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日本語日本文学科

2011.01.05

県立図書館と市立図書館|神原 俊治|日文エッセイ87

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日文エッセイ

日本語日本文学科 リレーエッセイ
【第87回】2011年1月5日

県立図書館と市立図書館
著者紹介
神原 俊治(かんばら としはる)
図書館学・司書課程担当
図書館を活用した資料と情報の探索方法を探究しています。

2010(平成22)年は、『国民読書年』でした。ご存じでしたか?
国がわざわざ"読書しましょう"と呼びかけてくれたのです。これ以前にも2000(平成12)年には『子ども読書年』、2001(平成13)年には『子どもの読書活動推進に関する法律』、2005(平成17)年には、『文字・活字文化振興法』と、矢継ぎ早に『読書』を国民に要求しています。

国はちょっとお節介ではないでしょうか。なぜなら『読書』は個人の行為だからです。他から言われてするものではないからです。詩歌、戯曲、小説・物語、エッセイ、紀行、ルポルタージュなどなど、個人が読みたいと思った時が『読書』ではないでしょうか。ところで、読みたいと思った時皆さんはどのようにして目的のもの(本)を入手していますか? ある人は書店で購入するでしょう。一般的にはこのパターンが一番多いかもしれません。また、図書館で借りて読む人もあるでしょう。どちらも本を読むことに変わりはありません。

最近の経済情勢は大変厳しい状況であることはご存じのとおりです。読みたいと思っても「自腹を切ってまで購入することもない」と考える人も多いはずです。"無料で手軽に借りられる『図書館』"を利用することは、経済的でもあります。

そこで質問です。あなたのお住まいの近くに自治体が設置した図書館がありますか?使い勝手はどうですか?自治体の規模(予算)により蔵書量の多少はありますが、読みたいときに気軽に行けて便利ですし、万一その図書館が所蔵していなくても、他の図書館から借りて提供してくれます(リクエスト制度という)。

図書館はあっても図書館まで行くことが出来ない人たち、主に乳幼児や高齢者には、移動図書館で近くまで巡回して本を提供してくれるサービスもあります。また、体に障害を持つ人には、無料宅配などのサービスを提供してくれるのが自治体の図書館です。つまり、住民の一番近くにあって読書要求を保障するように努力しているのが市町村の図書館(以後、市立図書館)なのです。

これに対して、県下一円(県民全体)をサービス対象にしているのが都道府県立図書館(以後、県立図書館)です。市立図書館が住民に対して「直接的サービス」を提供することに対して、県立図書館は、県民に対して「間接的なサービス」を提供するのが主な仕事です。前述のように、読みたい本が市立図書館に所蔵してない時や、調べものをしたい時に適切な参考図書などが無かった時など、県立図書館が貸出をしたり、調査の依頼を受けて代わりに調査したりするのです。また、建物はあるけれど人が足りないとか、図書館の管理運営のノウハウを指導して欲しい、という要望が市町村からあれば人を派遣したり、あるいは逆に県内の図書館職員を集めて研修を行ったりします。その他、県内の図書館未設置の自治体に出向いて、設置のための相談にも対応します。

このように私たち利用者にとって、知りたい、読みたい、見たいという欲求を満足させるのが図書館の仕事ですが、図書館の数は充分でしょうか?郵便ポストの数やコンビニの数ほどあるでしょうか?いつでも、どこでも、誰でもが利用できる図書館が欲しいものです。法などをつくり、国民に"読書せよ"という前に、図書館環境(読書環境)を整えて〈さあ、どうぞ〉、ではないでしょうか。国民や自治体に対して押しつけるものだけをつくり、あとはそちらの責任でやりなさいでは、納得できません。

ところが、国に先駆けてこれを実践したのが、以前紹介しました滋賀県です(第35回2006年9月1日、図書館見学)。1980年代、図書館後進県だった滋賀県が、県立図書館と協力して、図書館未設置の自治体に、建設費の補助や一定の期間資料購入を補助し、あるいは人材確保のためのアドバイスなどを約束した結果、現在では国内公共図書館の牽引役を果たしています。現・総務大臣の片山氏が知事であった鳥取県も、県立図書館や市立図書館、学校図書館の充実振りが注目されています。

図書館は、"民主主義の砦""生涯学習を保障する公的機関"です。国はもっと真剣に考えて欲しいものです。
画像は、「国民読書年」のロゴ。

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