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英語英文学科

2013.06.14

"Hey, What's the Story?" ――文学の街、ダブリンへようこそ|松井かや|英文エッセイ31

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学科ダイアリー

英語英文学科 リレーエッセイ 外国(語)の話

【第31回】 2013年6月

"Hey, What's the Story?" ――文学の街、ダブリンへようこそ

松井かや



アイルランドという国に魅せられて、数年が経ちます。そもそもの発端は、イギリスの作家だと思い込んでいたある女流作家が「アングロ・アイリッシュ」の作家であると知ったことでした。注意して見てみると、「イギリス文学史」のテキストにも、『ガリヴァー旅行記』のスウィフトに、バーナード・ショー、さらに大御所ジェイムズ・ジョイスなど、アイルランド出身の作家が何人も登場しています。あれこれ調べるうちにどうしても行ってみたくなり、初めて訪れたのは2007年の夏。以後、毎年のように訪問するようになりました。


首都ダブリンの空港を出て、まず耳にすることになるのが、地元のタクシー運転手の聞き慣れないアクセントの英語。イギリス英語ともアメリカ英語とも違うその発音の聞き取りに苦労しつつ、 "I'm sorry?"(「もう一度言って下さい」)と言いながら、ああ、ダブリンに着いた、と毎年思います。

独特の表現が多いアイルランド英語ですが、その中でも私がとても気に入っているのが、あいさつの言葉、"What's the story?" です(単に "Story?" と言うこともあります)。この表現を最初に教えてくれたのは、パリからダブリンに向かう飛行機で隣り合わせた男の人で、"How are you?" と同じような意味だよ、親しい間柄でしか使わないんだけど、と話してくれました。確かに、たとえばバスの中で、ギターを背負った若者が携帯電話で "Hey, what's the story?" (ワダトーリ、と聞こえる)と話していたりします。おそらく相手は仲の良い友人なのでしょう。歌うように楽しげにこのフレーズを口にしていました。



ところで、2010年に、ダブリンはユネスコが指定する「文学の都市」に選ばれました。エディンバラ(イギリス)、アイオワ・シティー(アメリカ)、メルボルン(オーストラリア)に続く4都市目とのこと(現在はさらに、アイスランドのレイキャビクとイギリスのノリッジが加わっています)。この年のダブリンの街には、そのことを祝って写真のような旗がはためいていました。右側が英語で左側がアイルランド語ですが、そこにあるのは、そう、例のあいさつ、"What's the story?" です! 人々が日々 "story" という語を口にする文学の街。アイルランドは北海道くらいの広さの島にある小さな国ですが、ノーベル賞作家を4人も出しています。何百年もの間イギリスの支配下にあったために、アイルランドの作家やその作品は「イギリス文学史の一部」としてテキストに記されていることがほとんどですが、アイルランドの内部に目を向けてみると、そこには豊かな「アイルランド文学」の流れが息づいていることがわかります。

そのことを体感できるおすすめの場所のひとつが "Dublin Writers Museum" です(下の写真の教会の左隣、茶色の建物がそれです)。とても小さな博物館ですが、かなり見応えがあります。奥の方にはミュージアムショップがあり、本や文房具、カード類なども充実していて、私は毎年のように覗いています。なぜかいつもダブリンに舞い戻ってしまうのですが、いつか、ダブリン以外の「文学の都市」にも足を運んでみたいと思っています。

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