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人間生活学科

2016.03.25

2015年度卒論短評@横セミ|横山學|生活文化史学研究室

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人間生活学科

学科ダイアリー

先日、最終講義を終えました。その時、過去の資料を整理すると、32年間で271件の卒業論文・修士論文に関わったことが知れました。最初の10年間頃までは100%、次の20年頃までは70%、現時点では論文題目を問われれば、約半分の内容を思い出せます。さて、最後の短評を進めましょう。

「日本不思議世界の研究」UAさん
 この研究は、「不思議ということは一体どのようなことなのか」という素朴な疑問から出発しました。まず、語源・日本語としての用法・使用例を確認しながら、時代的に「不思議」として記録されている記事を確かめるという作業から始めました。具体的には『今昔物語』と『甲子夜話』中の、「不思議」と受け取られた記事を書き抜き、これらを分析するという大変な作業と取り組みました。前者は仏教説話や民間説話が中心の書物、後者は近世後期の好奇心の強い大名が収集した世情が集められています。その時代の人たちにとっての「不思議」を探ることに終始しました。それほどまでに惹きつけられた卒業課題ですから、これも「不思議」です。

「美の効用」OMさん
 「美しい」ということとは何?「美しさ」とは?、何故人は「美しいもの」に魅かれるのか?「美しさ」は一体どんな意味を持っているのか? そんな議論を何度何度も、毎回ゼミの場で交わしました。「美しいものを視ると、気持ちが良い?」、では「脳科学ではそれをどのように説明するのか?」。これらに応えるために社会には、どの様な仕組みが用意されているのか? 美術館に出掛けるのは、何を求めて? 美術館では何を得られるのか?結局、自分の中の意識を探るという、「?」の沢山詰まった研究です。

「近世往来物にみる異人ことばの世界」OEさん
 江戸時代は鎖国とされていましたが、実際には沢山の異人(外国人)たちが存在し、日本人の社会と関わっていました。これらの事実を、当時、庶民たちが目にした往来物・錦絵・行列図などの刊行物の中に探りました。利用が可能な限りの資料を探し、列記し分類し特徴を探りました。人々が日常で目にし、耳にする「ことば」(用語・語彙)の種類や広がりの中で、異人(朝鮮・琉球・中国・阿蘭陀・魯西亜・英国など)の姿や生活を見てゆきました。

「影絵文化の研究;日本・アジアにおける需要と変遷」KYさん
 光があれば、カゲ(影・蔭・翳・陰)が生じる。このカゲに、意味を持たせるという文化について研究を進めました。その発端は、ひとりの影絵作家への関心でした。作家の生涯と作品、影響を与えたと思われる戦争体験や東南アジアとの関わり。そこから発展し、世界各地の影絵文化についても調べました。インドやインドネシアの影絵芝居、中国のもの、そして近世の日本に流行っていた影絵。「カゲ」という言葉の種類と意味や用法についても、古代歌謡の世界から探りました。「光から得られる影」という単純な仕組みは、文化として発展し、地域によって様々に展開しました。

「お付き合いの文化史」SFさん
 人間関係の大切さを学ぶ機会を、茶道部の日常から得たようです。人と関わることは、生活する中では避けられないことです。この関係をどのように大切にするか。まず、茶道の世界から探りました。『南方録』は茶道の極意書です。ここには人との関わりの基本が、茶道の所作の世界から説明しています。また、近代社会の中における関わり方について、ルーズベルトの『エチケット』の中に探りました。何れも具体的な場の説明から、普遍的な人間関係の問題を説いています。

「イオンモールがやって来た! その時岡山は」NKさん
 「岡山市に巨大ショッピングモールが作られる」このニュースは、当時の岡山の最大関心事でした。経済界を始め、地域商業界からも注目され、行政としての岡山市も「岡山の起爆材」として出店を期待していました。この前評判から、開館、営業開始に至るまでの、岡山での動きに注目し、新聞記事、社会実験、行政の試行、店舗経営の実態について観察を行ないました。この大きなチャンスを、岡山は生かせたのでしょうか?

「現代における「民俗学」再検討の研究」HEさん
 「古老の話によれば」というのが、「民俗学のおきまり口調」でした。しかし、今や、日本人は総て、広く教育を受け、地域的な特質も薄らぎ、「古老」は存在していません。今日の社会変化に、民俗学はどのように対応してゆくのでしょうか?地域の民俗をどのように考えたらいいのか。これらの疑問を、一年生の基礎研究当時から持ち続けていたようです。この疑問は現代的な問題で、学会でも関心の集まるところです。教育現場においても、関わる研究者の疑問とするところです。これらの疑問を解くために、日本の民俗学の発展を、時代を追って整理しています。一つの軸は「柳田国男」でしょうか。学問は「社会の要請」を反映したものであるとすれば、「時代」を意識した「民俗学」について少し丁寧に考えよう。これがテーマでした。

「安房直子の魅力世界」FMさん
 「童話作家安房直子に魅せられた」ことが、研究の始まりでした。刊行本・雑誌を問わず、作品の総てを可能な限り集め、人物の経歴、人間関係、同人誌などを克明に探っています。そのうえで「作品の分析」を試みています。成功したか否かは、問題ではありませんし、それは容易に批評できることではありません。作品を視る深い眼と方法を養うことが出来たとすれば、さらに深く見てゆけます。本人は生涯の楽しみを得たと信じています。安房直子の近くで作品を発表されていた方(M先生)に、副査をお願いしたところ、厳しくも丁寧な批評。これは、お手柄でした。

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