本学特殊文庫には、本学国文科(現・日本語日本文学科)の教授であった故・正宗敦夫氏の旧蔵書からなる正宗敦夫文庫、江戸時代を代表する国学者である黒川春村・真頼・真道の旧蔵書を収める黒川文庫を中心とし、貴重な古典籍が多く所蔵されています。特殊文庫の資料を授業や自身の研究に活用している日本語日本文学科の教員が、全10回にわたって「特殊文庫の魅力」を発信します。
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今はまだ知る人ぞ知る本学特殊文庫ではありますが、設置から現在まで、様々な形で文庫を学外に開く試みが行われてきました。
インターネット上での蔵書検索が一般的ではなかった頃、図書館の資料を利用するには紙媒体の目録が必須でした。さまざまなデータベースが発達した現在でも、全国に設置される「文庫」(連載第1回参照)の目録は、蔵書の特色を一覧できるものとして、その文庫の魅力を語っています。本学の特殊文庫目録は昭和50(1975)年、当時日本語日本文学科の教員であった故・赤羽淑氏を中心に編集、刊行されました。この『ノートルダム清心女子大学付属図書館所蔵特殊文庫目録』は全国の図書館や研究者に頒布され、現在も岡山県内外より、多くの研究者が特殊文庫の資料の閲覧に訪れています。
特殊文庫所蔵資料の翻刻・影印の出版も行われました。
昭和41(1966)年より、『ノートルダム清心女子大学古典叢書』が福武書店を版元として刊行され、『金葉和歌集』や『源氏物語考』、『狭衣物語』校注などが収録されています。2010年から2013年にかけては、武蔵野書院より『正宗敦夫収集善本叢書』が財団法人正宗文庫、国文学研究資料館、ノートルダム清心女子大学の共編によって成り、特殊文庫蔵『光源氏物語抄』などが一般の閲覧に供されました。
古典籍のデジタルアーカイブ化が進む現在では、国文学研究資料館が公開する「新古典籍総合データベース」(https://kotenseki.nijl.ac.jp/)において、本学特殊文庫の所蔵資料の一部が画像公開されています。
このように、実は学外にいても特殊文庫所蔵資料の多くを目にすることができるのです。
が、まだまだ「知る人ぞ知る」特殊文庫、2022年度に全10回にわたり更新してきた本連載は、ノートルダム清心女子大学、および岡山、さらにいえば日本の財産としての特殊文庫の魅力を、学外、学内の人々に少しでもお伝えできればという願いをこめて進めてきたものです。
日本語日本文学科では、連載でお伝えしてきた授業での特殊文庫利用だけでなく、研究成果の発信、学内外の講座、オープンキャンパスなどで、これからも特殊文庫の魅力をお伝えしていきたいと思います。また、本学への進学を検討しているみなさんにも、ぜひ本学ならではの、特殊文庫を通した古典籍体験を味わってもらいたいと考えています。
文庫は貴重な古典籍を保存するためにあるのと同時に、所蔵資料や研究成果を更新し、成長していくものでもあります。現在、在学生や学内外の研究者の協力を得ながら、昭和50年の『ノートルダム清心女子大学付属図書館所蔵特殊文庫目録』を改訂する作業が進んでいます。また、所蔵資料のデジタルアーカイブ化もさらに行われる見込みです。
古典籍は、ほんの数十年を生きる私たちには手の届きようのない過去と、現在とを結ぶ橋渡しであり、長く未来に伝えていかなければならないものです。本連載に目を留めてくださり、特殊文庫や古典籍が少しでも気なったという方がいらっしゃれば、ぜひ今後も私たちの活動に目を向け、興味を持ち続けていただきたいと思います。
附記
本記事は2022年度学長裁量経費教育改革研究助成金「「ノートルダム清心女子大学」特殊文庫目録」改訂に向けての資料整理および調査・研究」を受けての研究活動の一環として作成・公開しています。
ノートルダム清心女子大学附属図書館
「特殊文庫」紹介ページ
https://lib.ndsu.ac.jp/collection/special.php
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