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英語英文学科

2014.05.24

アジアでの学会に参加して|高橋幸子|英文エッセイ33

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英語英文学科 リレーエッセイ 外国(語)の話
【第33回】 2014年5月

アジアでの学会に参加して―つくづく思うこと
高橋幸子

 ここ数年、アジアの各地で開かれるAsia TEFL(Teaching English as a Foreign Language)の国際大会に参加している。英語に係わる仕事をしているのであるから、英語圏での学会にも参加するように努めているが、アジアで開かれるこの国際大会の面白さは、別格である。アジアの様々な国で毎年開かれる学会であり、参加者もアジア諸国の英語教育の研究者や実践者であるからだ。

 Asia TEFLのホームページによると、その学会構成員は、アジア圏40カ国(15,836人)、その他37カ国(761人)とある。毎年、アジアのどこかで開かれる国際大会には、アジア圏から多くの参加者がいて、その数は1,000人を超える。一生涯、絶対に出会わないであろう言語、もしくは、習得できないだろう言語を母語としている研究者や実践者と、国際共通語である英語でコミュニケーションがとれるということは、本当に便利なことである。ちなみに、2013年度はフィリピン、2012年度はインド、2011年度は韓国で開催された。

 研究発表の合間に訪れたインドのタージ・マハル廟は、小学校の頃の教科書で見ただけで、まず、実際に自分の眼で見ることはないと思っていただけに、感慨深かった。インドの王様(ムガル帝国第5代皇帝:在位1628~1658)が、亡くなった王妃をしのんで建立した世にも美しい墓である。遠くから見ると白く見える建物が、近くで見ると、四色の大理石を組み合わせたものであることもわかった。学会が開催されたデリーには、タージ・マハル廟の建築様式に影響を与えたといわれているフマユーン廟があることも、この時に知った。こちらの廟は、王妃(第2代皇帝フマユーンの妃:1565)が、亡くなった王様のために建立したものである。こちらも美しい左右対称の廟であった。

 たった数日のインドの旅であったが、学会で研究発表されたものの他にも様々なことを学んだ。インドでは、広範囲に英語で教育を行っていると思い込んでいたのが、実は、それは、多くの場合、富裕層向けのものであること。広い国内には、ヒンディー語を筆頭に多くの言語が存在し、ほとんどの人々は地域語を話し、教育も地域言語で行われていること。自分の持っていた知識がいかに限られたものであるのかを実感することができた。

 この滞在では、知り合いの御好意で、インド人の方の御家庭を訪問することができた。この御家族はヒンドゥー教を信仰し、ご主人は日本企業に勤める知的な一家だった。二人のお子さんは、英語をミディアムとする学校に通い、フランス語やドイツ語も習い、ピアノやバイオリンも嗜む。御両親は、子どもたちには、国際社会で活躍してほしいと言われていた。インドの中には、このように恵まれた子どもたちばかりではない。一日中混雑が続く道路で、ほんの少しでも停止している車を見つけると、窓ふきをさせてくれとか、モノを売ろうとして、道路の真ん中にはみ出してくる子どもたちがいる。こうした子どもたちは、きちんと学校に通っているのだろうかと考え込んだ。

 アジアでの学会に参加することで、様々な研究者・実践者たちと会える喜びを味わうとともに、日本は教育面で平等だと感じることが多い。どの子どもも教育を受ける権利を持っているということは、当たり前のことように思っていたが、それがどのくらい大切なことなのかを改めて感じている。

 最後に、2012年のインド、2013年のフィリピンで発表した研究内容についてである。ここ数年、英語学習時におけるメタ認知ストラテジー使用を研究テーマとしているが、こうした学会に参加すると、「learn」ではなく、「perform」のメタ認知ストラテジー使用にテーマを変えたくなる。メタ認知ストラテジーとは、全体を俯瞰してみることのできる能力である。自分自身が学習者に戻って謙虚になる国際学会では、多言語社会の中でコミュニケーションを遂行するために、全体を見渡す力が必須であるということをつくづく感じる。

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