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日本語日本文学科

2015.03.01

日南町から考える池田亀鑑 ~源氏物語研究の裏側~|原 豊二|日文エッセイ137

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日本語日本文学科

日文エッセイ

日本語日本文学科 リレーエッセイ
【第137回】 2015年3月1日
【著者紹介】
原 豊二(はら とよじ)
古典文学(中古散文)

担当源氏物語など平安時代の文学を多角的に研究しています。

 池田亀鑑(1896-1956)と言えば、主に平安文学作品の文献学的な研究をなした人物としてよく知
られている。特に『源氏物語』の研究成果は重要で、大著『源氏物語大成』として遺されている。他
にも『土佐日記』や『伊勢物語』『枕草子』に関わる同様な文献学的研究は、近代における国文学研究
の大きな成果として現在まで影響を及ぼしていると言ってよい。

この池田亀鑑の生誕地だが、実は本学のある岡山から近い。伯備線を走る特急やくもに乗れば1時間
半で着いてしまう。その地は鳥取県日野郡日南町という所だが、自然豊かな山あいの町である。岡山県
との境にあり、池田自身も書き残しているが、備中神楽の一団が県境を越えてよくやって来たようだ。

 近年、この池田亀鑑の顕彰は大きく進みつつある。これは地元の方々のお力と現在の平安文学研究者の協力があってのことである。毎年6月には、文学研究者に対して贈られる池田亀鑑賞も実施され、同時に開催される講演会では、受賞者の講演や関連研究者の講演が続く。

 近年、この池田亀鑑の顕彰は大きく進みつつある。これは地元の方々のお力と現在の平安文学研究者の協力があってのことである。毎年6月には、文学研究者に対して贈られる池田亀鑑賞も実施され、同時に開催される講演会では、受賞者の講演や関連研究者の講演が続く。

 日本語日本文学科の原ゼミの合宿も、昨年9月にここで行わせていただいた。JR生山駅に着くとす
ぐにバスに乗り込み、町立の図書館へと案内していただいた。原ゼミでは司書課程の履修者が多かったので、山間部の図書館自体にも興味を持った学生が多かったが、もちろんそこには池田亀鑑の著書コーナーもあった。その後、ふるさと日南邑という宿泊を兼ねた施設で、国文学研究資料館の伊藤鉄也教授による「鎌倉時代の「源氏物語」古写本を読んで池田亀鑑を追体験しよう」という講演があり、ゼミ生たちもそれを聴講した。この時の様子は、日南町のケーブルテレビのニュースにもなっている。

 翌日は池田亀鑑文学碑など町内の名所や施設をめぐり、再びやくもに乗って戻ってきた。町の方々の親切心に感謝しつつの帰路となった。

 かつての池田亀鑑の私設文庫を「桃園(とうえん)文庫」といったが、自宅に設置されたその文庫の片鱗を窺う写真を米子在住の遠戚の方からいただいた。池田は故郷にもこのような自宅の写真を送ったのである。

 また、近年では、ペンネームの池田芙蓉の名で書いた小説『馬賊の唄』がライトノベルのような装丁で復刊されている。これは、彼が大学教員になる前の下積み時代に生活のために書いたものである。その内容は大陸を冒険する少年を描いたものだが、昭和初期の時代相が作品中に詰まっていて、これはこれで興味深い。

 日本文学研究者として、こうした大先輩とでも言える人物の事績を追うことも、また新たな発見を伴うものである。単なる偉人伝にとどまらず、日本文学特に平安文学研究の辿った歴史をじっくりと顧みたいと思う。

※ 画像・上は、ふるさと日南邑での伊藤鉄也先生の講演。
  画像・中は、日南町神戸上(かどのかみ)にある池田亀鑑文学碑の前で。
  画像・下は、池田亀鑑邸(1932年8月撮影、右側コンクリート建物が書庫)。
画像の無断転載を禁じます。

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