「情報の扱い方に関する事項」が新設されている。また、読書指導の改善・充実の中では、新聞を読むことへの言及がなされ、
学校図書館に新聞が配架される学校も増えている。こうした状況の中、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて、デジタル化された情報の活用も含め、新聞を活用した学習指導の可能性は大きい。

 羽島知之氏の案内で、大村はま先生、橋本暢夫先生にお供して、日本新聞博物館内を見学させていただいたときのことを思い出す。羽島氏の説明をほんとうにうれしそうに聞いていらっしゃった大村はま先生の表情が印象に残っている。

 NIEの先駆者、大村はま先生に学び、新聞を活用した単元構想の充実が図られ、「主体的・対話的で深い学び」が実現することを期待したい。
 
参考文献
大村はま 1973『教えるということ』共文社
大村はま 1970『国語教室の実際』共文社
大村はま 1982『大村はま国語教室第1巻』筑摩書房
大村はま 1999『心のパン屋さん』筑摩書房
西尾実編 1959『国語 一下』筑摩書房
橋本暢夫 2001『大村はま「国語教室」に学ぶ-新しい創造のために-』溪水社
  
※ 画像は、上、『教えるということ』表紙(大村はま、共文社)、下、『国語 一下』表紙(西尾実
編、筑摩書房)。画像の無断転載を禁じます。 

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