2013年
08月02日

たしかな分析力にもとづいた「社会」の把握をめざして:学びをいかした資格[2] 社会調査士

たしかな分析力にもとづいた「社会」の把握をめざして
──一般社団法人 社会調査協会 「社会調査士」資格──

中山ちなみ講師

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 「社会調査士」という資格は、まだまだ一般にはなじみのない資格かもしれません。この資格は、一般社団法人社会調査協会が認定する資格です。2003年12月に社会調査協会の前身である社会調査士資格認定機構が設立され、この資格制度がスタートしました。今年でちょうど10年目となる比較的新しい資格ですが、現在では全国の192の大学が参加し、これまでに16,359名が社会調査士資格を取得しています(2013年6月現在)。

 社会調査士資格は、本学では現代社会学科学生のみが取得できます。現代社会学科は初年度からこの資格制度を導入しており、現在までに第1期生から7期生まで96名が資格を手にしています。

 社会調査士資格を取得するためには、学部において社会調査協会が定める「標準カリキュラム」6科目を履修する必要があります。まず、実際にどのような科目があるのかをみてみることにしましょう。

標準カリキュラム 本学の科目名 主な内容
A:社会調査の基本的事項に関する科目 社会調査論Ⅰ 社会調査の意義、社会調査の種類や方法
B:調査設計と実施方法に関する科目 社会調査論Ⅱ 調査の実施方法や結果のまとめ方
C:基本的な資料とデータの分析に関する科目 社会統計学Ⅰ 記述統計学の基礎
D:社会調査に必要な統計学に関する科目 社会統計学Ⅱ 推測統計学の基礎
F:質的な分析の方法に関する科目 社会調査論Ⅲ 質的データの収集方法や分析方法
G:社会調査の実習を中心とする科目 社会調査実習 量的調査による1年間の実習

注)本学ではE科目(量的データ解析の方法に関する科目)は開講していません。

  本学では、これらの6科目を2年間で履修できるようにカリキュラムが組まれています。2年生でA~D科目、2年生ないし3年生でF科目、3年生でG科目を履修するのが標準的な履修のしかたです。これらの科目名やその内容をみればわかるように、データの集め方や分析の方法、統計学の知識、分析結果の公表のしかたなど、社会調査士に求められる知識・技能は多岐にわたります。本学では、これら6科目を履修することにより、たとえば卒業論文のための研究でアンケート調査やインタビュー調査などの社会調査をスムーズに実施できるだけの知識と分析力を身につけるレベルをめざしています。

 社会調査ができるようになるためには、本当にたくさんのことを勉強しなければなりません。しかし、勘違いしやすいのですが、必要な知識や技法を理解するだけで社会調査ができるようになるわけではありません。社会調査はマニュアルに沿ってただ実施すればよいというものではありません。自分が明らかにしたいことは何であるのか、そのためには誰に、どのような内容の調査をしなければならないのかということを事前に考えて綿密に調査を設計する企画力、調査対象者と関わり合うコミュニケーション力やプライバシーへの配慮、調査結果を客観的・正確に把握する分析力、それを公表する際の情報発信力など、多面的な総合力に加えて臨機応変に対応していく柔軟性も求められるといえるでしょう。分析時には、コンピュータを使いこなす必要もあります。さらに、社会調査実習では履修者全員がひとつの研究プロジェクトに参加してそれぞれの役割をこなしていくことになります。その過程で、協調性が養われるとともに、一人ひとりがリーダーシップを発揮する機会も多くあります。

社会調査実習での作業の様子

作業の様子変数の検討とマッピング(2013年5月)   作業の様子質問項目の検討(2013年7月)

         ※社会調査実習の授業風景については、こちらもご覧ください。


 ところで、なぜ私たちは「社会調査」を学ぶ必要があるのでしょうか。現代社会のしくみは複雑で、その中で生きる人びとの価値観や行動パターンも多様です。このような社会においては、政治や行政、生産や消費など、あらゆる意思決定の場面で、正確に現状を把握したり人びとの意識やニーズを知る必要が出てきます。現実を正しく客観的に「知る」ことは、現代に生きる私たちにとって不可欠といえるでしょう。しかし、私たちは日々接しているメディアからの情報で、何となく、ただ印象だけで現実を「知った」つもりになってしまいがちです。それはしばしば誤った認識をもたらします。社会の現実を「知る」ためには、科学的な方法でデータを収集し、分析結果を正しく解釈する力を養う必要があります。社会調査は、社会を知るための重要な手段のひとつであり、また同時に、社会をよりよいものにしていくための情報を提供してくれるものでもあるのです。

 さて、社会調査を勉強することで習得できる専門的な知識や技法は、社会調査士資格を取得しようとする人たちだけが身につければよいものではありません。調査や文献・資料によって情報を集め、それらを客観的に評価できる力は、現代社会学科で研究するすべての人にとって必要な能力であるといえます。さらには、世の中に氾濫している情報の中から、自分にとって必要な信頼できる情報を見分け、それを活用していく情報リテラシー能力は、現代に生きる私たちにとって必要不可欠のものです。「社会調査」というものに少しでも関心を持たれた方は、ぜひ、実際に学んで、そこから広がる新しい世界を体感していただきたいと思っています。


※さらに詳細を知りたい方は、一般社団法人社会調査協会ホームページもご覧ください。



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